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カテゴリ:単発ドラマ
いよっ、オノマチ!
遂に観た。 これは素晴らしい。 「どうしよう?」と思うくらい。 「どうしてくれんのよ!?」と叫びたくなるくらい。 これは、一言で表すならラブストーリー。 死を意識したことで故郷の島に籠り 身体的には“健康的”な生活を送りながらも 精神的には死に囚われ その歪みが作品の低下という形で表れている老作家と 暗い色のスーツに身を包んだ 固い意志を秘めている様に見える女性編集者の。 冒頭、赤い金魚と黒い金魚が会話を交わしている様な仕掛けで 地元民の軽い噂話を通して作家の状況が示される。 それから作家のモノローグへ移行。 赤い花束を抱いた作家が病院の階段を上って行くシーンは 上方が白い光で透けていて、まるで天国への階段の様だった。 ここで“赤”と“死”のイメージが提示される。 作家が女性編集者に興味を持ったのは 彼女が砂浜に海藻で描いた龍の絵がきっかけだった。 その後、彼女が作り演じる影絵の紙芝居を通して 作家は彼女に好意を持ち始めた自分に気付き、戸惑う。 それから、彼女が魚拓の技術を持っていることを知り 自分が可愛がっていた赤い金魚の魚拓を作らせる。 全てに(いわゆる)芸術が絡んでいるのが面白いし説得力があるな、と思う。 直接的な言葉や説明がなくても、互いの心に流れ合うものが見える。 …淡々とした語り口。 作家と女性編集者の辛辣だったりユーモアが漂っていたりする会話。 作家が描く官能小説の登場人物@金魚娘は 赤いミニスカートから伸びる足の美しさを誇っている。 暗い色のスカートから伸びるオノマチの足は綺麗だけど逞しい。 一見クールで 知的で落ち着きがあって 適度に距離を置いている印象のある 上品な敬語を纏い オノマチの表情が微妙に変化する。 金魚の魚拓を取るところは息が詰まる様だった。 そして、病院の廊下で作家を見上げるオノマチの表情… 凄いなあ… 本当に凄い女優だと思う。 勿論、原田芳雄も素晴らしい。 聞くところによると、撮影時、彼は既に癌で余命宣告されていたそうだ。 その状態で、この役柄を演じるとは…役者は凄いなあと思う。 フレディ・マーキュリーが『The Show Must Go On』を歌う様なもの? ↑ちょっと例えが変? ほとんど、この2人だけで構成されている。 そういえば、同じ渡辺あや脚本の『その街のこども』も ほとんど、2人だけで進行するロードムービーだった。 こちらも、場所はあまり動かないけど 精神のロードムービーと言えるかもね。 まさに2人が火花を散らし その火花でお互いを照らし合い この上なく輝いた作品に仕上げてくれたと思う。 「お前が持って生まれ、そしてお前なりに守り通すであろうその命の長さに 俺が何の文句をつけられよう」 この台詞は凄く切ない。 これを聞いた時点で涙が溢れた。 「心配するな、俺とて後に続くのにそんなに時間がかからんさ」 いずれ訪れる“死”を遂に受け入れることが出来たことを 示しているんだよね? 「だが、それでももし叶うなら、今生何処かでまた逢おう」 そしてその上で、“生”を見つめている。 “死”そのものというより、“死”への恐れという呪縛から 抜け出せた時に“生”への希望や意欲を取り戻せる。 「タバコ吸いてぇ~」 最後にこういう叫びで終わらせる、このユーモア感覚が優しくて良いね。 彼女が指摘した作品の低迷が吹っ切れたことの証だよね。 最初は“老い”を強調している様子だったけど それは隠れ蓑に過ぎない。 彼の孤独を表面的に説明するための。 “死”も“生”も年齢や立場には関係ない。 鮒や鯵と金魚を分けるのは、やはり“赤”なんだと思う。 で、多分、“赤”というのは表面の色ではなくて 互いの間に生じる火花なんだと思う。 2009年/日本 原作:室生犀星『火の魚』 脚本:渡辺あや 演出:黒崎博 出演:原田芳雄(村田省三)、尾野真千子(折見とち子) ☆トラックバックは何がなんだか…ひじゅに館へお願いします☆ http://yakkunchi.blog90.fc2.com/tb.php/873-86915dbd ☆応援クリック、よろしくお願い致します☆ ![]() ![]() ![]() にほんブログ村 人気ブログランキングへ blogramランキング参加中! ☆映画&ドラマ感想は「REVIEWの部屋」に纏めてあります☆ ![]() やっくんち ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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