エコカー減税でアメ車が少ないという反発が米議会内にあって、クリントン国務長官から岡田外相に申し入れがあったこと等を踏まえ、輸入車についても拡大していこうという話がありました。それで、対象車を見ていると「ハマー」が含まれているということで、「さすがにそれはないんでないの?」と感じたので行政から聴取しました。なかなか面白かったので、個人的な思いを述べつつご紹介します。


 まずもって、元々エコカー減税は輸入車も対象にしているのです。別にアメ車を差別しているという事実はありません。ただですね、輸入車については、通常「型式指定制度」というのがあって、国土交通省による審査が行われます。そこで、エコカー減税指定の基準となる燃費等も計るわけです。ただし、これは手数料やその他費用が結構かかるので、輸入量が一定量を超えないとこの制度を使うのはメリットがありません。それで輸入量が少ない車(年間2000台以下)については、特別に「輸入車特別取扱制度」と簡便な制度が用意されています。その制度では、日本の基準による燃費等の計測がないため、そもそも、今回のエコカー減税の制度を利用するための基礎的データが揃わないということがありました。故にエコカー減税に指定できなかったということです。これが「内外無差別」に当たるかどうかは、厳密に考えるとたしかに疑問点がありますが、少なくとも表面上は内外無差別であると言える素地はあります。


 ということで、輸入量の少ない車についてはエコカー減税が適用されておらず、これにアメリカが噛みついてきたわけです。そこで、制度を少し見直して、それぞれの生産国で計測されている燃費等のデータをそのまま利用できるようにしてあげたということです。実は日本での燃費等の計測とアメリカ、EUとの計測方法はかなり違うのです。一例として、どの程度のスピードで走らせて燃費計算するかということでして、アメリカなどでは一般的に車の燃費が一番良くなる速度帯での走行時間を長く取っています。しかし、まあそこは目を瞑って、そのデータをそのまま活用してあげることにしたということです。


 その結果として、キャデラック(CTS)、ハマー(H3V8)、メルセデスベンツ(E320CDI)といった車がエコカー減税の対象になったということです。ハマーの中でもH3V8というのは、相対的に燃費が良いらしく、車両重量比でいうとエコカー減税の対象に入ってきたということです。私は勘違いをしていて、エコカー減税と言う燃費というのは絶対値だと思っていたのですが、あれは車両重量毎に基準となる燃費が定められているということらしく、重い車でも含まれるということだそうです。まあ、たしかに絶対値で指定をしていたら、町中には軽の車ばかりが溢れてしまうことになるわけですので、産業政策として重い車でも相対的に燃費が良ければエコカー減税の対象になる、なのでハマーの一部も対象となっているということです。個人の「どういう車に乗りたいか」という志向までをも、エコカー減税で指向づけることはできないということなんでしょうね。


 ただですね、これで対象となるアメ車というのは実は大した数量がないのです。そもそも、アメ車の輸入が年7000台くらいで、並行輸入や上記の型式指定制度で輸入しているものを除き、「輸入車特別取扱制度」で輸入しているのは、実際にはアメ車で1700台です。その中でエコカー減税の対象になる「可能性がある」車は800台程度です。しかも、エコカー減税というのは13年以上乗った車を買い換える時の減税措置です。多分、アメ車に乗る人というのは相対的に裕福な人が多いでしょうから、そもそも直前の車に13年も乗っていない人が大半でしょう。結果として、その「可能性がある」800台の輸入の中で対象となるような車は殆どないはずです。とすると、色々クリントンまで動員して実現したこのエコカー減税拡大は殆ど実態としては意味がないのです。むしろ、得をしているのは対象車の台数が3800台と相対的に多い欧州の方です。


 何となく、このエコカー減税は、アメリカの国内政治の延長で「日本の自動車産業叩き」をやりたかった人達のアイテム化したような気がします。変な話ですけどね。