正確には
「この10年でリアルタイムでプリキュアを見ている子供が半減している」です。
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今年も、NHK放送文化研究所様の「幼児のテレビ視聴と録画番組・DVDの利用状況」が発表されました。
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20171001_8.pdf
これは幼児のTVの視聴時間や録画状況などが調査された貴重な資料です。このデータを追っていくと、幼児のTV視聴の状態が見て取れます。
自分もプリキュアの動向を調査するために、このデータを毎年追っているので、
今年もまとめておきたいと思います。
調査概要
調査対象は2017年6月5日(月)~11(日)に東京駅30Km圏の2~6歳の未就学児を対象とし、住民台帳から層化無作為2段抽出した幼児1000人中、有効回答のあった517人での集計になります。サンプル構成は下記になります。
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20171001_8.pdf
視聴率のデータは2歳、3歳、4歳、(5,6歳)毎に集計されています。
ビデオリサーチ社の発表している世帯視聴率、KIDS視聴率とは違い、幼児の「年齢ごと」の視聴率データが記載されているのが大変貴重です。
あくまで東京中心圏の調査であり、全国的な調査ではないためそれを考慮に入れる必要はあると思います。
(プリキュアは都会よりも地方に強い、というデータがビデオリサーチの視聴率などからも伺えます。)
あと、6月のたった1日だけの視聴率という事も踏まえたうえで、あくまで1つの参考としてご覧ください。
(ただし、このNHK調査の幼児の視聴率と、ビデオリサーチ社発表のKIDS視聴率は相関係数0.90と強い相関があったので、ある程度は信頼できるものと思われます。)
あと「視聴率」と「作品内容」は相関しません。
決して特定の作品を批判する意図が無い事もご了承下さい。
数値データ
子供がリアルタイムで10分以上視聴している番組を母親が代理で回答した数の集計です。(以後視聴率データは全て同じ定義)
プリキュアのみを抜粋して、まとめました。
2017年「キラキラ☆プリキュアアラモード」では
総合(2~6歳の男女)の視聴率は21.6%以下。
つまり、6月11日に2~6歳100人のうち、21人以下の幼児が見ていたことになります。
(これは男女合わせてですので、女児だけにするともっと増えると思います。)
年齢階層別の視聴率では、
3歳児は、18%以下
4歳児は、20%
5,6歳児は23%以下
でした。
だいたい、どの年齢階層も100人中20人前後が見ていることが判ります。
これは男女合わせての結果です。
単純に女児だけにするために×2すると、
2017年現在では
「女児100人中40人くらいが、プリキュアをリアルタイム視聴している」と言えるのでしょう。
(男の子も観ている可能性も高いので一概には言えませんが・)
グラフ
表ではわかりにくいので、グラフにしました。
(以後、引用表記の無いグラフ、表は上記レポートのデータから著者が作成)
総合(2~6歳)
まずは総合(2~6歳男女)です。
2007年「Yes!プリキュア5」の頃は34.8%(100人中35人が見ていた)のが、
2017年「キラキラ☆プリキュアアラモード」では21.6%以下(100人中21人以下)になっています。
2007年から徐々にプリキュアの視聴率が下がっていることが伺えます。
ただし、この「総合」データはプリキュアをおそらく「自主的に見ていないであろう2歳児」も対象に入っているため、年齢別にまとめました。
「年齢階層別」で見てみますと、
3歳
3歳児は、2007年は100人中33人見ていたのが、2017年「キラキラ☆プリキュアアラモード」では18人を切る感じになっています。
4歳
4歳児も同様に、2007年の44%から2016年は20%と半分以下となっています。
4歳はプリキュアのメインターゲットだと思われます。この層も10年でリアルタイム視聴が半減しています。
5,6歳
5.6歳男女でも2007年は41%だったものが23%以下まで落ちています。
どの年齢階層でも、
プリキュアの視聴率は年々下がっています。
プリキュアを「リアルタイムで」見ている子供は、
2007年からほぼ半減しています。
プリキュアは既に「絶対にリアルタイム」で観るモチベーションのアニメでは無くなっているのかもしれませんね。
(そもそも2007年「Yes!プリキュア5」が強すぎた事もあると思います。
4歳「男女」で44%ってことは4歳「女の子」に換算すると88%ですからね。当時のほとんどの女児がリアルタイムで観ていたことになります。)
他のアニメはどうなんだろう?
他のアニメはどうなのでしょうか?
この幼児の「視聴率の減少傾向」はプリキュアのみの傾向だけではないような感じがします。他のアニメの視聴率も調査し、比較しました。
同レポートで調査されている「幼児に見られている人気アニメ」の視聴率の傾向を見てみます。
まずは「サザエさん」「ドラえもん」との比較からみてみます。
サザエさん、ドラえもんとの比較
下記のグラフは4歳児における、「プリキュア」と「サザエさん」「ドラえもん」の視聴率の推移比較です。(点線は指数近似線)
(サザエさん、ドラえもんとプリキュアの比較)
子供のTV視聴率の低下は、プリキュアだけではなくサザエさんやドラえもんでも起こっていることが伺えました。(ただし指数近似線を観る限り、減少率はプリキュアの方が高く、ドラえもんはゆるやかな減少になっています。)
ニチアサでの比較
次に「プリキュア」と同じ仮面ライダー、戦隊シリーズのニチアサ勢はどうなのでしょうか?
こちらのデータはプリキュアは「4歳女の子」、戦隊、ライダーは「4歳男の子」のデータを抜粋してあります。
(プリキュアと仮面ライダー、戦隊シリーズでの比較)
こちらも、この10年で全てが減少傾向です。
ただ「戦隊シリーズ」は比較的安定傾向。「仮面ライダー」は上下動が激しいですよね。年による人気の差が表れやすいのでしょうか。
指数近似線を見るとニチアサでもやっぱり「プリキュア」の減少率が10年で一番高いのが気になる所です。
上記以外で「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」を加えた表が下記になります。
全体的に「幼児のTVアニメ視聴率」は落ちてきている傾向です。
2007年からの10年間で、だいたい60~70%に落ちています。
減少幅が一番少ないのが「ドラえもん」(71.4%)
一番減少してるのが「プリキュア」(52.3%)でした。
この「幼児がアニメをリアルタイム視聴しなくなった」のは何故なのでしょうか?
録画視聴の可能性
NHK放送文化研究所のレポートには「幼児の録画番組の利用状況」についても調査しています。
同レポートより抜粋します。
グラフ引用:http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20171001_8.pdf
これを見る限り、
幼児がテレビを見る時間は年々少なくなってきている
(2007年 2時間→2017年 1時間41分)
のに対し、
録画DVD再生の時間は年々増えてきています
(2007年 36分→2016年 55分)
幼児も「TVをリアルタイムで見る」よりも「録画視聴」へとシフトしていっている事が伺えます。
そういった意味ではプリキュアも録画視聴されている可能性は高いものと思われます。
リアルタイムでも録画でも、きちんと視聴さえされていれば、プリキュアの核となるグッズ、おもちゃなどの売上は維持できるものと思われます。
キラキラ☆プリキュアアラモードは、秋に公開された映画が公開週の動員ランキングで1位を獲得するなど、絶好調です。
つまりプリキュアは子供達に広く認識されてはいるのですよね。
「リアルタイム」で見られなくても「録画視聴」されている事がデータ上でも伺えます。
母親のテレビ離れ
同NHKのレポートには「母親の視聴時間の推移」もレポートされています。
グラフ引用:http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20171001_8.pdf
これを観てみると、
長時間テレビを見る母親は減少傾向にあり(35%→21%)、
逆に
「短時間(2時間未満)テレビを見る母親」がここ10年で増加(43%→61%)している事が伺えます。
同レポートでも「母親のテレビ視聴時間の減少」が「幼児のテレビ視聴時間減少」につながってる、との指摘もあり、
TVアニメや特撮が「幼児にリアルタイム視聴」されなくなってきたのは、この「母親のTV離れ」も原因の1つではないかと思われます。
(この「母親との関係」は自分は全くノーマークだったのですが、昨年id:topisyu様に指摘され気づきました。)
topisyu "プリキュアは52%まで落ちています。この減少傾向は一体何が原因なのでしょうか?"←親のテレビ視聴の時間が長いほど子どももテレビを見るという数字があるから、親のプリキュア離れじゃないかな?2016/12/05
プリキュアの「リアルタイム視聴減少」は「母親のリアルタイム視聴減少」も要因の1つになっている事も伺えます。
インターネット配信について
同NHKのレポートでは、幼児がどのメディアに接触しているか、のデータもあります。
下記にまとめました。
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20161101_6.pdfを著者がグラフ化。
データは2~6歳幼児が、計測期間中の平日1日にそのメディアに接触した幼児の人数割合です。
・録画した番組をみている幼児は横ばい、
・市販、レンタルDVDを視聴する幼児は若干減少、
・ネット動画をみている幼児はここ数年で上昇傾向です。
2017年は、特にこの「ネット動画」の視聴計が増えて、すでに幼児の半数近くが「ネット動画」に接触している事が伺えます。
その傾向からなのか、
プリキュアも今年からネット動画に力を入れる様になりました。
2017年「キラキラ☆プリキュアアラモード」では、オープニング、エンディングや予告動画だけに留まらず、変身シーンやキャラクターソング、ダンスレッスン動画なども東映アニメーションが積極的にYouTubeに配信しています。
インターネット動画や録画視聴が当たり前になりつつある子供にとっては「リアルタイムでTV番組を見る」という習慣自体が無くなっていくため、当然リアルタイムの「視聴率」は低下しても何ら不思議では無いのです。
まとめ
1:プリキュアをリアルタイムで見ている幼児は、この10年で約半減している。
2:他のアニメを見てる幼児も減っているが、プリキュアは特に減っている。
3:リアルタイム視聴は減っているが録画視聴されている可能性も高い。
4:母親のテレビ離れが幼児のテレビ離れにつながっている。
5:幼児がネット動画を見る割合が大きく増えてきている。
プリキュアはすでに「リアルタイムで視聴」されるアニメでは無くなってきている傾向が伺えます。
だだ、今年のプリキュアの「秋映画の絶好調っぷり*1」や「玩具販売の好調っぷり」をみると、プリキュアが「リアルタイムで視聴」される、という事はそんなに重要な事では無くなってきているのかな、とも思います。
(おわり)
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