ここではスペースインベーダーエクストリームのサウンドを構成する断片達「Audio Cluster」をクリエイターのコメントを交えて解説していこう。
第三回 BGM一体型効果音
今回は「インタラクティブサウンド」とともにスペースインベーダーエクストリームDS版のサウンドを特徴づけている「BGM一体型効果音」について解説してみたいと思います。
「BGM一体型効果音」というのは文字通り効果音をBGMとリンクさせることで、プレイヤーのプレイに応じて新たなBGMが演奏されるというものです。
これによりプレイヤーはゲームをしていながらあたかも曲を演奏しているかのような不思議な感覚を体験することが出来ます。
これも前回同様に実際に音を聞きながらその効果を体験してみましょう。
「BGM一体型効果音」は2つの要素から成り立っています。
1つは「BGMに最適化した効果音」もうひとつは「BGMにシンクロした効果音」です。
まずはじめにこれを聞いてみてください。
これはステージ1のBGMにオリジナルのスペースインベーダーの効果音をつかってプレイを再現してみたものです。ほとんどのシューティングゲームはこのような感じになっていると思います。
この場合、効果音がBGMと無関係に作られているためプレイヤーはそれぞれを別物と認識し、効果音が鳴ったことでBGMが変化したとは感じません。
次にこれを聞いてみてください。
これは先ほどの効果音を本来のステージ1の効果音に置き換えたものです。
先ほどのものに比べて少しBGMらしくなりましたね。
これはステージ1の効果音をステージ1のBGM中で使用されている楽器の音を元にして作り、さらにBGMと一緒に鳴らしても浮いてしまわないように音の高さを調整しているためです。
簡単に言うと効果音がBGMのパートの一部になっているということですね。
このような「BGMに最適化した効果音」が「BGM一体型効果音」が作り出す不思議なサウンドの1つの柱になっています。
しかし、これだけではまだ新たなBGMになっていると言い難いですね。
例えると何かの曲をバックに子どもが適当に楽器を弾いてるというような感じです。
これではどうでしょうか?
先ほどの適当に楽器を弾いている感じがなくなり、本当に効果音がBGMの1パートになったような感じがおわかり頂けると思います。
これを実現しているカラクリが先ほど書いたもう1つの柱「BGMとシンクロした効果音」です。
音楽の三要素はリズム・メロディ・ハーモニーと言われるように、BGMの1パートの様に効果音を鳴らすためには音色だけではなくそのタイミングも重要になってきます。
しかしながら、特にシューティングゲームではプレイヤーがBGMのリズムに合わせてショットを打つなんていうことはまれです。
そこで、プログラムを工夫してショットを打ったときの効果音の発音タイミングをBGMのリズムに乗るように補正をかけています。
補正をかけていると言ってもそれが最小限になるようにしているので、プレイヤーの皆さんはほとんど違和感を感じないと思います。ここを見て初めて知ったという方も多いかもしれませんね。
スペースインベーダーエクストリームの次世代サウンドは、こういった工夫によっても支えられているという事が皆さんにもお分かり頂けたかと思います。
ただプレイしている時はそんな難しいことは気にせず、スペースインベーダーエクストリームのサウンドワールドにどっぷり浸かってください!
第二回 インタラクティブサウンド
今回は前回少し触れたスペースインベーダーエクストリーム、ニンテンドーDS版で採用したサウンドシステム「インタラクティブサウンド」について少し掘り下げてみたいと思います。 「インタラクティブサウンド」のコンセプトを一言で言えば「プレイヤーのテンションとサウンドのリンク」です。 例えばプレイヤーの気分が盛り上がるような場面では音楽を盛り上げることでプレイヤーのテンションを最高潮に加速させる、という効果を狙っています。 文字で説明しても伝わりにくいと思いますので実際に音を聞きながら解説していきましょう。
これは通常時、すなわちステージがスタートしたときの状態です。この時のプレイヤーのテンションを仮に100とします。
これはアイテムをゲットしたときの状態です。アイテムを取ると自機がパワーアップし、レーザーなどの特殊なショットが打てるためプレイヤーのテンションもグッと上がります。数値的にはだいたい125くらいでしょうか?
BGMも通常時に加えてシンセのフレーズが加わったことで少し盛り上がっていますね。
これはラウンドに突入したときの状態です。ラウンドでは通常時と異なり、集中して目標を撃破することが必要になります。ここでテンションを上げてしまうと集中力が途切れてしまいますね。
テンションを50くらいに抑えておきましょう。
BGMも集中しやすいように余計なパートを抑え、シンプルな構成にすることでプレイヤーが集中しやすいようにしています。
そして、これがもっとも盛り上がるフィーバータイムの時です。
フィーバータイムでは自機は劇的なパワーアップを果たし、加えてスコアも上がりやすい状態になっています。ゲームはまさにプレイヤーの独壇場!かたっぱしから敵を撃破しましょう。
もちろんテンションは最高潮の200!
BGMもあらゆるパートが解放され最高潮の盛り上がりになります。
ちなみにこれがフィーバータイムをプレイ中のサウンドの例です。
BGM一体型効果音(これは次回解説します)の効果と相まってさらにテンションが高まっているのがお分かり頂けると思います。
実際のゲームではこれらの場面が時々刻々と移り変わりますが、サウンドはほとんどシームレスにそれに追従します。 こうする事で先ほど説明した「プレイヤーのテンションとサウンドのリンク」が実現されているというわけです。
いかがでしたでしょうか? もしまだゲームをプレイしていない方がいらっしゃいましたら是非ゲームをプレイして、あなたのプレイとサウンドのエモーショナルなリンクを体験してみてください。
第一回 PSP版とDS版のサウンドの違いについて
スペースインベーダーエクストリームのサウンドを担当したCOSIOです。 スペースインベーダーエクストリームにはPSP版とニンテンドーDS版があります。この2つには画面幅やそれに伴うプレイルールの差異など様々な違いがありますが、一番の違いは何と言ってもその"サウンド"にあります。 PSP版はSUGIURUMN、DJ AKiなど著名クラブミュージシャンの書き下ろしサウンドがBGMとして使われており(一部、ZUNTATAによるDS版のBGMもスペシャルバージョンで収録)クラブサウンドをバックグラウンドミュージックにしてゲームの世界に没入することができます。 ニンテンドーDS版ではROMであることを生かして、プレイヤーのプレイスタイルに合わせてBGMが次々変化していく「インタラクティブサウンド」を採用しました。これに加えてステージ毎の効果音を、BGM一体型効果音-つまりBGMを構成する楽器音の一部にすることで、ゲームをプレイしながらあたかも曲をリアルタイムに演奏しているような感覚になれる不思議な演出を実現しました。もちろんDS版の楽曲は全てZUNTATAによるオリジナルミュージックです。 今回このアルバム「SPACE INVADERS EXTREME -AUDIO CLUSTER-」ではこの感覚を再現しCDに詰め込んでいますが、あなたのプレイによってはサントラとは異なる曲展開になるかもしれませんね。
● 小塩広和(COSIO)タイトーサウンドチームZUNTATA所属。作曲・編曲・サウンドエディター・プログラマーなど幅広い顔を持つ。今回はスペースインベーダーエクストリームのサウンドディレクターとしてサウンドシステムの提案からステージBGMの作曲まで、トータルなサウンドデザインを担当。
※ ニンテンドーDSは任天堂の登録商標です。