特別展「古代DNA ―日本人のきた道―」

企画趣旨

遺跡から発掘された古代の人々の骨に残るごく僅かなDNAを解読し、人類の足跡をたどる古代DNA研究。
近年では技術の発展とともに飛躍的な進化を遂げ、ホモ・サピエンスの歩んできた道のりが従来想像されていたよりもはるかに複雑であったことが分かってきました。
本展では、日本各地の古人骨や考古資料、高精細の古人頭骨CG映像などによって、最新の研究で見えてきた遥かなる日本人のきた道と、集団の歴史が語る未来へのメッセージを伝えます。

お知らせ

  • 2025.2.21

    スペシャルページの番組情報を公開しました。
    2月24日(月)午後7時30分~放送予定!
    Eテレ「木村多江の、いまさらですが…」

  • 2025.1.28

    グッズページを公開しました。

  • 2025.1.28

    本展は名古屋市科学館へ巡回予定です。詳細は決まり次第お知らせします。

  • 2025.1.9

    公式サイトをリニューアルしました。
    前売券、お得な企画券は1月20日(月)10:00から発売します。詳細はこちら

古代DNA研究とは?

1980年代に古人骨にもごく僅かですがDNAが残っていることが明らかになり、その分析が始まりました。
その後の約20年間は技術的な制約で、母親から受け継がれるミトコンドリアのDNA分析を対象としていましたが、2006年に「次世代シークエンサ」と呼ばれる画期的なDNAシークエンサが実用化され、古人骨の核DNAの分析も可能になりました。
核DNAは人体の設計図とも言われ、両親から受け継ぎます。
そのため母系に遺伝するミトコンドリアDNAと比べてはるかに多くの情報を得ることが可能です。
古代人の髪や目、肌の色のほか、どんな病気にかかりやすかったかまでも明らかにすることができるようになったのです。
また、詳細な遺伝情報を得ることができるようになったことで、これまでの化石の形態研究では分からなかった、我々ホモ・サピエンスの起源や世界への広がりの道筋、人類集団の形成過程の研究なども進んでいます。

メッセージ


総合監修

今世紀になって急速に発展した古代ゲノム解析は、我々ホモ・サピエンスの起源とアフリカからの拡散の状況を明らかにしつつあります。
この解析技術によって、これまで人骨の形態から類推されてきた日本列島集団の成立史も、ゲノム解析で得られた精緻なデータによって補完されるようになっています。
この学問の驚異的な発展は、検証が難しかった考古学や歴史学のデータと集団成立のシナリオの整合性の検討も可能にしました。
列島内の文化が変わるとき、それを担った集団の遺伝的な特徴も変化したのでしょうか。
今や列島集団の成立の研究は、新たな段階に入っているのです。
本展覧会では、4万年に及ぶ日本列島集団の成立のシナリオを、人骨とそこから得られた最新のゲノムデータ、そして最新の考古学研究の成果で解説します。
国立科学博物館長 篠田 謙一
21世紀の科学技術の進歩によって、考古学では縄文・弥生時代を中心に新たな時代像が描かれ始めています。
最新の年代測定によって遺跡や遺物に高精度な年代を得た考古学と人類学は共通の時間的尺度を得たと言えるでしょう。特に古代ゲノム解析で得られた精緻なデータは縄文人や古墳人の家族像を復元しました。
水田稲作開始期の水田稲作民とアワ・キビ栽培民の関係を明らかにすることで、縄文から弥生への文化変容の実態に迫りつつあります。
また、これまで先史考古学では個人の特定はできませんでしたが、究極の個人情報であるDNAがわかることで特定個人の存在を視覚化できるようになり、人の移動に伴う文化拡散の具体的なイメージを提示できつつあります。
本展覧会では新たな先史日本列島人と共に生きたイヌやネコたちも合わせてぜひご覧ください。
国立歴史民俗博物館名誉教授 藤尾 慎一郎

みどころ紹介

01

今もなお現代に残る縄文人DNA

DNA情報に基づいて作成された船泊23号復顔  国立科学博物館

旧石器時代から古墳時代まで、ゲノム解析の最新研究成果で古代人の謎に迫ります。

DNA情報に基づいて作成された船泊23号(北海道の縄文人)復顔
国立科学博物館蔵

02
日本最古の土偶  相谷熊原遺跡出土土偶 縄文時代草創期 滋賀・相谷熊原遺跡 滋賀県

考古学×自然科学

祈り、なりわい、交流。
最新の考古学とDNA研究で、2万7000年の時を超えて古代人の姿が見えてきます。

相谷熊原遺跡出土土偶
縄文時代草創期 滋賀・相谷熊原遺跡 滋賀県蔵

03

国立科学博物館×NHKの8K技術

国立科学博物館とNHKの8K技術を利用した共同研究の成果を活かし、超高精細CG映像を駆使して、日本人のきた道をたどります。

発掘した古代人の頭骨から制作した超高精細CG

04
ネコの肉球が着いた須恵器  古墳時代終末期 姫路市美野古墳 姫路市教育委員会

ヒト×イヌ・イエネコ

古くから人類とかかわりが深いイヌやイエネコの渡来の歴史や暮らしぶりにも迫ります。

動物足跡付須恵器
古墳時代終末期 兵庫・見野6号墳 姫路市教育委員会蔵