ウェブサイトの収益性やユーザー登録数などを、A/Bテストなどの改善によって高めていく「グロースハック」。それを手がける人たちである「グロースハッカー」の活躍が近年注目されています。以前お届けした記事では、企業やサービスを成長させる仕掛人であるグロースハッカーが、新たな職業としてより脚光を浴びる可能性があることを紹介しました。

現在、オンライン学習サービス「schoo WEB-campus」と、1000名を超すグロースハッカーのネットワークを持つ「Kaizen Platform」が共同で、全7回にわたるグロースハッカー養成カリキュラムを開講中です。

本連載では、授業の内容をおさらいしながら、グロースハッカーに必要な観点や要素を探っていきます。

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連載第1回は、2014年12月4日放送分の授業より、主にPCサイトの収益性や効果の改善事例を紹介します。ボタンの色、デザインの細かな調整、キャッチコピーの変更で5%~30%を超える差異が出るグロースハック。オバマ大統領の寄付金事例と同様に、すでに一定以上の効果や売り上げが立っているサイトだけに、わずかな差異でも大きな価値が生まれるといいます。

そもそも、なぜいまグロースハッカーなのか

今回の授業を担当するのは、Kaizen Platform, Inc.の鬼石真裕先生。授業前に、鬼石先生に「新しい職業」としてのグロースハッカーの魅力について聞きました。

鬼石先生:Kaizen Platformを利用したA/Bテストは、プロフェッショナルなデザイナーやクリエイターをはじめ、誰もが参加できる仕組みになっています。ですから、僕らのプラットフォームの中では、「あくまで効果が出るか出ないか」という共通の指標で報酬が支払われ、グロースハッカーたちを評価できることも大きいです。制作会社でもフリーランスでも、等しく履歴書に書けるような実績が増えると、新しい評価指標が定着していきます。

地方にいながら、首都圏や海外にある大きなクライアントの仕事に携われることも魅力です。たとえば、福岡で活躍している女性のグロースハッカーは、フルタイムの稼働ではなく、月収70万を得ています。僕らも「制作コストを下げる」という観点よりも、地域差や賃金格差がなく、フラットな状態でクリエイティブが評価され、報酬を得られる点で、より仕事を欲していて、モチベーションが高い人に行き届くようにしたいと考えています。

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従来までは、サイト改善のA/Bテストは、クライアントから請け負った広告代理店や制作会社が、グロースハッカーに作業を依頼して行われることがほとんどだったそう。グロースハッカーに作業対価が支払われることはあっても、その結果まではフィードバックされませんでした。一方で、Kaizen Platformを通じた改善提案では、グロースハッカーが自由にクライアントへ直接提案でき、A/Bテストの結果が定量的に把握できるといいます。

クライアントや担当者の「なんとなくかっこいい」といった曖昧な基準のみで選ばれることなく、仮説のもとにある複数の提案から、成果をベースにしたアイデア採用のサイクルができあがります。すると、アイデアを応募する側にとっても、グロースハッカーとして有名か無名か、どの地域に住んでいるかといったことは関係なく、フラットな条件で提案を競わせることができるわけです。

土地、時間、キャリアに縛られずにチャンスをつかめるのも、「新たな職業」としてグロースハッカーに期待がかかる点といえます。

パフォーマンス向上に効く基本の4要素

さて、鬼石先生曰く、グロースハックでまず考えるべき要素は以下の4点だといいます。

1.レイアウト

2.コピーライティング

3.アイキャッチ画像

4.アクション導線まわり

具体例を挙げると、「レイアウトは画面を開いて、まず目に入る部分(ファーストビュー)に命をかけるべし」、「コピーライティングは数字や比較表現を混ぜたり、視覚や聴覚に訴えたりできるものを選ぶ」など、細かなポイントがあるそうです。この4点の具体例については、下記を含めた4つの録画授業で解説しているので、併せて参考にしてください。「何から始めたらいいかわからない」という人にとっては、良い取っ掛かりになるでしょう。

現在、Kaizen Platformには6000を超えるテスト事例が集まってきているそうです。以下、今回紹介するPCサイトの改善事例をいくつか見ていきます。授業では、ランディングページ(LP)、会員登録ページ、サイトの回遊施策など、複数の改善事例が解説されていますが、ここではそのうちの3つを取り上げます。

事例1:航空券予約サイトのランディングページ改善

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ゴールを「予約数のアップ」においた事例。改善前の状態である左例に対し、アイキャッチとコピー、アクションの導線を変えた中央例では10%の向上が見られました。一方で、右例では予約が減ってしまっています。

中央例で大切なことは、ユーザーが取るであろうアクションの「予約したい路線検索」をファーストビューで目立たせた点。スクロールしたり他の情報を見せたりすることなく、ユーザーにとってやりたいことができるようにしたことが効果的だったのでしょう。

事例2:リラクゼーションサービスの会員登録ページ改善

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ゴールを「会員登録数の向上」においた事例。コントラストをつけて登録ボタンを強調したことで、ユーザーのアクション導線を作れたことが大きな効果を発揮しています。

事例3:ECサイトのカートへ登録した後での購入数改善

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ゴールを「カートへ登録した後での購入」においた事例。アイコンやコピー、ボタンの色を変えてテストしたところ、色をブルーにしたものが最も高い効果を上げました。一方で、コピーを外してアイコンだけにしたものも良い数値を残しています。このように、アクション動線へのコピーやデザインを検証するだけでも、5~10%近く成果が変わることもあるのです。

鬼石先生は「ボタンの色に関しては『緑やオレンジが良い』といった話もあるが、やはりサイト全体のトーン&マナーと合うかを見ながら、鉄板はないという考えでテストすることが大事」と言います。

まずは鉄板施策を試し、時にはセオリーも外すべし

今回の授業は、鉄板施策(アイキャッチ/アクション動線/コピーライティングの変更)はまず試すべきであること。そして、ユーザー心理はアクションしたいニーズの多様化もあるため、鉄板の施策を試しつつ、時にはセオリーを外してみることも忘れてはならないとまとめられています。

また、受講者からの質疑応答で、「A/Bテストの完了目安はどのように定めればよいか」と問われた鬼石先生は、「季節性で動向が変わるものだと、ユーザーが変わっていくので、そういったページはテストをやり続けましょう。キャンペーンページなら期間中で結果推移が見られるため『一定の期間』で区切る。どのようなゴールを設定するかはページ種別で異なるが、いずれにしても『何パーセントのアップ』などのゴールは決めた方がいい」と答えてくれました。

グロースハッカーは改善に関する総合的な知識がなくてはならないと思われがちですが、以前の記事も書いたように、自分の持つ得意分野を活かしながら、さまざまなスキルを横断して価値を見つけ出し、実践できることこそが望ましいそうです。そのためにも、数多くの事例を知り、実践することが成長につながっていくはずです。

schoo WEB-campusでは、録画授業を配信中

schoo WEB-campusで無料にて公開されている録画授業では、鬼石先生の解説と共にさらに多くの事例に触れられます。そして、すでに放送済みの第2回授業では、スマートフォンサイトの改善がテーマ。こちらも録画授業としてすでに配信されています。

そして、本日1月13日19時半からは、第3回授業「ユーザーニーズの捉え方と整理の仕方 webサイトにおけるインサイトマーケティング」が生放送で開講されます。グロースハックを学びたい人はもちろん、この分野が気になる方にとっても注目です。

Facebookアカウントかメールアドレスを登録して「学部生」となれば、授業を見られます。学部生になると、新着授業のお知らせ、先生からの必須ツールの紹介などのメルマガも届きます。グロースハッカー養成講座は、現在、1万人を超す学部生がいる「WEBデザイナー学部」でも人気の授業。他の授業も、第一線で活躍する講師から最新の制作スキルが学べるので、良い機会となるでしょう。

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(長谷川賢人)

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