「正眠=正しい眠り」のための枕研究をテーマに、日本で初めての「枕外来」を開設。「マクラ・エバンジェリスト(枕伝道師)」を自称する整形外科医である著者が、枕についての知識をわかりやすく解説しているのが『枕を変えると健康になる!』(山田朱織著、あさ出版)。

枕とは、ひとことでいえば「寝ている間に健康になる」ためにあるのです。

ここまで重要な役割があるとなると、気になるのはこれでしょう。

「では、どんな枕を使ったらいいの?」

それをまとめたのが、本書です。

(「はじめに」より)

なるほど、枕選びは重要だけれど、なかなか難しいもの。きょうは、多くのビジネスパーソンの悩みを解決してくれそうな第1章「それ『枕不眠』ではありませんか?」に目を向けてみます。

「5ミリ」の差が、睡眠の質を決定づける

枕を選ぶ際には、硬さや素材を気にかけることももちろん大切。しかし、著者が整形外科医としてまず指摘したいのは「高さ」なのだそうです。二本足で生活している人間の体は、つねに頭の重さを支える必要があります。そして、頭の重みから唯一解放されるのは横たわった姿勢。だからこそ、一日の疲れを癒すためには、睡眠時、首には負担をかけては行けないという考え方。そして負担をかけるのもかけないのも、枕の「高さ」によって決まるのだといいます。

下のイラストとレントゲン写真のように、枕が少し高すぎても、少し低すぎても、首は不良な角度に折れ曲がり寝ているときにも負担がかかってしまうもの。そればかりか首の角度は背骨にも影響するので、不適切な高さの枕で寝ることは、体全体が不良な姿勢の状態を、何時間も続けるということになってしまうわけです。

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そんな理由から、著者のクリニックで行なっているという枕指導の際にも、枕の高さを5ミリ単位で調節しているのだとか。その理由は、たった5ミリが、睡眠の質に雲泥の差を生むから。しかしそれは、睡眠の質を左右しているさまざまな要因のうち、枕ほどわかりやすく修正可能で、そのぶん効果があらわれやすいものはないということでもあります。(22ページより)

枕がドーナツ型にへこんでいたら要注意

朝、起きたときに枕がドーナツ型にへこんでいたとしたら、頭が枕にずっしりと沈み込んで、首が不自然に反り返っている証拠。柔らかすぎる枕は、実はもっとも首に負担をかける枕だといってもいいくらいなのだそうです。

また、朝、起きたときに枕がずれていたり、枕から頭が落っこちたりしていたら、さらに枕が不適合だということ。つまり、しっかり枕に頭をのせて寝たはずなのに、朝に枕がずれているのは、眠っている間に体が「格闘」していた痕跡。合わない枕の上で、寝返りを必死に行なっていたということです。

他にも気にかけるべきポイントは多数。下記にあてはまるものがあるでしょうか?

朝、起きたときに......

□ 枕がドーナツ型にへこんでいる

□ 枕がずれている

□ 枕から頭が落っこちている

□ 枕の低いところを求めている

□ 枕の高いところを求めている

□ 枕を肩下に引き込んでいる

□ 敷物を手で押して寝返りを打つ

□ 枕の下に手を入れている

これらはすべて、枕が合っていない証拠だそうです。(30ページより)

いびきもピタリとおさまる?

睡眠時無呼吸症候群は肥満気味の男性に多いと思われがちですが、やせ型の女性にも少なくないのだとか。寝ているときに無呼吸になるのは、横になった際になんらかの原因でのどの閉塞が起こるから。つまり肥満男性の場合は首まわりの脂肪の圧力によって気道がふさがれるわけですが、やせ型女性でも、「もともと顎が小さい」「舌が大きい」といった体の特徴のために空気の通り道が狭くなるわけです。

もちろん持って生まれた体の特徴を治療することはできませんが、ただ枕を適切な高さに調節し、首がまっすぐに伸びた睡眠姿勢をつくることで気道を広げることは可能。それだけでも、ずいぶん症状が軽減するといいます。首がまっすぐになるように枕を正すことが、気道を確保するために有効だなのです。(42ページより)

「大切だから高級な枕を買え」というようなことではなく、著者の目的は、あくまで枕についての正しい知識を伝えること。ピッタリ合う枕を簡単に手づくりする方法なども紹介されているので、とても役に立つと思います。

(印南敦史)

※記事中の画像は出版社にご提供いただき、掲載をしております。