「毎日殴られた。精神がおかしくなり、海に飛び込もうと思った」――海自護衛艦「しらゆき」の陰惨な日常
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海上自衛隊横須賀基地に停泊する護衛艦「しらゆき」(中央・「123」の番号)。Aさんは先輩らから陰惨な暴力を連日受けていたという。 |
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- 毎日殴られ蹴られる――護衛艦はまるで『蟹工船』
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◇自衛隊内の暴力めぐる訴訟で国敗訴
2012年9月21日、札幌地裁の法廷でひとつの判決が読み上げられた。
「主文、被告は、原告に対し、150万円及びこれに対する平成20年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え」(石橋俊一裁判長)
被告は国、原告は元海上自衛官のAさん(現在26歳)。このAさんに対して国は150万円を賠償するよう、石橋裁判長は命じたのだった(札幌地裁・平成20年ワ1456号事件)。
Aさんは高校卒業後の2005年春、海上自衛隊に入った。あこがれの職場だった。教育隊を経て護衛艦「しらゆき」(横須賀総監部所属)の乗組員となったのは同年8月。年齢は若干19歳、2等海士というもっとも階級の低い立場だった。
配属されたのは「射管」というミサイルの射撃管制を担当する部署だった。先輩らの指示によって、もやい作業(出入港時に岸壁と結ぶ綱を扱う作業)や航行中の見張り、内火艇(上陸用のボート)の上げ下ろし、舷門の見張り(停泊中に艦の出入り口を警備する作業)を行うようになった。
立派な自衛官として公に奉仕すべく気概をもって船に乗り込んだつもりだった。だが、待ち受けていたのは、先輩や上司らの「虐待」だった。
殴る、蹴る、怒鳴る。――Aさんによれば、先輩隊員の乱暴狼藉が、連日繰り返された。狭い艦内では、逃げ場がない。結果、Aさんは精神のバランスを崩してしまう。PTSDと診断されて休職、やがて退職に追いやられた。
精神的な後遺症は癒えることなく、今でもときおり恐怖がよみがえって不安になる。仕事につくこともできず、自宅で療養を続けている。
裁判は、文字どおり「自衛隊に人生を狂わされた」ことに対する国の責任を問う形でおこされた。対する国側は、不法行為はなかった、と反論した。4年にわたる審理の結果、札幌地裁の石橋裁判長は、前述したとおり、一応、国側の非を認めた。
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海に流した段ボール紙を見失った旨報告すると、双眼鏡を覗いた姿勢のまま後頭部を思い切りなぐる。指示がないにもかかわらず内火艇(上陸などに使うボート)の上げ下ろしを手伝っていないと殴る。Aさんらへの暴力は、いずれも理不尽な動機によるものばかりだった(防衛省のHPより)。![]() |
「一応」というのは、原告の勝訴だといっても、Aさん側からみればきわめて不十分な内容だったからだ。
暴力行為については、Aさんが主張する被害実態のうち一部を認めたに過ぎない。それも毎日のように暴力が繰り返されたとAさんが訴えたにもかかわらず、裁判所は「一過性」だと判断した。
またAさんが精神的な障害を負った原因についても、艦内暴力とは関係ないと断定した。
いずれも納得できない判決だとしてAさんは控訴、現在、札幌高裁で審議が続いている。
Aさんの訴えの一部しか認めていない判決だが、それでも、そこに書かれた暴力の事実は驚愕に値する。
毎日殴られ蹴られる――護衛艦はまるで『蟹工船』
Aさんが「しらゆき」に乗り込んでいたのは2005年8月から同年10月までの約2ヶ月間だった。
判決によれば、その間、先輩隊員のT士長やW3曹から次のような行為をされたという
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護衛艦しらゆきが所属する海上自衛隊横須賀基地。最高責任者の横須賀総監は出世コースで、海上幕僚長や統合幕僚長への近道でもある。だが自殺者を出した護衛艦たちかぜの暴力・恐喝事件や護衛艦しらねの火災など不祥事が絶えない。
護衛艦しらゆき艦内での暴力をめぐる国家賠償請求訴訟が続く札幌高裁。①暴力は日常的だった、②Aさんの精神的疾患と上司・先輩の暴力行為には因果関係がある―ーとAさん側は訴えている。
自殺者が突出して多い自衛隊のなかでも、海上自衛隊は特に自殺者が多い。先輩らから、ささいなことが原因で毎日のように殴る蹴るの暴行を受けていたAさんやHさんも、楽になりたいと自殺を考えたという。そうした陰惨な実態は外部からはなかなかわからない。岸壁で護衛艦「きりさめ」の接岸作業を行う海自隊員(佐世保基地)。
護衛艦の航行中に隊員が行方不明になったり自殺することは珍しくない。インド洋派遣中に隊員が自殺した護衛艦「きりさめ」。真相は不明だ。
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海自に居た頃は実際に目下の人を海に突き落としたりは普通にやってたと元自衛官に聞いたことがあるからガチなんだろうなあ:
橋下も,石原も,安倍ちゃんも,こんな国を作りたい。
軍隊は大日本帝国に限らずどの国もイジメあるよ。日本特殊論はよくない。もちろんイジメはよくないが。
つ『陸奥爆沈』
組織の特殊性からある程度は仕方ない面があるにしても、組織としての統率を取るためには私怨とかいじめには特別厳しく対処しないといかんと思うぞ
いじめは公立学校の産物だの日教組のせいだの言ってた皆さん、カモーン!/これもれっきとした日本の伝統だと直視すべき。
旧日本軍にあったいじめの構造がまだあるのか。国防軍だの云々言う前に自衛隊のこういった問題をきちんと解決しようとする気はないのだろうか
学生の頃ライフル射撃やっててOBに自衛官いっぱいいたけど、イジメの話はよくきいたな。海自は知らないけど、遊ぶ場所も逃亡する手段もない海の上とか想像しただけで地獄。
新兵訓練は「人を殺せない人」を「命令で人を殺せる人」に変える為に通過させる異常体験。問題は、それが訓練の為に安全弁を備えたルール下でされるか、教官の個人的な暴力癖に任されるか。日本は後者が大杉。
民間がブラックに陥りやすいのも、若者徴兵すれば鍛えられるとか俗論が根強いのも、軍隊的シバキ主義の暗部を直視せずシンパシー抱く伝統のせいだよね。倫理性は教育のみならず、制止システムなしには維持できない。
逆に言うと、それだけ自衛隊のイメージアップ作戦が成功しているという。
「「毎日殴られた。精神がおかしくなり、海に飛び込もうと思った」――海自護衛艦「しらゆき」の陰惨な日常」。それでも「9割を超す人が自衛隊に「良い印象」を持っている」
この立証し難さ加減。。 自身を制御出来ない隊員や、これを黙認し組織防衛する上官、同僚達は、徹底した価値観の転換を必要とする『しくみ』を作って投入し続けない限り、本来の『目的』を見失い続けるのだろうね
「鬼の金剛地獄の山城、いっそ長門で首吊ろか」とは軍艦での水兵いびりの酷さを唄った帝国海軍のざれ歌ですが、海自は立派な帝国海軍の末裔だな!
軍隊志向とシバキ主義は切っても切り離せないわな
あってはいけないこと。しかし、世界中の軍隊の水面下の現実。それを「自衛隊の~日本の~」と矮小化かける連中が気持ち悪い。そして蟹工船て(失笑。フルメタルジャケット貸したげるからお得意の勉強会でもすれば?
これはひどい
なんか容易に想像がつくな。
『自殺者が突出して多い自衛隊のなかでも、海上自衛隊は特に自殺者が多い。先輩らから、ささいなことが原因で毎日のように殴る蹴るの暴行を受けていたAさんやHさんも、楽になりたいと自殺を考えたという。』
「帝国軍」がうんぬんとかではなくて。じゃあその辺のブラック企業は帝国軍の系譜なわけなの?閉鎖空間に人を閉じ込めたときに起こることが起こって、それへの対処を怠ったことが国の落ち度という話。
「若造を自衛隊に放り込んで性根を鍛え直し」たい自衛隊シンパのタカ派老人の期待に応えまくってますな。こうでなくては連中は満足しないもんな(嘲
こんな事まだやってるんだ。悪しき伝統。
潜水艦で溺死した自衛隊員がいたが、暴力から逃れるために隠れたため溺死してしまったのかなと憶測をしてしまう。
学校といい警察といい閉鎖空間は例外なくどこか腐ってるね
蟹工船が出てくるあたりが臭う。
教育のために学生を自衛隊を放り込みたいとか思ってる人たちは、この事態をどのようにお考えなんですかねえ。
自衛隊は愛国組織だ。だからいじめなどありえるはずがない。こいつは在日だ。
しらゆき・・・orz力で来るか言葉で来るか違いはあれど、どこもいろいろあるとは思う、某業界の1年に何度かは同僚を片付けなきゃいけなかったって話を聞いたときは「うわー」って思ったけど。
自殺率が世間より高いというのは疑問があるという情報もあり。
暴力装置怖い
「制裁」に見る旧軍体質の継承。大日本帝国は生きている。
まさか、海軍精神注入棒とかまだあるんじゃなかろうかね。
"殴る、蹴る、怒鳴る""先輩隊員の乱暴狼藉が、連日繰り返された。狭い艦内では、逃げ場がない。結果、Aさんは精神のバランスを崩し""PTSDと診断されて休職、やがて退職" →(内容) 隊員が自衛できない自衛隊
現代の真空地帯なのか。
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読者コメント
三宅勝久氏の著作の他に自衛隊の闇: 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って 大島 千佳著 (NNNドキュメントを編集)のような書籍を読むと証拠隠滅を図る自衛隊に対し驚くしかなかった。たちかげの教訓を何一つ活かそうとしないが故に当記事のしらゆきの事件もある。全くふざけた組織だ。
2004年に起きた護衛艦「たちかぜ」での海自隊員自殺事件など実際にいじめによる自殺が後を絶たない。年に100人近く死ぬ自衛隊という組織は異常である。それを是正しようとしない姿勢に怒りを覚える。
私の父、大正2年生まれ の軍隊生活となんら変わらない、一部上場企業東芝粉飾上司も同じ、「習慣」は不変で続く、敗戦で学んだのは「強いものには逆らわない」。
呉海上自衛隊地方警務隊は、暴力団的な行為で、罪のないものを、脅迫する行為をする。それを、抗議すると、行政事務などと屁理屈をいう。広島地方検察庁に訴えたが、不起訴処分となった。こんな調子のよい部隊が、あることを安倍総理は知っているのであろうか。
外部からの批判に対して開き直る元自衛官と現役自衛官。この態度をみても、条件さえ整えば暴力が外部に向かう可能性がある。そこが一番あぶないところだ。実際、いま市民を監視し、公安警察的役割を果たしている。
この頃ちょうどしらゆきに乗ってたけど蟹工船みたいだったとは思わない。旧海軍とは違い希望すればすぐにやめさせてくれる。この被害者にしても寝坊、失敗、反抗的態度これで公に奉仕すべく気概を持っていたのかね?2ヶ月目なんて怒られることしかない。まぁこの記者は明らかに今回の事件を利用して自衛隊の評判を落としたいを言う意向があるようだから正論ぶつけても意味ないでしょう。
書き込む場所を間違えてしました。↓クウェート基地でのひき逃げをめぐる訴訟のことです。
国側は請求棄却を主張して全面的に争う姿勢をみせました。次回弁論は3月1日11時より名古屋地裁1101号法廷。
自衛隊が国民に必要なのは事実。しかし現場が正常に機能するためにもこういったイジメを止めさせる仕組みを導入しよう。このレベルからもイジメ問題に取り組まなければ学校のイジメだって減るはずがない。
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