アブラハム業務停止へ 金融庁検討、監視委が勧告
金融庁は投資助言大手のアブラハム・プライベートバンク(PB、東京・港)に6カ月以内の業務停止命令を出す方向で最終調整に入った。証券取引等監視委員会が3日、無登録で金融商品を販売していたなどと正式に行政処分を勧告。反論していたアブラハムも同日夜、監視委の勧告を受け入れる方針を公表した。
金融庁は来週にもアブラハムの意見を聞く「聴聞」を開いたうえで、処分内容を正式決定する。
アブラハムは金融商品取引法上の投資助言業者。積み立て投資サービス「いつかはゆかし」を提供しており、監視委の調査では投資助言残高は170億円、顧客の数も少なくとも2792人に上る。
監視委は3つの行為を金融商品取引法違反と認定した。第1に、金融商品販売業者の登録をせずに海外ファンドを販売する「無登録販売」だ。
投資助言業者は投資家からアドバイス料をもらい、最適な金融商品を紹介する。だが、監視委の認定によると、アブラハム側は金融商品の運用会社側からも「広告料」などの名目で事実上の販売手数料を受け取っていた。
金融商品の運用会社から報酬を受け取ると、投資家の立場から最適な商品を選ぶ助言業に中立性がなくなる。監視委によると、アブラハムの販売手数料収入は顧客から集めたアドバイス料の何倍にも上り、「助言業」と「金融商品の販売」の間で利益相反の懸念があったという。
第2の違反は「誇大広告」だ。アブラハムは自社のサイトで「金融機関や運用会社から販売手数料等をもらっていません」と虚偽の説明していた。加えて、他社よりも運用実績を高く見せるような広告を掲載していた。
さらに、同社は特定の顧客に利益を提供することを禁じる金商法にも違反していた。重要な顧客が助言報酬を免除するよう求めたところ、アブラハムは900万円超の免除に応じていたという。
2007年の金融商品取引法施行後、無登録販売で行政処分の勧告を受けたのは15件目。アブラハムのように海外の金融商品を販売するケースが目立つ。国内で低金利が長引くなか、投資家の海外投資への関心が高いことが背景にある。
個人マネーが国際化する一方で、海外の金融商品には金商法が及ばない。資産の大半が消失した米金融業者のMRIインターナショナルのように実態把握が遅れることも多いのが現状だ。