view 海に囲まれた神秘の淡水 静岡県沼津市の神池
更新 sty1606050010 ねじれ曲がった樹木が連なる神社の境内。吹き抜ける初夏の風で樹林がざわざわと音を立て、野鳥が美声を奏でる。木漏れ日が降り注ぐ参道を歩いた先に池が現れた。
スキューバダイビングの名所で、駿河湾に面した伊豆半島西部の“付け根”から海に突き出す独特な地形の大瀬崎(静岡県沼津市)。その先端にある大瀬神社の「神池(かみいけ)」は、上空から見るとまるでイヤリングのよう。周囲を海に囲まれた池にはコイやフナなどが泳ぐ。不思議なことに、水源もない海辺の池は淡水で満たされている。
海抜1メートルにある神池の直径は約100メートル。海からの距離は近い所で約20メートルしかなく、ビャクシンの樹林に包まれている。透明度は低く、どちらかというと濁っている印象。水を口に含んでみると全く塩っ気はなかった。
23年間、池を見守っている大瀬神社の野村芳照宮司(59)は「ここは神が宿る池。環境破壊の恐れもあり調査は行っておらず深さも分からない」という。海が荒れて海水が吹き込んでも淡水に変化はなく、その理由を野村宮司は「比重が大きい海水が池の底に沈むのでは」と推測する。
静岡大学の小山真人教授(57)=火山学=は、潮の干満時にも池の水位が変わらない▽大瀬崎火山の溶岩流が一帯に分布、池の底に岩盤や不透水層がある-ことなどから「池と海が分離されていると考えられる」という。
直線距離で約35キロ離れた富士山からの湧水が流れ込んでいるとの説もある。「『神秘』というほかに言葉が見つからない」と野村宮司は話している。(写真報道局 大井田裕)