ソニー、再建へ小さな本社 規模より効率重視
ソニーは18日、中期経営方針説明会を開き、すべての事業を分社する方針を明らかにした。携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」などを手掛けるAV(音響・映像)機器事業は10月をメドに、デバイスやデジタルカメラ事業も順次分社する。自己資本利益率(ROE)を最重要の経営指標に位置づけ、規模を追ってきたこれまでの戦略を見直す。「小さな本社」にして資本効率を重視する経営にカジを切り、再建を確実にする考えだ。
「ソニー本体に残る事業も今後、順次分社する」。同日記者会見を開いた平井一夫社長はそう語った。ソニーは昨年7月、パソコン事業「VAIO」を売却、テレビ事業も分社した。残る事業も時期は未定だが分社し、事業ごとの収益管理を徹底する。ソニー本体には経営企画や研究開発(R&D)部門だけを残し、「小さな本社でグループ経営戦略のスピードをあげる」(平井氏)。
分社化を加速する背景には、業績の低迷で株主から預かったお金である自己資本が減少したことがある。過去の利益の蓄積である利益剰余金は金融危機前の2008年3月期に2兆円強あったが、14年3月期には9402億円と半減した。
特に足を引っ張ったのが過去10年の営業赤字額が合計で3千億円以上に達したエレキ事業。成長が鈍化している同事業の分社を急ぐ。
18日に発表した15年度から3カ年の中期経営計画では、経営目標も大きく変えた。売上高や利益率を重視してきたが、今後は資本効率を最も重要な経営指標に位置づけた。14年3月期は最終赤字だったため算出できないが、中計の最終年度となる17年度にはROE10%以上を目指す。
選択と集中を明確にするため事業を3つに分類。テレビやスマートフォン(スマホ)などの課題事業は事業リスクの低減を最優先する。一方、デバイスやゲーム、映画・音楽などの成長分野には投資を集中する。
ソニーの15年3月期の連結営業損益は従来の400億円の赤字予想から一転、200億円の黒字に転換する見通しだ。業績の底入れ感や足元の収益体質の改善を受け、株式時価総額は5日に約1年半ぶりにパナソニックを逆転した。16日にも株価は昨年来高値(3282円)を更新した。
今回、売上高目標を示さなかったことについて、メリルリンチ日本証券の片山栄一氏は「事業撤退を含めた選択と集中を続け、収益を重視するという意志の表れ」と評価する。
ただ、成長戦略には具体性を欠くとの指摘もある。投じた資本を使ってどれだけ効率的に利益を出すかを示す投下資本利益率(ROIC)を各事業で導入することを表明したが、ROICの数値目標は示さず「何をもって達成なのか説得力が無い」(国内証券)との声も上がっている。
関連企業・業界