テーマ
Road to Reborn ~ 多様性のその先に ~
ABC 2013 Autumn 開催の趣意
現在,通信キャリアやMVNOによって数多くのAndroid OS/iOSを搭載したスマートフォンやタブレットが市場に溢れ,あらゆる世代が,日常的に利用する時代となった.スマートフォンは,これまでの携帯電話(フィーチャーフォン)以上に個人にとって身近な存在となり,我々の生活のパートナーと言っても過言ではない.その中でもAndroid OSは発表当初からオープン性によって,種々の色,形,機能をもった多種端末が次々と開発され,各端末に搭載されたOSのバージョンは多種に及んでいる.こうしたAndroidの多様性については,その爆発的な普及に寄与するとともに,開発者の間で一部厄介な存在として議論されてきた.こうした開発面での多様性についてはしばしクローズアップされることがあるが,今一度,もう少し視野を広げてAndroidがもたらした多様性を捉えるとまた違った風景が見えてくる.以下,3つの視点で捉えた多様性について吟味する.
1. デバイスの多様性
スマートフォンやタブレットのOSとしての地位を不動のものにしたAndroidであったが,現在,Google Glassの登場で注目されつつあるウェアラブルコンピュータの分野や組み込み機器での利用も盛んに検討されてきている.さらに,Android OSを搭載したデバイスとインタラクション可能なガジェットも多数登場し,他電子機器とスマートフォンの連携が実現可能な社会となってきている.こうしたスマートフォン以外にシーンで利用されるAndroidのデバイスとしての多様性も注目すべき分野である.
2. 開発環境の多様性
これまでのAndroidアプリ開発は,Dalvik仮想マシン上で動作するJava言語に開発されたアプリが主流であり,また実行速度等の必要に応じてAndroid NDKを使った開発も行われてきた.昨今は,HTML5/CSS/Javascriptの技術進歩によってAndroid OS/iOSのアプリをハイブリッドで開発可能なプラットフォームも登場し,開発者の中で注目を集めている.また,FirefoxOS, TIZENといった新たなHTML5ベースのモバイルOSの登場及び,AndroidにおけるChromeの立ち位置の変化に伴って,Packaged Web Appを代表とするブラウザ駆動型のアプリも注目を集めている.これらの新しい開発環境について開発者がどのように対応して行くのかについても興味深い.
3. ビジネスモデルの多様性
広告による収益やアプリ内課金などこれまで通信キャリアが独占していた市場が解放されたことによって,アプリ開発元は,多様なマネタイズ方法を組み合わせることが可能となった.現在では,通信キャリアだけでなく,数千万段ロードを誇るアプリベンダーもモバイル業界における新たなプラットフォーマーとして注目を集めている.Androidがもたらしたビジネスモデルの多様性が今後,モバイル業界にどのような影響を与えるのか見守っていく必要がある.
特に2013年は,上記3つの多様性に関する変化が著しく,この夏から秋にかけて市場でもさまざまな発表がなされている.さまざまな多様性をもたらすAndroidが故に,その捉え方は様々ではあるが,各社,各開発者,また各利用者がどのように考え,今何に取り組んでいるか,そして今目の前で起っている変化にどのように対処しているか,それは今後どうなって欲しいと望んでいるのかといった内容は,むしろ異業種間でこそ共有すべき問題であり,異なるアプローチで取り組んでいるからこそ,それぞれの得意分野でなら解決できる,というケースは多く存在しているはずです.今回のABC 2013 Autumnは,Androidに関わる我々コミュニティも多様性を取り入れ,多くの人々が世代や会社や業種の垣根を超え,今起っている多様性をそれぞれの個性で吸収し,これからAndroidがもたらすであろうワクワクするような未来のモバイルライフを想像できるイベントにしていきたいと強く願います.最後に,本ABCによって,皆様に,多様性を乗り越えた先に産まれるAndroid OSと我々日本Androidの会の新たな姿を「Road to Reborn」のテーマのもと体感してください.
平成25年9月1日
ABC2013 Autumn 実行委員長
石塚 宏紀