2013年06月27日

任天堂株主総会レポート2013


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前々からいきたいと思っていた任天堂の株主総会に参加してきた。
かつては単元株(100株)を買うのに数百万の費用が必要で、とても手が出せない額だった任天堂の株式も、最近の業績悪化を受けてリーズナブルになり、購入することができたのは嬉しくもあり、悲しくもある。

地下鉄で最寄り駅に行くと、駅出口付近で任天堂の若手社員と思われる方々が株主総会会場への道案内をしていた。途中の交差点にも社員の道案内あり。駅から若干離れているので、この配慮はありがたい。

というわけでやってきた任天堂。

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残念ながら内部は撮影禁止なので写真はこれだけ。
入り口で記念品のポケモンお菓子とトランプ、お茶(ぬるい)が手渡される。
お茶がぬるいのは急に体を冷やしてお腹を壊さないようにする配慮であり、個人株主どもはヌルい茶で十分だというアグレッシブな挑戦状ではないと解釈した。ほら、最近だと常温のミネラルウォーターとか流行ってるし。

会場は本社7階の会議室。
少し早めに到着したが、すでに結構な人数が入っていて、年齢層は30歳前後から定年過ぎの方々まで様々。平日にやっている割には若い方が多い印象。

何より驚いたのは、相当な人数が3DSを開いてすれちがい通信をチェックしていること。
さすが任天堂の株主だ。
それも、若い方々だけではなく、年配の方も熱心に3DSを見入っている。

総会の開始まで時間があったので、自分もすれちがい広場をチェック。
すれちがったMiiの都道府県が表示されるのだが、全国各地から来社していて、京都周辺のほうが逆に少ない印象。
本当かどうかわからないが95歳と自己紹介に書いてある老人のMiiもいた。

すれちがい通信をチェックしつつ10時の総会開始を迎える。

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まずは岩田社長の挨拶から始まり、監査法人の報告、事業経過報告などが行われた。
ほとんどが決算報告書に書かれているとおり。
ニンテンドー3DSの課題は国外市場であり、どうぶつの森やポケモンXYで挽回していくこと、Wii Uの立ち上げは満足のいかない結果になったが、これからのソフト発売ラッシュで盛り返していくこと、追加コンテンツダウンロードや、パッケージソフトのダウンロード版などで収益を上げ、NINTENDO WEB FRAMEWORKの導入など開発力を強化していくことが説明された。

内容については後日任天堂のサイト上に掲載されることになるので、そちらを参照してほしい。
※掲載されました。http://www.nintendo.co.jp/ir/stock/meeting/130627qa/index.html

直接現場で岩田社長の言葉を聞いた印象は「生ニンテンドーダイレクト」という感じ。
ニンテンドーダイレクトで何度も岩田社長の声を聞いているので、いつも自宅で見ているのとあまり変わらない印象だった。
メモをとるのに必死で顔を見ていなかったというのもあるが。

報告が終わり、質疑応答にはいった。
こちらに関しても、後日任天堂のサイト上に詳細が掲載されるので、気になったところだけまとめる。

しょっぱなに質問した男性は、緊張するからという理由であらかじめ用意していた原稿読み上げていたが、それが恐ろしく長く、早口でゲーマーにしかわからない固有名詞を羅列していたので、ほとんどの方が後半聞いていない感じだった。途中で誰か止めろよと思ったが最後まで止められることはなかった。
結局、最近話題になるのはゲームらしいゲームばかりで目新しいものがないという話だったようだ。

岩田社長は軽く質問に答えた上で、ニンテンドーダイレクトについて言及。E3で発表会を開かずに、ダイレクトにユーザに声を届けたことの重要性を語った。
途中で先日のピクミン3ダイレクトの話になり、宮本取締役とバトンタッチ。
宮本氏いわくWii Uの開発はHD画質になり、想定以上に開発に時間がかかるようになり"見誤った"とのこと。そのため、ハードの立ちあたりに十分なソフトをリリースできなかったが、開発体制を整えて、挽回し今後はコンスタントにソフトをリリースするそうだ。

その他、「3DSでバーチャルコンソールにバーチャルボーイを出ないのか?」という質問や「外部の会社が開発したすれちがい広場の追加コンテンツが面白いので、今後もこのような試みをしてほしい」という意見が出た。

バーチャルボーイについては「発表していない製品についてはコメントできません」と軽くスルー。はっきりと言及はしていないものの、少なくともすぐにリリースするということは無さそうだ。
すれちがい広場の追加コンテンツについては「少なくとも1本ダウンロードしたユーザが20万人」という具体的な数字が出た。
発売から1週間、大規模な宣伝のない有料コンテンツが20万人にダウンロードされたという数字はかなり大きいのではないだろうか。リリースされたのは4本なので、ダウンロード数換算だと数倍の数字になると思われる。金額で言うと億単位になる。

また、営業利益1000億の約束が達成できない場合の進退問題の報道について問われた。

これに関しては岩田社長も困惑している様子で「円高とプラットホームの乗り換えという要素が同時に出て二年連続で赤字が出た。幸い、為替の流れも変わってきた。多くの人は任天堂の業績は1000億以上あるべきと言われているので、それを達成する意思を伝える意味でコミットメントを発表した。目標達成を前提に業務を遂行しており、万が一達成しない場合のシナリオを考えていないし、語る段階ではない。達成できない場合の進退についての報道は私が言ったのではなく、周りが勝手に言っていること」と語っていた。
※メモを元に再構成しているので実際の発言とは異なります。正確な発言内容は後日任天堂のサイト上に掲載される文面をご確認ください。

また、取材を伴わない事実と異なる報道(おそらく日経新聞のこと)や、ネット上で拡散されるデマ(おそらくまとめサイト問題)についても「影響力が大きいものについてはプレスリリースや公式Twitterで否定していくが、反論することで余計に誤解が広まる場合もあり、対応に苦慮している。ニンテンドーダイレクト等で公式の発表の場を広め、正しい情報が広まるようにしたい」と説明。

今回の質疑応答では、ことあるごとにニンテンドーダイレクトについて言及していた。
ニンテンドーダイレクトはリアルタイムの視聴人数よりも、ニンテンドー3DSのeShop経由で後日動画を閲覧する人数のほうが多いという。多くのユーザに製品の魅力が直接伝わる体制が整っていることに自信を持っている印象を受けた。

せっかく京都まで来たのだし、運が良ければ直接岩田社長に質問をぶつけられるかなーと思って、一度だけ手を上げてみたのだが、その瞬間岩田社長と目があい、指名されてしまった。
緊張でなんと発言したかはっきり覚えていないものの、脳の片隅に「Wiiバイタリティセンサーの情報を耳にしなくなったが、開発はどうなっているのか、また同様に発表後に延期したり中止する製品が今後出てくると良くないのではないか。あと、社食がまずいという話を聞いたことがあるが、福利厚生上良くないのではないか、社食に人が集まらないと社員同士のコミュニケーションに支障がでるのではないか」という空気を読まない質問をぶつけてしまった記憶がある。

「バイタリティセンサー」という単語と「社食がまずい」というフレーズに岩田社長も苦笑いしていたように見えたが気のせいだろうか。

バイタリティセンサーについては製品化するにあたって精度を高めることができず、センサーの反応に個人差が大きく出てしまい、100人のユーザーのうち90人しか満足できない製品になったためペンディング状態にあるという。
発売すると約束したものをちゃんと発売することも重要ではあるが、それ以上に製品を発売する以上はお客様に満足してもらうことも重要だとごもっともなコメントを頂いた。
新製品の発表のタイミングは早すぎると話題性がなくなり、遅すぎても浸透しなかったりするため、製品ごとに発表のタイミングを決めているが、予定通りにはいかないそうだ。

また、社食についてはすでに岩田社長のところにも同様の意見が集まっていて、改善するつもりでいるそうだ。ただ、社食のスタッフに配慮しているのか「個人差がある」とフォローしていた。

これについて、あとで質問された方が「社食がまずいという話が出たが、自分の会社も社食がひどく、トンカツが凍ったまま出てきたことがある。それをネタに社員同士でコミュニケーションができているので社食がまずくても問題ないと思う」という変な方向でフォローしてきた。
岩田社長も「うちの社食ではトンカツは凍っていないと思います」と返し、会場が最高に盛り上がった。おそらく、今回の株主総会のハイライトだろう。
こういう雑談も質疑応答の議事録に乗るのだろうか?あとで確認しておこう。掲載されるのが楽しみだ。

どうも最近、質疑応答運がいいらしく、先日も映画の舞台挨拶で質問の機会があった。
参考:「HK 変態仮面」は想像以上にすごい映画だった
記事にはしてないが映画「言の葉の庭」の舞台挨拶でも監督に質問できた。
真ん中の席に座り、手をまっすぐにあげて相手の目を見るのがコツだ。

他にも株主優待や株の分割についてや、リストラ、女性取締役がいない件などについての質問があった。
全部書いていくとキリがないので、後日任天堂の公式発表を参照してほしい。

長年の黒字が二年連続の赤字になり、株価も低迷し、Wii Uの立ち上がりも成功とはいえない状況において、もっと株主総会が荒れたり、社長責任を問われたりすることを心配していたが、終始和やかな雰囲気で株主総会は終了した。
質問内容は後ろ向きなものではなく今後の期待を持った内容のものが多く、株主から愛されている会社だと感じた。

エレベータが2基しかなく、帰りは大渋滞だったがエレベーターを待つ人達の中に3DSですれちがい通信をチェックしている人がたくさんいた。今でこそ、老若男女問わずゲームを遊ぶ時代だし、いい大人が携帯ゲーム機を外に持ち出すのも珍しくなくなったが、その状況を作った最大の功績者は任天堂だろう。

岩田社長は「ゲーム以外の事業に取り組まないのか」という質問に対しWii Fitや脳トレの成功を説明した上で「娯楽の定義を独自に拡張することでビジネスを広げている。基本はお客様が笑顔になる商品を作るのが軸足の会社だ」と答えていた。
任天堂は今も昔もこれからもユーザーの笑顔を作り出す会社だと、理解しているから、この人達は任天堂の株を買い、株主総会に出席しているんだなと感じた。

総会終了後、すぐ近くにある建設中の新社屋を訪れた。

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建設はだいぶ進んでおり、来年には完成するだろう。

来年はこっちで株主総会を行うのだろうか。ぜひとも参加したい。

6月29日 追記
質疑応答の議事録が正式に掲載された。
私の記述よりも正確なので、こちらをご参照ください。
案の定、他社の具体的なタイトルを列挙して持論を披露していた最初の質問者の内容は大幅にカット、トンカツ凍ってる発言もカットされていたが、岩田社長の発言はほぼ原文ママのようだ。
私の質問も記憶と一致するので原文ママのはず。

あと、こういう発言もあるのでどこの馬の骨かわからない個人株主の書き起こし文章を元ネタにまとめサイト記事を書かないでください。



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