仮面ライダーWはフィリップの一人称で進む完全オリジナルストーリー。
とある理由で戦えなくなった翔太郎に代わってフィリップが探偵役を努める内容で、
時系列的には仮面ライダーWがエクストリームになれるようになってから少し後。
本編のメイン脚本である三条陸が手掛けただけあってキャラの台詞回しはまさに仮面ライダーWだ。
最初の戦闘での翔太郎と敵ドーパントによる
「ふざけるな、俺にはまだやることがある!」
「この街への懺悔以外、これからお前がやることなんて一つもねえ」なんてやり取りとか実にらしくていい。
照井竜も相変わらず頼りになりつつも要所で笑わせてくれる。「フィ…」は笑った。
あと、声が出ない翔太郎が呻いてるシーンで「ヴェッ?オ、アギゴォ!」とか書いてあって
これ仮面ライダーブレイドの小説だっけ?ってちょっと思った。
「仮面ライダーサイクロン登場!」が前面に押し出されているので
本編とノリの違う番外編かと思いきや、
依頼人から依頼を受けて調査開始して、正体が分からないドーパントが出て来て、
地球の本棚で検索するけどキーワードがなかなか揃わなくて……と、いつもの展開。
しかしフィリップが主役で内面も掘り下げられているから展開が非常に新鮮だし、
ファングジョーカーの活躍シーンも多い。
園崎家の面子を除いたレギュラーメンバーはほぼ登場。
作者が小説家じゃないわけだから文章はそんなに期待してなかったけど、
「○○はムッとなって~」「○○ははっとなって~」
みたいな表現が妙に多いのが少し気になったくらいで十分読めるレベルかな。
仮面ライダーサイクロンの戦闘描写は
「ああ、仮面ライダー好きなんだなあ!」って読んでて思えるし、
映像作品じゃないからこその大盤振る舞いもアリで非常に豪華
仮面ライダーW本編にこういう話があってもおかしくないくらいまとまっている一冊。
本編で名前だけ出たメモリがドーパントとして登場したり、
毎回、所長の出すスリッパに書かれている文字が変わる理由や、
ファングジョーカー以外のファング○○にフォームチェンジしない理由、
TV終盤のアレに繋がる描写など、本編の補完要素も多い。
「仮面ライダーWの小説」としては文句無いデキだぜ。
TVシリーズのファンなら読んで損無し!
仮面ライダーオーズはバッタヤミー回や
色々と強烈だった北村登場回などの脚本を担当した毛利亘宏が手掛けた1冊。
600年前の王とアンクのエピソードを描いた「アンクの章」
TV本編中の出来事である「バースドライバーの章」
TV本編終了後の後日談である「映司の章」の3部構成。それぞれが約100ページずつだ。
アンクの章は先代オーズのヤバさがこれでもかと味わえる内容。
先代オーズは「他人に危害を加えることを平気でする会長」みたいな性格で、
もうとにかく危険人物っぷりが凄い。
戦闘シーンでもヤバいくらい強くてアンク含めたグリードの面々の苦労っぷりが忍ばれる。
合間に語られるアンクと盲目の少女のエピソードでは
TVのオーズでは描かれなかったタイプの欲望を扱っていて、
これが読んでて「うおおぉ……」ってなるヘビーっぷり。色んな意味でTVじゃムリだ!
じっくりと掘り下げられたアンクの内面は本編を踏まえて読むと実に面白い。
バースドライバーの章はなんと「バースドライバーの一人称」で語られる内容。
伊達さんがいかに頼りになる男だったかを語ったり、
後藤さんが全然頼りにならなくて困るって愚痴ったり、カンドロイド達とお喋りしたりするノリ。
アンクの章と映司の章が結構重苦しい展開なので
箸休め的にこういうノリにしたんだろうなーって感じなんだけど、正直あんまり面白くなかったぜ!
笑えるシーンもあったしオチは嫌いじゃないんだけどね。
「リストバンドにセルメダルを仕込む後藤さん」をネタにするシーンは
やめてあげてくださいよ!って思った。
映司の章は本編終了後、とある紛争地帯にやってきた映司のエピソード。
話のほとんどはオリジナルキャラの視点から語られている。
オーズ最終回の後なのに映司が何事も無かったかのように変身したのには驚いたが、
そこはまあムービー大戦メガマックスの後ってことで。匂わせるようなセリフも少しだけある。
アンクの章の映司の章ではどちらも「人間に向けられるオーズの力」の描写がされていて、
それがそのまま王と映司の対比になっている構成は読み応えがあったし、
ページ数は少ないがコンボチェンジで戦車やらヘリやらと戦うオーズには単純にめちゃワクワクした!
映司のセリフ回しや行動にも違和感は無く、映司ならやりそうだな、言いそうだなって言動。
ラストも実に仮面ライダーオーズらしい。「映司」と「アンク」が好きならば是非。
アンク以外のグリード4人はしっかり出てくるものの、
小説オリジナルキャラの描写が中心で
TV版のメンバーはあまり出てこない構成はかなり好き嫌い分かれそうなところだけど、
仮面ライダーWの小説とは別の方向性で仮面ライダーオーズの世界観を広げた1冊だと思う。
小説ならではの内容で非常に楽しめたぜ。
さて、この3冊で一番の問題作である仮面ライダーカブト。
書いているのは本編のメインライターだった米村 正二
天道の少年時代を書いた「閃光」
本編序盤を軽くノベライズ化した「選ばれし者」
本編終盤をそのままノベライズ化した「決戦」
DVDに収録されていた小説を再収録した「祭りのあと」
を収録した一冊。構成的には100ページ以上の分量がある「決戦」がメインか。
「閃光」は本編の前日譚で補足的な内容なんで少しは楽しめたんだけど、
それ以外はホントひどい内容だったぜ……。
擬音を多用したスカスカな文章で本編終盤をなぞるだけの内容。
一応、「赤い靴」に関する補足やキックホッパーとパンチホッパーの出自の説明もあるし、
本編終盤のゼクトルーパーが強かったのは特殊な弾を使っていたからだとか、
どうでもいいところにも補足があったりはしたけど見るべきところはそこくらいだな……。
カブトvsダークカブトの
「……と、ダークカブトが考えているのは分かっているからハイパーカブトでドーン!」
をこの文章で読まされると余計につらい。
セリフ回しも変に説明的過ぎるものが多くて、特に三島さんが
「ヒヒイロノカネだったかな?
ライダーどもの全身を覆うマスクドアーマーに使われた未知なる金属は」
「私の鉤爪にはそのヒヒイロノカネをも越えるヒヒイロノオオガネが使われているのだよ…」と、異様な説明セリフで勝ち誇るシーンは頭痛が痛くなった。
ヒヒイロノカネは公式サイトにだけ掲載されていて
本編では名前が出なかった設定の一つだけどこんな形で使われても……。
後日談は本編終了後、行方不明になったひよりを探すためにカガミンがバンコクに行って、
バックパックを盗まれたり腹を壊したり賭けムエタイを見たりして、
唐突にネイティブワームとの最終決戦がはじまるという意味不明な内容。
ただの「加賀美バンコク珍道中旅日記」じゃねーかこれ!
なんでゼクトのメンバーに連絡が付かなかったのかとか、
50ページちょっとしかないのに投げっぱなしになってる伏線もあったりする。
本編完結前にDVDの冊子で連載してたという事情はあるんだろうけど……。
カガミンって最終回で何故か警察官になってたから明らかに矛盾しとるしてるしなあ。
3冊の中ではダントツでつまらなかった
そもそも
「小説家ではないカブトメインライターの米村正二が、
TV版の段階でひどかった終盤の展開をそのままなぞって小説化」という時点で面白くなる可能性がまったく無いんだよ!完全に詰んでるだろこれ!
最後の希望なんて無かった!
仮面ライダーカブトのダメな部分を凝縮したような内容で、
ページをめくる手も自然とクロックアップしていく。ある意味、期待を裏切らない一冊ではあった。

1月に出た555小説とアギト小説も買ってあるのでそのうち読む。