静岡銀行は2016年4月12日、自行のサービスを外部事業者が利用できるようにする銀行API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の公開を始めた。具体的な利用企業としてマネーフォワードが、同行のインターネットバンキング(IB)を利用する顧客向けの資産管理サービス「マネーフォワード for 静岡銀行」の提供を開始した。NTTデータが提供する個人向けIBサービス「AnserParaSOL」のAPI連携機能を活用し、静岡銀がマネーフォワードに対してAPIを公開。それぞれのサービスを連携させる。銀行が外部事業者向けにAPI公開に踏み切るのは、住信SBIネット銀行に続き国内2例目。「AnserParaSOL」の利用行は約70に上り、他行が追随する可能性がありそうだ(図)。
銀行APIとは、残高照会や入出金明細といった銀行サービスを外部事業者向けに公開するための仕組みである(関連記事:銀行API「大公開時代」がやってきた 日本のFinTechに追い風)。NTTデータは2015年10月に、AnserParaSOLにAPI連携機能を追加すると発表。今回、静岡銀がファーストユーザーとして、実サービスでの利用を始めた格好だ。
同機能を利用すると、銀行はマネーフォワードやfreeeといったFinTechサービス向けに、顧客の入出金明細などをAPIを介して情報連携できるようになる。銀行の顧客にとっては、正確な口座情報を照会しやすくなると同時に、FinTechスタートアップ企業にIDやパスワードを預ける必要がなくなる利点がある。AnserParaSOLのAPI連携機能を使うかどうか、どういった外部サービスと連携させるかは、金融機関が個々に判断する。
「マネーフォワード for 静岡銀行」は、マネーフォワードの個人資産管理(PFM)サービスをベースとしたもの。利用者は静岡銀の口座残高や入出金明細を確認できるほか、他行の口座情報やクレジットカードの利用明細なども一括管理できる。他行の口座情報を収集するに当たっては、マネーフォワード側にIDやパスワードを預けなければならないが、静岡銀の口座情報に関しては必要ない。
FinTechの盛り上がりと共に、スタートアップ企業をはじめとする外部事業者との協業を後押しする有力な取り組みとして、銀行APIの公開は注目を集めている。金融庁の金融審議会が2015年12月にとりまとめた報告案では、銀行システムの接続仕様を公表するオープンAPIの在り方を検討する作業部会を2016年度中に設置するとした。
AnserParaSOLのAPI連携機能は完全なオープンAPIではないものの、外部事業者との協業を促進しようとする方向性は同じ。多数の利用行を抱えるIBサービスだけに、静岡銀による活用実績が与える影響は少なくない。