図1 無線LANの通信方式を取り込んだBluetooth 3.0+HS
図1 無線LANの通信方式を取り込んだBluetooth 3.0+HS
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 Bluetooth 3.0+HSとは,近距離無線通信方式であるBluetoothの高速化規格のこと。2009年4月に発表された。無線LANの通信方式を取り込むことで,従来,約3Mビット/秒だったデータ転送レートを約24Mビット/秒にまで引き上げた。物理層およびデータリンク層に該当する部分で,従来のBluetooth方式と無線LAN方式の両方を使えるようにしており,機器間で大容量データを高速転送する際はBluetoothから無線LANに切り替える(図1)。

 Bluetooth 3.0+HSは,無線LANの通信方式を取り込むに当たって次の二つの技術を新たに採用した。(1)「Alternate MAC/PHY」(オルタネート マック/ファイ)と,(2)「Protocol Adaptation Layer」(プロトコル・アダプテーション・レイヤー)である。これらが,大容量データをやりとりする際の通信方式の切り替えにかかわっている。

 実際に大容量データをやりとりする際の動作を見てみよう。まず,データをやりとりする機器間で認証し,接続する。その際はBluetooth方式で通信する。接続後,機器間で大容量のデータをやりとりする場合は,アプリケーションが通信方式をBluetoothから無線LANに切り替える。この切り替え先となるのが(1)のAlternate MAC/PHYである。

 Alternate MAC/PHYには,Bluetoothアプリケーションと無線LANの物理層との間でデータやコマンドをやりとりする(2)のProtocol Adaptation Layer(PAL)を含んでいる(図1参照)。PALは,送受信するデータやBluetoothのコマンドを無線LANで扱えるようにするための“翻訳係”の役割を担っている。

 なお,無線LAN方式で通信する際は,対向の機器がいずれもBluetooth 3.0+HSに対応していなければならない。Bluetooth 3.0+HSは下位互換性を持つため,従来のBluetooth方式でしか通信できない機器とは,従来の方式でデータを転送する。

 そのほかBluetooth 3.0+HSには,「Enhanced Power Control」(エンハンスド パワー コントロール)と呼ばれる省電力機能も加えられている。Bluetooth 3.0+HSに準拠した製品は2010年前半に市場に登場する予定である。