駅全域で無線LAN JR東、構内に共通回線を整備
まず東京駅で導入へ
東日本旅客鉄道(JR東日本)は駅構内の通信や防犯カメラなど複数のシステムを統合する次世代ネットワークを導入する。これまで個別に構築・運用していた各システムを共通のネットワークで統合。駅構内全域で高速無線通信が利用できるようになるほか、同社が電車の遅延情報などを乗客のスマートフォン(スマホ)などにリアルタイムで配信できる。2~3年後をメドにまず東京駅での導入をめざす。
JR東が14日から都内で開いた技術開発展示会で発表した。新たに導入するネットワークは「オープンフロー」と呼ばれる次世代通信制御技術を活用。構内放送用の装置、防犯カメラ、時刻案内表示機器などのシステムを統合し、一括して制御・管理する。新たなネットワークは既存の各システムに悪影響を与えず、設備ごとに安全性の高い通信経路が構築できるという。新ネットワーク基盤構築への投資額は数億円を見込む。
同社はこれまで駅構内のデータ通信や防犯カメラなどのシステムを別々に構築・運用していた。このため「個々のシステムごとに使用するケーブルが膨大で、保守にも手間がかかっていた」(JR東日本・東京電気システム開発工事事務所の情報制御調査グループの杉山英充氏)という。
新ネットワーク導入により駅の利用者に提供する高速無線通信の利用環境が大幅に広がる。現在は公衆無線LAN(Wi-Fi=ワイファイ)が自動販売機やキオスク周辺、店舗エリアなど駅の一部で利用できるが、新ネットワーク導入後は駅構内全域で使えるようになる。
2013年度中にまず東京駅で実証実験を実施し、2~3年後をメドに導入。以後、対応駅を順次増やす考えだ。
新ネットワークを導入することで駅の情報をサーバーなどで集約。構内の表示端末や駅の利用者のスマホに簡単に情報提供できるような環境も整う。スマホなどの利用者が専用アプリをダウンロードすれば、JR東が配信する電車の遅延情報や地震・火災などの異常時の案内などを直接受信できるようになる。
新ネットワーク導入はJR東の業務効率化にもつながる。これまでは監視カメラや防災システムなど各設備ごとにケーブルを配線する必要があったのに対し、共通基盤に統合すれば老朽化設備の取り換えや設備の更新が迅速化でき、費用の低減にもつながる。
今回の技術開発展示会では、クラウド技術を応用した鉄道情報利用プラットフォーム研究の一環として、乗務員向けタブレット(多機能携帯端末)「スマートクルー」システムも紹介した。電車の遅延情報などはこれまで当直の駅員がファクスで各駅に配信していたが、同システムを導入すれば駅員のタブレット端末にリアルタイムで配信できるようになる。すでに実証実験を終え、今年の10月から一部の駅で導入する計画だ。「新たな共通基盤ネットワークを導入することで駅員どうしの情報伝達が効率化できる。電車の制御システムなどにつなげる可能性もある」(杉山氏)という。
(電子報道部 杉原梓)
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