24歳になる私の部下のことですが,何度注意しても同じミスを繰り返し,仕事もやりとげられません。会議中はそわそわし,デスクの上には書類が山のように積まれて全く整理できない状態です。あきれ果てて「もう辞めて欲しい」とさえ思っています。どう対処すればいいのか悩んでいます。(39歳,男,プロジェクト・マネジャー) |
質問者の部下のように,注意が散漫でよくミスをし,落ち着きのない人はいるものです。こうした人は多くの場合,何か大きなストレスを感じていたり,なんらかの原因で情緒不安定に陥っています。
しかし,そういった行動が長く続く場合は,「注意欠陥障害(ADD)」や「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」を疑ってみる必要があります。
注意欠陥障害は,注意が続かない「行動傷害」が主な症状です。図1に掲げた項目の6つ以上があてはまり,それが6カ月以上続いている場合は,注意欠陥障害の可能性があります。一方の注意欠陥・多動性障害は,注意欠陥障害に多動性(落ち着きなく動き回ること)や衝動性(衝動的な行動に出ること)が加わったものです。図1で6つ以上,図2と図3に挙げた9つの項目のうち6つ以上が6カ月以上続いていれば,注意欠陥・多動性障害の可能性があります。
注意欠陥障害と注意欠陥・多動性障害は子供のときに起こる障害で,年齢を経ると症状は軽くなると言われています。しかし,たまに大人になってからも症状が続き,人間関係がうまくいかなくなったり,職場に適応できなくなったりすることがあります。
原因としては,中枢神経(脳と脊髄)の脂肪酸欠乏説や,人工添加物の取りすぎなどの説がありますが,はっきりしたことは分かっていません。遺伝の影響もあると言われています。
原因ははっきりしていませんが,治療方法としては「リタリン」などの,気分を持ち上げる精神刺激薬を使った薬物療法が有効なことが分かっています。「テグレトール」や「セレネース」などの鎮静効果の強い薬を用いることもあり,こうした薬物療法により7~8割は治癒します。カウンセラーによる認知行動療法(認知を変えることによって感情や行動を変える訓練をすること)も効果があります。
もし,質問者の部下が図で示したチェックリストにあてはまり,仕事のうえで大きな支障をきたしているのなら,本人のためにも粘り強く説得して,精神科の診察やカウンセラーによるカウンセリングを受けることを勧めるべきです。
東京メンタルヘルスアカデミー所長