Anil Dash氏はニューヨーク在住の起業家で、ライターでもあります。コンサルティング企業「Activate」と、ソーシャルメディア管理ツールを提供する「ThinkUp」の共同創設者であり、1999年から続く「Dashes」を運営するブロガーでもあります。ギークでもある彼は、テクノロジーが文化・社会・メディア・政府を変えていくことに強い関心を持っています。彼の仕事は、テック系ベンチャー企業のテクノロジーやイノベーションを公共機関や地域コミュニティに持ち込むことであり、自身のブログにてその詳細を伝えています。そんな多様な経歴を持つDash氏が今回語るのは「ソーシャルメディア依存から抜け出すヒント」です。
昨年、写真共有サービス「Flickr」の共同創設者として著名なアメリカ人起業家Caterina Fake氏が「ソーシャルメディア依存症」という現象を紹介して話題になりました。「FOMO(Fear of Missing Out)」と呼ばれるこの現象は、FacebookやTwitterなどのSNSを常に確認しないと不安になる心理状態のことです。ソーシャルメディアの普及とともに台頭してきた社交不安障害のひとつで、ネットユーザーの間で広く認知されることになりました。
確かに、タイムラインに表示される友達の投稿は面白いものばかりで、いつ見ても華やかなタイムラインを見ていると「自分の人生なんてつまらない」と思ってしまう気持ちはよくわかります。
私がこの現象について知ったのは、息子のMalcolmが生まれて1カ月ほどたったころでした。当時の私は1カ月以上もインターネットに触れておらず、家を出ることもほとんどありませんでした。しかし、当時の私はソーシャルメディアから距離を置いたからといって不安になるようなことはありませんでした。
それどころか、私の人生は幸せに満ちていました。この経験から、私はソーシャルメディアと幸せに暮らす2つのヒントを考えるに至ったのです。■素晴らしい機会を逃すことを恐れない
私はニューヨーク市内に住んでいるので、新しくニューヨークに住み始めた人に会うと、ついアドバイスをしたくなります。公共交通機関の使い方やお金の貯め方など、ここに数年住むとわかる「お決まりのアドバイス」がいくつかあるのです。そのアドバイスの中でいつも伝えるようにしていることが1つあります。それは、「ニューヨークに住んでいても多くの素晴らしい機会を逃すことになる」という経験則です。ニューヨークでは、毎日のように素晴らしいイベントが開催されています。しかしほとんどの場合、そのようなイベントに参加することはないでしょう。
素晴らしいイベントや特別な機会を逃してしまう理由はさまざまです。そのときお金がなかったから、チケットを取り損ねたから、イベントに参加しても知り合いが誰もいないから、参加しても知り合いが多すぎてウンザリするから、その時の服装がカジュアル過ぎたから、もしくはフォーマル過ぎたから、二日酔いだから、次の日が仕事だから...など。
上記のような特別な理由がなくても、ただ単に自分の部屋で休日を過ごしたいときもあるでしょう。そして、歳を取れば、現在の私のように「子供と過ごす時間が他のどんな時間よりも幸せ」と感じられるようになるかもしれません。
ソーシャルメディア依存から抜け出すヒントは自分だけの幸せや楽しみを持つことです。これさえあれば、ソーシャルメディアのタイムラインを見て落ち込んだりするようなことはありません。あなたにはもっと大切なものがあるのですから。
■素晴らしいイベントの誘いは「まず断る」
あなたの知人や友達が素晴らしいイベントに参加していると知ったとき、あなたはどう感じるでしょうか? たとえ、あなたがそのイベントに参加できなくても、静かに共感して、素直に「いいね!」と思えるでしょうか?
私たちはよく、新しいテクノロジーを指さして「これは人々を不安にさせている」とか「あれは社会を不安定にさせている」とか言います。近年、ソーシャルメディアが急速に広まったこともあり、そのような側面は特に強調されがちです。個人的にはこのような「テクノロジーが人間の感情を支配している」という考え方があまり好きではありません。ただ、本当にテクノロジーが人間にネガティブな影響を与えているなら、テクノロジーを非難するだけではなく、どのように改善していくかを考えるべきでしょう。私たちは、人々を不安にさせるようなアプリではなく、元気にさせるアプリを作っていく必要があります。そうすれば、友達や他人が素晴らしい時間を過ごしていることを心から祝い、喜べるようになるでしょう。
私はこれまで素晴らしいイベントに参加してきました。今でも本当に素晴らしいイベントに招待してもらうことがあります。しかし、私はそんなお誘いをデフォルトで断るようにしています。イベントの主催者が「来ないと後悔するよ!」と言っても、心の中では「いや、後悔しないよ」と返しているのです。
私がこうしている理由は、「自分の行動は自分でコントロールしたい」と思っているからです。スマートフォンのアプリにイベントの情報が表示されているからといってそのイベントに参加する必要はないし、「自分も社交的にならないといけない」といった圧力を感じる必要もありません。社交的になるのを否定するわけではありませんが、本当に行きたいかどうかは自分の心に問いかけて決めるようにしましょう。それができれば、ソーシャルメディアと幸せに暮らせるはずです。
JOMO! | Anil Dash
Anil Dash(原文/訳:大嶋拓人)
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