ブルース・リーは、史上もっとも生産性の高かった人物のひとりと言えるでしょう。32歳という若さでこの世を去った事実を考えると、その生産性は特に注目に値するものです。アクション映画のスター、武道家であるのみでなく、講師、脚本家、映画監督、哲学者という顔も持っていました。今回紹介するのは、そんなブルース・リーから、私たちが学べることです。

重要でないものは削ぎ落とす

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ブルース・リーはジークンドーという武道と哲学の体系をつくりました。ジークンドーの基本哲学は、動きを最小限にとどめ、真に重要な動きにだけ集中することです。リー曰く「本質的でないものを削り落とす」こと。「熟練は、シンプルさにおいて宿る」からです。

リーは常々、効率性、端的であること、シンプルさについて語り、「動きの倹約」を説いていました。それは、彼の武道において、最大の力で、最速に標的に近づくことを表します。こうとも言えます。すばやく、正確に、最小限の努力で、実行することです。

生産性という観点から言えば、この考え方はまさにライフハッカーがつくられた際の基本的な考え方と一致します。本サイトで紹介してきた、行動をシンプルにすること、本当に重要なことにだけ集中すること、無駄をなくすこと、といった考えは、既にリーが語っていたことだったのです。

では、物事をシンプルにするための一番簡単な方法とは? 自分が必要だと思うものだけを残して、重要でないことを、削ぎ落とすことです。既に持っているものについてだけ、述べているのではありません。リーは、よく周囲に語っていました。有用だと思うものだけを吸収して、それ以外は捨て去れ、と。

自分がどのように周囲に反応するのかを意識する

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どのような武道においても、自分自身だけでなく、自分の周囲にいる人に対しても意識を向けなければなりません。リーにとって、こうした意識が、自分自身を見つめる際の基礎となっていました。

意識において、選択、要求、不安は存在しない。そうした精神状態においては、知覚だけがある。自分のことを理解するには、自分がどのように別の人間に対して反応するのか、じっくり見つめなければならない。

周囲に対して自分がどのように反応するのか、という点に意識を向けるべきだという考え方は、もちろん武道に限ったことではありません。コミュニケーション全般について言えることです。職場においても、パートナーとの関係においても、自分自身、そして自分のコミュニケーション方法についてじっくり見つめることができれば、自分のことだけを見ている人よりも、より上手く状況に対応することができるはずです。

「考える時間」と「行動する時間」のバランスをとれ

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人によって、プロジェクトの準備にばかり時間をかけてしまう人、逆に準備はせずにすぐに行動する人がいるかと思います。準備と行動、これはどちらも必要なことですが、この点について、リーは思考と行動のバランスに気をつけるべきだとアドバイスしています。

私たちの精神が平穏なときには、熱狂的に取り組んでいた活動の途中でも、休息が訪れます。解き放たれる瞬間であり、それは瞬間的な認識とも言える、2つの思考のあいだに訪れます。(中略)思考と行動のバランスをとってください。ある特定のことについて思考を深めるのに時間を使いすぎると、それを行動に移すことができなくなります。

本誌でも、考えを深める時間をとることについて、多くのアイデアを紹介してきましたが、実際、考えることに時間をかけすぎるあまり、行動に移すこと自体を忘れてしまうというのは、本当によくあることです。しかし、とにかく行動することが、もっとも重要であることもあるのです。

水のようにしなやかであれ

ジークンドーが掲げる目標のひとつが、どのような状況や相手にも対応する方法を身につけるというものです。それはつまり、しなやかさです。リーは、人はみな、どのような状況に置かれようとも対応できるべきであり、また対応できるという意識をもつことが必要であると考えました。

頭を空っぽにし、輪郭も形もない水のようになりましょう。水をコップに注げば、水はコップになります。瓶に注げば、瓶になります。急須に注げば、急須になります。水はしなやかに形を変えます。でなければ、機能しません。水のようになりましょう。

リーがここで伝えたかったことは、彼が自らの人生においても実践していたように、人はできるかぎり、しなやかである必要があるということです。職場や人生の状況に適応する、ということです。知識を育み、異なる視点を学ぶようにして、さまざまな状況に対応できるようにすることも大切です。自分を訓練して、周囲の環境にもっと意識を向けるようにする、ということです。

Thorin Klosowski(原文/訳:佐藤ゆき)