(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
皆様こんにちは。パートナーの橋口寛です。
板倉雄一郎事務所ウェブサイトの「深夜枠」として始まりました、この「板倉雄一郎事務所のひとびと」のコーナー。
皆様のおかげで、何とか初回打ち切りにならずにすみました。
今回は第二回として、Takamura氏をご紹介したいと思います。
あくまで「深夜枠」ですので、お暇な方だけ読んでいただければ、と思います。
今回取り上げるTakamura氏(以下T氏)は、非常に謎が多い男である。
T氏は、大学時代は体育会で、跳躍系のスポーツ選手として活躍していたらしい。
そう言われてみると、たしかに跳びそうだ。
T氏は、これまで、日系・外資系の金融機関で、ファイナンシャルモデル開発・投資銀行業務などを行ってきたらしい。
ファイナンスやバリュエーションの分野においては、
文字通りプロフェッショナルなのである。
板倉雄一郎事務所の企業価値評価合宿セミナーにおいて、
T氏は、最も時間が長い「将来業績予測」のコマの講師を担当している。
我々の合宿セミナーは、「知的にハード」であることが売り(?)であるが、
その中でも、T氏のコマが終わった時の受講生の疲労困憊ぶりは、最も激しい。
それは単にコマの時間が長いというだけでなく、
T氏のエクセルのテクニックに原因があるような気がしている。
T氏は、エクセルショートカットキーの達人なのである。
いつもショートカットキーだけを用いて、
目にもとまらない速さで、画面を切り替えていく。
時々、彼がいったい何をしているのか、何が目的なのか、
分からなくなるほどだ。
彼が画面を激しく切り替えているのを見ていると、
いつの間にか、小さかった頃の思い出に浸っている自分に気づく。
あの超高速の画面切り替えには、何か不思議な力があるようだ。
T氏は、このショートカットキーのテクニックを、
それこそ、血の滲むような努力で習得したらしい。
T氏曰く、マウスをガムテープで机に固定して、
マウスを使えないようにして、練習したのだという。
「わざわざマウスをPCにつないでガムテで固定する前に、
そもそもマウスを外せばそれでいいのではないか?」
その疑問は、まだ彼に直接伝えていない。
ショートカットキーで、何か仕返しされそうな気がするから。
スキルを習得するためには、一見非合理的なことも、きっと必要なのだろう。
そんな非合理的なT氏の口癖は、
「そうですね」
だ。
受講生の方に対して質問をし、答えが返ってきたあと、
T氏はいつも必ず、
「そうですね」
と答える。
しかし、その後の言葉を聞くと、
T氏がこれっぽっちも「そうですね」と思っていないことが分かることがある。
1ミリも思っていないのだ。
見事である。
板倉雄一郎事務所のパートナーミーティングでも、
全員がある話題に盛り上がっているときに、
「そうですね」
と言ってから、まったく真逆の意見を述べられることがよくある。
そこまで真逆な内容を述べる前に、
なぜ「そうですね」という言葉を入れられるのか。
見事である。
そんなT氏には、もうひとつ際立った特徴がある。
それは、とにかく「うなずく」ということである。
私は、これまでの人生で、彼ほどよくうなずく人を見たことがない。
かつて、「オレたちひょうきん族」という番組に
「うなずきマーチ」という曲があったが(古くてすいません)、
彼らなどは、T氏に比べれば、ものの比ではない。
先日も、セミナーの昼食時間に弁当を食べている彼をふと見ると、
しいたけの煮物を見つめて、しきりにうなずいている様子に
はっとしたことがある。
コピールームでコピーをとっている時も、ゆるやかにうなずいていた。
懇親会で料理を皿に盛りながらも、満足そうにうなずいていた。
あのうなずきには、何らかの意味があるのかもしれないし、
何の意味もないのかもしれない。
もしかしたら、誰かと交信しているのかもしれないし、
すごく大切なメッセージを我々に伝えようとしているのかもしれない。
とにかく、いついかなるときも彼はうなずいているのである。
T氏のあごは、一秒間に二回のペースで正確に時を刻みつづける。
いったいいつからああなったのか?
T氏曰く、
「小学校時代の先生から「うなずけ」と言われた」
とのことだが、どこまで本当かは分からない。
一度、T氏のアゴに発電機を取り付けることができれば、
かなりエコ電力が生み出せるのではないか?
という革命的なアイデアを思いついたことがあるが、
これも、まだ実現に移せてはいない。
ショートカットキーで仕返しされそうな気がするから。
クールな「うなずき王子」T氏。
私にとって、「板倉雄一郎事務所のひとびと」の中で、最も謎が多い男なのである。
2006年11月4日 橋口寛
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次回パートナーエッセイは、11月7日(火)に、Shimoda氏が担当します。