土門は、全員に撤収を命じた。藤川は反対はしなかった。どのみち、もう一時間もすれば辺りは明るくなる。行方不明者たちが生きているとは
激光脫毛價錢思えないので、あとは道路が再開してから、捜索隊を半日ばかり入れてお茶を濁すこ
とになるだろう。そしてまた神隠し谷の伝説に新たな一頁が加わるのだ。
自然現象で説明できることばかりで、地元には迷惑だろうが、何となくこの森は、人を寄せ付けない雰囲気がある。このまま伝説に守られて人を寄せ付けない方が良いだろうと思った。きっと役場が、「ガス多発地帯に付き立ち
入り禁止」の立て札でも立てるだろう。自分らは職責を果たした、と土門は思った。
稜線に沿う急な坂道を下り始める。二〇〇メートルほど戻った所で、土門は突然、悪寒に見舞われた。背筋が凍り付くような悪寒に囚われ、ウッ!? と
肌膚老化呻きながら立ち止まった。辺りをゆっくりと見渡す。すると、右翼側の谷底で
、何かが光っていた。それはあまりにも弱々しい光だったが、消えることもなく土門の視界に留まり続けた。最初は獣の瞳がマグライトに反射しただけかと思ったが、違った。その眼は一つしかなかった。
次の瞬間、それが何であるかが閃いた。文字盤だ!……。バックライトに照らされて緑色に輝く腕時計の文字盤に違いなかった。
「止まれ! あれを見ろ!」
だが、土門がそう言った瞬間、その輝きはふいに消えた。まるで電池が突然切れたみたいに、消えてなくなった。漆黒の闇が広がるだけだ。
「くそ、消えた!?……。誰か見たか? 腕時計の文字盤に違いない! 誰か生存者が、シグナルを送ろうとしていたんだ」
だが、それを目撃した者は、土門以外には一人もいなかった。
「俺は信じるよ、あんたのセンスを。ただ問題は、あそこはガスの溜まり場ということだ。防毒マスクは効果ないぞ。酸素ボンベを背負わないと」
土門は、ただちに散開した部隊から、水中任務で使用するエマージェンシー・ボンベを回収した。
消防団が持っていた酸素ボンベも二本あるが、こちらは生存者救出のために取っておく必要があった。
「四名選抜する。キャッスル、フィッシュ、ボーンズの三名と俺だ。水中と違い、皮膚呼吸でもガスを吸飲することになる。気を抜くなよ」
土門は、自分のザックを部下に預けて身軽になった。消防団のボンベをそれぞれフィッシュとボーンズが背負う。
藤川が、「何も指揮官自らが突っ込むことはないだろうに……」と呆れ顔で言った。
「俺しか見てない。きっとあれば、私への合図ですよ。助けてくれという」
土門は左手にガス検知器を持った。それぞれ単縦陣で、二五メートルの距離を持って前進する。先頭の一人が倒れたら、速やかにボンベを装着して、それを救出して引き揚げるという作戦で行くことにした。正直、生存者がいる
かどうかは半信半疑だったが、シグナルを発した人間がいることは確かだ。
土門は、右手にマグライト二本を持って谷底へと降り始めた。硫黄臭が鼻を突く。検知器が反応してピピッと、軽度の警報を発し始めた。
やがてピー! という連続音に変わる。ここから先は、三分以内に酸素ボンベを着用するか、撤収するかせよ、という警告だ。
土門は、「ボンベ着用!」と後方に合図して、自らもボンベをくわえた。この呼吸の度合いだと、ボンベが持つのはほんの七分だろう。三分で現場に到着、四分で帰らねばならない。
腕時計の文字盤があれば、マグライトの光に反射するはずだ。やがて後方の三名が到着する。あちこちにマグライトの光を投げかけると、腕時計は見つからなかったが、折り重なるように倒れる人間を発見できた。男一人に女二
人。酷い格好だ。髪は乱れ、服はあちこち裂けている。てっきり死んでいるかと思ったが、小柄な女が激しく咳き込んだ。
「生きている! 生きているぞ!」
酸素ボンベをあてがう。すでに四分が経過していた。脱出ルートへ戻るのは無理だった。安全なルートを探さなきゃならない。周囲を見渡していると、ま
科技護膚たもや、文字盤が緑色に光った。それは一瞬のことで、土門一人しか気付
かなかった。