2016/07/14(木) - 18:04
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世界遺産カルカソンヌの街をスタートする第11ステージ。世界遺産に指定された要塞都市「シテ」はすぐそばにあれど、新市街の建造物に阻まれて、選手たちの集まる広場からは臨めず。
いわゆる山岳と山岳の間の平坦の「つなぎステージ」と呼ばれる日。総合争いに関係なく、ゴールスプリントで決するスプリンターの日という認識に、少しのどかな雰囲気でスタートの準備が進む各チーム。しかし全員のバイクがローラー台上にセットされていたのはチームスカイ。フルームバイクのバーテープはイエローに巻き変えられているが、レースに対して油断する気配はまったく無いということ。
総合ディレクターのプリュドム氏はモンペリエを「スプリントの首都」と名付けたが、それはもし平穏に事が運べばのこと。平坦路には違いないが、この日最大の敵は風。ミストラルあるいはトラモンターヌと呼ばれる地中海から吹き付ける風が、過去のツールで集団を分断してきた。
2013年はアルベルト・コンタドールとティンコフが横風区間でアタックを掛けて分断を試み、成功させた。チームスカイもその罠に嵌り、コンタドールに1分09秒差を譲り渡した。その失敗から学んだ教訓をもとに、チームスカイはレース前のウォーミングアップを開始した。まるで昨10ステージの登りスタートのように。レース前半も風が吹く可能性がある区間だ。
チームスカイはフォードのスポーツカー「マスタング」も用意。コースを先行して得た情報を逐一、監督や選手たちに伝える。ティンコフはじめ数チームがこの方式は採用しているが、スカイは徹底して行っている印象がある。
ハードな展開に持込み、今日のステージこそ勝ちたいアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)。今のところカヴェンディッシュとキッテルに敵わずに来ているが、一矢報いたいところ。静かに意気込むクリストフの脇ではヴィアチェスラフ・エキモフ監督がプロ仕様の一眼レフカメラで撮影しておどける。カチューシャはあえてリラックスしたムードを作る流儀だ。
新城幸也(ランプレ・メリダ)は「今日は風が強すぎるので逃げません」とひと言。フランス南部のこの地方の風のことは知っている。ルイス・マインティーズの護衛にあたる重要な日だ。ユキヤはスタート前にはパワーバーブースに用意された補給食をポケットにたくさん詰め込む。風が吹けばサコッシュが取りにくい日になる。
結局は世界遺産の「シテ」を少しも臨まず終いでカルカソンヌを発ったプロトンは、さっそく風の強い平野へと出る。やはり十分に身体を暖めていたチームスカイが前方を固めて。
乾燥した大地に伸びる道は狭く、曲がりくねっている。この地域一帯は乾燥と熱風によってときどき火災が発生するが、この日もそれが起きた。前半、プロトンが向かう進行方向に山火事の煙が立ち上り、立ち込める煙の匂い。
火事はコースにごく近いところだったため心配したが、レースの通過には幸いにも影響なし。しかし迂回する関係車両の行きたい道がまさにその山火事ポイントとなり、補給チームやプレス陣は大混乱した。
フランスチャンピオンのアルテュール・ヴィショ(FDJ)とリー・ハワード(IAMサイクリング)の二人が逃げると集団の動きは一旦は落ち着いたものの、細かく進行方向を変える曲がりくねったコースに集団は難儀することに。風にも翻弄され、落車が頻発するようになる。集団の後方では怪我を負った選手たちが順番にメディカルカーによる手当を受けながら走る。
落車の頻発するコースの難易度に、レース後に主催者にクレームをつけたのはモビスターだ。「オーガナイザーはスペクタクルなショー的要素をレースに取り入れたいのかも知れないけど、選手たちは命をかけて毎日レースを走っている。とくに今日のコースは危険がいっぱいだった。もう少し選手たちの安全を考えてコースを設定してほしい」。
曲がりくねった道に、吹き付ける追い風と横風。ティンコフやアスタナ、トレック・セガフレードがペースを上げると、集団は分裂し、斜め隊列「エシュロン」を形成。分裂してはまとまり、また分裂するの繰り返し。
モンペリエが迫り、結局はまとまった大集団でのスプリントを迎えると思った矢先、再び横風が吹き出す。フィニッシュまで12kmを残し、2013年も分断に寄与したチームメイトのマチェイ・ボドナールを従えてサガンがアタック。その動きにクリス・フルームが一瞬の判断で飛びついた。それを見たゲラント・トーマスも即座に反応。4人の逃げが始まった。マイヨジョーヌとマイヨヴェールが共に逃げるという前代未聞のショーの始まりだった。
サガンは言う。「クレイジーな風だった。ラスト15か12kmかわからないけど、本当にクレイジーな強風だった。そのアタックは計画していたものなんかじゃない。危なかったから、集団が分断するから集団の前に居なければならなかった。そしてマイヨジョーヌとマイヨヴェールの二人と、ボドナールとトーマスの2人が加わった逃げができた。計画的にできることじゃない。ただそうなったんだ」。
集団を分断させることも、前で展開したことも今日のティンコフにとっては目的はひとつだった。2013年のようにコンタドールの総合順位のためのタイム獲得ではなく、昨日2位に終わったサガンのステージ優勝それのみ。ピュアスプリンターを含む集団でモンペリエに雪崩れ込むより小集団のフィニッシュを狙った。
そしてサガンのアタックに一瞬の判断で飛びついたフルームと、それを追いかけたトーマス。ステージ優勝とマイヨヴェールのためのポイントが欲しいサガンと、キンタナなどライバルたちに総合タイム差をつけたいフルーム。2位でもフルームにはボーナスタイムが待っている。その判断を一瞬のうちに下した2人とそれぞれのアシストが、小さな同じ船に飛び乗った。それぞれの目的が違うからこそ協調できた逃げ。
マイヨ・ジョーヌとマイヨ・ヴェールが平坦路で逃げるという光景は、のどかな時代のツール・ド・フランスならあり得たかもしれないが、現代のツールではまずあり得ない。(あるとすればシャンゼリゼステージでのカメラタイムだけだ)
そして予想通り、フルームはサガンに対してゴールスプリントを仕掛けた。通常、目的を果たした総合狙いの選手は協力した選手の後方につけてゴールするものだ。しかしどこまでもアグレッシブなフルームは貪欲にスプリントした。狙ったのは勝利ではなくフィニッシュラインにいち早く飛び込み、わずかでもタイムを稼ぐことだったかもしれないが。
ボドナールに勝利させることも考えた控えめなガッツポーズのサガンに対し、フルームは真っ先に後ろとの差を確認した。クリストフらがフィニッシュラインに雪崩れ込むのはその6秒後。フルームは+ボーナスタイム6秒を合わせ12秒という勝利をまんまと手に入れた。
総合狙いの選手たちは揃ってフルームから12秒遅れ。総合5位につけていたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)と総合9位のルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)は1分以上を失い、それぞれ12位と13位に陥落した。
過去2年間ステージ優勝から遠ざかっていたサガンだが、今大会では2勝目を挙げることに成功。表彰式ではオレグ・ティンコフ氏がポディウムの脇でひとりガッツポーズを繰り返し、サガンが控えめなぶん自身の勝利かのようにはしゃいでいる。クロイツィゲルも総合を10位に上げた。
サガンは言う。「フルーミーたちにはこう言ったんだ『行こう!行こう! 僕らは強すぎるから彼らは絶対捕まえられない』とね。そしてただ全開で行ったんだ。最後まで逃げ切ったことは素晴らしい。今日はとにかく風が強く、落車も多くてクレイジーだった。決して予定していたアタックではなかったし、状況が展開を作り出したんだ。マイヨジョーヌとマイヨヴェールが逃げるなんてアンビリーバブル。これが今までで最高のステージ優勝とは言えないけど、間違いなくスペシャルな勝利だ」。
「プレッシャーに背中を押されて無理やり動いたのではなく、楽しみながらアタックした」と話すフルーム。第8ステージでは高速のダウンヒルテクニックを披露した。そしてこのステージでは平坦路で逃げ、そしてスプリントするという新たな一面を見せた。
今までは登りで差をつけるクライマーとして定石通りのレース展開と、計算高いロボットのような走りが面白みに欠ける面があった。しかし今年のフルームは野生の勘を持った動物的とも言える攻撃性を持ち、衝動的な動きをする、そして自身の勝ちパターンの定石さえ覆す走りで魅せてくれる。フルームが隠しているものはまだありそうだ。
プロトンがモンペリエに向かっている午後2時頃、ASOは明日のモン・ヴァントゥーステージの6km短縮を決めていた。モン・ヴァントゥー頂上の風速は100km/hを越える状態だという。ゴール地点のテクニカルゾーンの設営は不可能で、明日はさらに天気が荒れるという。予報では頂上の気温は4℃まで下がるという。
クリスティアン・プリュドム氏は言う。「今日モンヴァントゥーの頂上では風速104km/hという猛烈な風を観測した。明日予定通りレースを開催すれば、森を抜けたところでライダーたちは吹き飛ばされるだろう。しかも天気予報によると明日は今日よりも風が強く、頂上は気温4℃という厳しい条件になる。すでにアンドラ・アルカリスで選手たちは雹に打たれ、エンヴァリラ峠では濃い霧の中を下った。これは責任感ある主催者の判断だ」。
新たなフィニッシュ地点のシャレ・レイナールはパリ~ニースではお馴染みのフィニッシュ地点。しかしモン・ヴァントゥーで勾配が厳しいのは麓から中腹にかけて。森林限界を越えるまでは樹木に護られるとはいえ、風の影響はモン・ヴァントゥーに到達するまでにも今日同様にある。
前夜、南仏と思えないほどに気温は下がり、風は止むことがなかった。地元の人に聞くと、モンペリエ周辺はこの3日間暑い日が続き、この時期にしては信じられないぐらいの気温の低さだと言う。この気温差が地方風トラモンターヌを激しくするのだろう。
photo&text:Makoto.AYANO in Montpellier France
いわゆる山岳と山岳の間の平坦の「つなぎステージ」と呼ばれる日。総合争いに関係なく、ゴールスプリントで決するスプリンターの日という認識に、少しのどかな雰囲気でスタートの準備が進む各チーム。しかし全員のバイクがローラー台上にセットされていたのはチームスカイ。フルームバイクのバーテープはイエローに巻き変えられているが、レースに対して油断する気配はまったく無いということ。
総合ディレクターのプリュドム氏はモンペリエを「スプリントの首都」と名付けたが、それはもし平穏に事が運べばのこと。平坦路には違いないが、この日最大の敵は風。ミストラルあるいはトラモンターヌと呼ばれる地中海から吹き付ける風が、過去のツールで集団を分断してきた。
2013年はアルベルト・コンタドールとティンコフが横風区間でアタックを掛けて分断を試み、成功させた。チームスカイもその罠に嵌り、コンタドールに1分09秒差を譲り渡した。その失敗から学んだ教訓をもとに、チームスカイはレース前のウォーミングアップを開始した。まるで昨10ステージの登りスタートのように。レース前半も風が吹く可能性がある区間だ。
チームスカイはフォードのスポーツカー「マスタング」も用意。コースを先行して得た情報を逐一、監督や選手たちに伝える。ティンコフはじめ数チームがこの方式は採用しているが、スカイは徹底して行っている印象がある。
ハードな展開に持込み、今日のステージこそ勝ちたいアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)。今のところカヴェンディッシュとキッテルに敵わずに来ているが、一矢報いたいところ。静かに意気込むクリストフの脇ではヴィアチェスラフ・エキモフ監督がプロ仕様の一眼レフカメラで撮影しておどける。カチューシャはあえてリラックスしたムードを作る流儀だ。
新城幸也(ランプレ・メリダ)は「今日は風が強すぎるので逃げません」とひと言。フランス南部のこの地方の風のことは知っている。ルイス・マインティーズの護衛にあたる重要な日だ。ユキヤはスタート前にはパワーバーブースに用意された補給食をポケットにたくさん詰め込む。風が吹けばサコッシュが取りにくい日になる。
結局は世界遺産の「シテ」を少しも臨まず終いでカルカソンヌを発ったプロトンは、さっそく風の強い平野へと出る。やはり十分に身体を暖めていたチームスカイが前方を固めて。
乾燥した大地に伸びる道は狭く、曲がりくねっている。この地域一帯は乾燥と熱風によってときどき火災が発生するが、この日もそれが起きた。前半、プロトンが向かう進行方向に山火事の煙が立ち上り、立ち込める煙の匂い。
火事はコースにごく近いところだったため心配したが、レースの通過には幸いにも影響なし。しかし迂回する関係車両の行きたい道がまさにその山火事ポイントとなり、補給チームやプレス陣は大混乱した。
フランスチャンピオンのアルテュール・ヴィショ(FDJ)とリー・ハワード(IAMサイクリング)の二人が逃げると集団の動きは一旦は落ち着いたものの、細かく進行方向を変える曲がりくねったコースに集団は難儀することに。風にも翻弄され、落車が頻発するようになる。集団の後方では怪我を負った選手たちが順番にメディカルカーによる手当を受けながら走る。
落車の頻発するコースの難易度に、レース後に主催者にクレームをつけたのはモビスターだ。「オーガナイザーはスペクタクルなショー的要素をレースに取り入れたいのかも知れないけど、選手たちは命をかけて毎日レースを走っている。とくに今日のコースは危険がいっぱいだった。もう少し選手たちの安全を考えてコースを設定してほしい」。
曲がりくねった道に、吹き付ける追い風と横風。ティンコフやアスタナ、トレック・セガフレードがペースを上げると、集団は分裂し、斜め隊列「エシュロン」を形成。分裂してはまとまり、また分裂するの繰り返し。
モンペリエが迫り、結局はまとまった大集団でのスプリントを迎えると思った矢先、再び横風が吹き出す。フィニッシュまで12kmを残し、2013年も分断に寄与したチームメイトのマチェイ・ボドナールを従えてサガンがアタック。その動きにクリス・フルームが一瞬の判断で飛びついた。それを見たゲラント・トーマスも即座に反応。4人の逃げが始まった。マイヨジョーヌとマイヨヴェールが共に逃げるという前代未聞のショーの始まりだった。
サガンは言う。「クレイジーな風だった。ラスト15か12kmかわからないけど、本当にクレイジーな強風だった。そのアタックは計画していたものなんかじゃない。危なかったから、集団が分断するから集団の前に居なければならなかった。そしてマイヨジョーヌとマイヨヴェールの二人と、ボドナールとトーマスの2人が加わった逃げができた。計画的にできることじゃない。ただそうなったんだ」。
集団を分断させることも、前で展開したことも今日のティンコフにとっては目的はひとつだった。2013年のようにコンタドールの総合順位のためのタイム獲得ではなく、昨日2位に終わったサガンのステージ優勝それのみ。ピュアスプリンターを含む集団でモンペリエに雪崩れ込むより小集団のフィニッシュを狙った。
そしてサガンのアタックに一瞬の判断で飛びついたフルームと、それを追いかけたトーマス。ステージ優勝とマイヨヴェールのためのポイントが欲しいサガンと、キンタナなどライバルたちに総合タイム差をつけたいフルーム。2位でもフルームにはボーナスタイムが待っている。その判断を一瞬のうちに下した2人とそれぞれのアシストが、小さな同じ船に飛び乗った。それぞれの目的が違うからこそ協調できた逃げ。
マイヨ・ジョーヌとマイヨ・ヴェールが平坦路で逃げるという光景は、のどかな時代のツール・ド・フランスならあり得たかもしれないが、現代のツールではまずあり得ない。(あるとすればシャンゼリゼステージでのカメラタイムだけだ)
そして予想通り、フルームはサガンに対してゴールスプリントを仕掛けた。通常、目的を果たした総合狙いの選手は協力した選手の後方につけてゴールするものだ。しかしどこまでもアグレッシブなフルームは貪欲にスプリントした。狙ったのは勝利ではなくフィニッシュラインにいち早く飛び込み、わずかでもタイムを稼ぐことだったかもしれないが。
ボドナールに勝利させることも考えた控えめなガッツポーズのサガンに対し、フルームは真っ先に後ろとの差を確認した。クリストフらがフィニッシュラインに雪崩れ込むのはその6秒後。フルームは+ボーナスタイム6秒を合わせ12秒という勝利をまんまと手に入れた。
総合狙いの選手たちは揃ってフルームから12秒遅れ。総合5位につけていたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)と総合9位のルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)は1分以上を失い、それぞれ12位と13位に陥落した。
過去2年間ステージ優勝から遠ざかっていたサガンだが、今大会では2勝目を挙げることに成功。表彰式ではオレグ・ティンコフ氏がポディウムの脇でひとりガッツポーズを繰り返し、サガンが控えめなぶん自身の勝利かのようにはしゃいでいる。クロイツィゲルも総合を10位に上げた。
サガンは言う。「フルーミーたちにはこう言ったんだ『行こう!行こう! 僕らは強すぎるから彼らは絶対捕まえられない』とね。そしてただ全開で行ったんだ。最後まで逃げ切ったことは素晴らしい。今日はとにかく風が強く、落車も多くてクレイジーだった。決して予定していたアタックではなかったし、状況が展開を作り出したんだ。マイヨジョーヌとマイヨヴェールが逃げるなんてアンビリーバブル。これが今までで最高のステージ優勝とは言えないけど、間違いなくスペシャルな勝利だ」。
「プレッシャーに背中を押されて無理やり動いたのではなく、楽しみながらアタックした」と話すフルーム。第8ステージでは高速のダウンヒルテクニックを披露した。そしてこのステージでは平坦路で逃げ、そしてスプリントするという新たな一面を見せた。
今までは登りで差をつけるクライマーとして定石通りのレース展開と、計算高いロボットのような走りが面白みに欠ける面があった。しかし今年のフルームは野生の勘を持った動物的とも言える攻撃性を持ち、衝動的な動きをする、そして自身の勝ちパターンの定石さえ覆す走りで魅せてくれる。フルームが隠しているものはまだありそうだ。
プロトンがモンペリエに向かっている午後2時頃、ASOは明日のモン・ヴァントゥーステージの6km短縮を決めていた。モン・ヴァントゥー頂上の風速は100km/hを越える状態だという。ゴール地点のテクニカルゾーンの設営は不可能で、明日はさらに天気が荒れるという。予報では頂上の気温は4℃まで下がるという。
クリスティアン・プリュドム氏は言う。「今日モンヴァントゥーの頂上では風速104km/hという猛烈な風を観測した。明日予定通りレースを開催すれば、森を抜けたところでライダーたちは吹き飛ばされるだろう。しかも天気予報によると明日は今日よりも風が強く、頂上は気温4℃という厳しい条件になる。すでにアンドラ・アルカリスで選手たちは雹に打たれ、エンヴァリラ峠では濃い霧の中を下った。これは責任感ある主催者の判断だ」。
新たなフィニッシュ地点のシャレ・レイナールはパリ~ニースではお馴染みのフィニッシュ地点。しかしモン・ヴァントゥーで勾配が厳しいのは麓から中腹にかけて。森林限界を越えるまでは樹木に護られるとはいえ、風の影響はモン・ヴァントゥーに到達するまでにも今日同様にある。
前夜、南仏と思えないほどに気温は下がり、風は止むことがなかった。地元の人に聞くと、モンペリエ周辺はこの3日間暑い日が続き、この時期にしては信じられないぐらいの気温の低さだと言う。この気温差が地方風トラモンターヌを激しくするのだろう。
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