来れ保護司、ベテラン助言 担い手高齢化に危機感
犯罪者らの更生を支える保護司の高齢化が深刻になっている。平均年齢は年ごとに上昇し、現在は65歳近い。「若手」にあたる40~50代が減っている。各地の保護司会が交流会を開くなど担い手の育成に乗り出し、昨年は7年ぶりに微増に転じたものの、関係者の危機感は強い。
「対象者がゴミだらけの家に住んでいた。最近連絡が取れず心配」「悲観的にならず、楽しくやることが大切だ」
昨年11月、茨城県の龍ケ崎市や牛久市などの保護司でつくる龍ケ崎地区保護司会が開いた「陽だまり塾」。この日は約20人が集まった。
保護司を始めても罪を犯した人との付き合い方などに悩み、辞めてしまう人は少なくない。塾では、経験の浅い保護司がベテランに悩みを相談し、アドバイスを受ける。半年ほど前に保護司になった会社員、町田喜美子さん(59)は「先輩の事例を聞いて勉強になった」とほっとした様子だった。
これまで保護司が他の保護司と交流できる場は少なかった。法務省が2008年度から自治体の公民館などに地域の保護司らが集まる「更生保護サポートセンター」を立ち上げ、意見交換やノウハウを伝える機会は増えた。茨城県保護司会連合会の飯野満会長(73)は「昔は悩んでも誰にも相談できなかったが今は違う」と強調する。
熊本東地区保護司会(熊本市)のように、薬物依存の対象者への対応に絞った勉強会を開く地域もある。
法務省によると、昨年1月1日時点の平均年齢は64.9歳で、この20年間ほぼ一貫して上昇している。人員も4万7939人と、直近ピークの04年から1450人減った。高齢になっても働き続ける人が増えたり、地域のつながりが希薄になったりしたことが理由とみられる。
法務省や保護司会などの取り組みが功を奏し昨年は7年ぶりに微増(67人)したものの、「17年は再び減少が見込まれる」(同省)と状況は厳しい。
法務省は来年度、更生保護サポートセンターを58カ所増やし、計517カ所にする予定。保護司に興味のある人が各地の保護司会の研修会に参加し、仕事を体験するインターンシップ制度も今年から導入した。
昨年6月には、実刑判決を受けた薬物依存者などの懲役を一部猶予して社会の中で更生させる「刑の一部執行猶予制度」がスタート。薬物事件では猶予期間中は必ず保護観察が付き、保護司の役割は増す見通しだ。
今後、高齢の保護司はいっせいにリタイアする。法務省保護局の担当者は「先を見越して新しい人材を確保し、立ち直りを支える仕組みを維持することが重要」と指摘する。
▼保護司 保護司法に基づき、法相から委嘱を受けた非常勤の国家公務員。保護観察処分を受けた少年や刑務所を仮釈放された成人などが、再び罪を犯すことのないよう更生を手助けする。生活指導や就職先探しに協力するなど活動内容は幅広い。給与はなく、実費のみ支給される。任期は2年で76歳以上は再任されない定年制。法律上の定員は5万2500人だが、下回る状況が続いている。