時が人を置き去りにすることはない。人は時とともに変わりゆくものだ。
トワコや真鳥姉妹との出会いと、ローラン兄妹の戦いを経て、夏彦の生活は変化していく。取り戻したはずの日常は、これまでと少し違っていて、それが希有との関係に小さな、けれど決定的な亀裂を生みつつあった。
ラストの展開に度肝を抜かれた前巻が、何でもなかったかのように1990年を舞台に物語は進行していきます。今回もラストでまた未来の物語の一部が語られ、その十数年の断絶がいかなるものなのか弥が上にも期待高まるといった感じなのですが。
夏彦と希有の蜜月ともいえるような穏やかな時間は、トワコや真鳥姉妹との出会いをもって、完全に終結させられてしまったのでしょうか。幼い嫉妬心で自分を傷つけながらも、夏彦を失くしたくないと願う希有の気持ちと、そんな彼女の心を慮ることができず、トワコのそばに居たいと思い始めた夏彦の間に生まれた溝は、もはや埋めることができるのかどうか怪しくなってきましたね。終盤の展開で、夏彦は自身も気付かぬうちに、トワコと希有の間に明確な区別を付けてしまったわけで、それに気付いた希有が夏彦に対し、そしてトワコに対してこれからどのような距離を見出していくのか、ヤンデレフラグにならなければいいけれど。希有が望んでいた永遠に変わらない毎日が途絶えてしまった今、彼女は変化を受け入れるのか、それとも、変わらないという選択を行うのか。
トワコとは異なる物語軸に存在するように思えていた、真鳥姉妹も、エンジェルダイヴという言葉によって、ローラン家という敵対勢力を通して繋がったように思います。未だ明確な意味が明かされない、超常の力の持ち主たちと、意味深な言葉を発する黒雪。子どもたちと大人たちの思惑の次元の異なりが、これから少年少女たちにどんな運命をもたらしてくるんでしょうか。
ようやく、物語が動き始めたという印象の第2巻。すべてが変わり、移ろっていくことを予言されたような形ですが、その中でも変わらず、大切にしていけるものが、何かあるのかなあ。未来の夏彦の姿を見てしまうと、何もかもが上手く転がるなんて、期待できなさそうですが、これから先、どうなることやら。
hReview by ゆーいち , 2008/08/30
- ANGEL+DIVE 2 (2) (一迅社文庫 し 1-2)
- 十文字 青
- 一迅社 2008-08-20
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