ユーロ圏、景気回復の歩み遅く 1~3月GDP0.2%増
【ブリュッセル=御調昌邦】ユーロ圏の景気回復が緩慢だ。15日発表された1~3月期の域内総生産(GDP、速報値)は前期比で実質0.2%増(年率0.8%増)にとどまり、低成長を抜け出すことができなかった。高失業率や通貨高で物価が上がりにくい状況が続いており、市場では6月に欧州中央銀行(ECB)が金融緩和に踏み切るとの観測が強まっている。
ユーロ圏のGDPは4四半期連続のプラスとなった。1~3月期の前期比の成長率は昨年10~12月期の改定値と同じだったが、年率換算では0.1ポイント低下。成長率は市場予測も下回った。ユーロ圏全体として景気後退に陥るリスクは小さいが、域内の経済活動は鈍く、年率1%程度の成長から浮上できない状況が続く。
仏・伊が出遅れ
国別の成長率は「まだら模様」(独コメルツ銀行)となった。ユーロ圏最大の経済規模のドイツは前期比で0.8%増となり、年率では3%前後の成長となったもようだ。「年初の極端な暖冬が貢献した」(独連邦統計庁)というが、天候要因を差し引いてもユーロ圏のけん引役を十分果たした。スペインも前期比0.4%増で、危機からの立ち直りをみせている。
一方、フランスのGDPは前期比で横ばい。仏国立統計経済研究所によると、個人消費や設備投資など内需がほぼ総崩れとなった。イタリアは前期比0.1%減で、2期ぶりのマイナス成長に逆戻りした。
ユーロ圏全体では、最大の懸案だった債務危機は峠を越えている。アイルランドやスペインに続き、ポルトガルも今月中にユーロ圏や国際通貨基金(IMF)の支援から脱却する予定だ。一部の国を除けば、財政健全化にもメドが立ちつつある。その一方で債務危機を脱しても、景気の歯車がうまくかみ合っていない状況に陥っている。
通貨高も一因
ユーロ圏の失業率は11.8%で高止まりしており、家計の財布のひもは依然として固い。小売大手の仏カルフールでは欧州内での販売が1~3月期に前年同期比1.4%減。復活祭の祝日が例年より遅かったことなどを考慮しても0.4%増にとどまった。企業も新規の設備投資などには依然として慎重だ。
さらに単一通貨ユーロ相場の上昇も一部で企業活動を圧迫している。景気が低迷するフランスからは「ユーロ高は政治問題だ」(モントブール産業再生相)として、公然と是正を求める声も上がっている。
このような状況下で、経済の体温とされる物価も上がりにくい状況が鮮明となっている。4月の消費者物価上昇率は前年同月比で0.7%にとどまり、7カ月連続で1%未満となった。ECBのドラギ総裁は8日の記者会見で、6月に追加緩和を検討する姿勢を示した。
ロイター通信は14日、関係者の話としてECBが6月の理事会で小幅な利下げを含む複数の選択肢を準備していると報じた。
ユーロ圏の景気回復が緩慢なことが確認されたことで、金融市場でECBの追加緩和を織り込む動きが強まる可能性もある。