SSHのポート番号が「22」に決まった経緯を開発者のTatu Ylonen氏が公開
Secure Shell(SSH)は安全にリモートコンピューターと通信するためのプロトコルで、当時、学生だったTatu Ylonen氏が開発した技術です。SSHのデフォルトのポートは「22」番が指定されていますが、22番に決まった経緯について、当時のメールを使ってYlonen氏が明らかにしています。
SSH Port
https://www.ssh.com/ssh/port
1995年にフィンランドのヘルシンキ工科大学の学生だったYlonen氏は、別のマシンに安全に接続するためのプログラムを書いていました。当時、リモートホストのシェルを利用する既存のプロトコルとしてTelnetやFTPがありましたが、いずれもパスワードを平文でネットワーク上に送信しているため、セキュリティ面に難がありました。そこで、Ylonen氏は、TelnetやFTPに代わるプログラムを設計しようと考え、「Secure Shell(SSH)」を開発しました。
FTPが使うポート番号は「21」、Telnetで使うポート番号は「23」で、その間の「22」が使われていなかったことから、Ylonen氏は自身のテスト環境では22番ポートを使ってSSHの開発を行ったそうです。
当時はまだインターネットバブル(ドットコムバブル)も到来していない初期のインターネット時代であり、ポート番号の割り当てはInternet Assigned Numbers Authority(IANA)が行っていました。つまり、Jon Postel氏やJoyce K. Reynolds氏などのインターネット技術のパイオニア的存在の重鎮たちが決定権を握っていたというわけです。こうした重鎮の面々は、Ylonen氏にとって恐ろしい存在だったとのこと。
SSH-1.0を公開する直前の1995年7月10日に、Ylonen氏はIANAに向けて1通のメールを送りました。それは以下の通りの文面で、「安全な通信をするためのプログラムを書いていること」「ソフトウェアは多くの人に使ってもらえるように無料で配布する予定であること」「1から255の範囲内の特権ポートを取得したいこと」「ソフトウェアのサービス名は『SSH』であること」を書いた上で、「現在、ベータテストではポート番号『22』を使用しています。まだリストに割り当てられていない番号を使う事ができれば素晴らしいことです」という一文が添えられました。
翌日、Ylonen氏のメールボックスにはReynolds氏から「ポート番号22はSSHに割り当てました」というメールが届いたとのこと。
メールを受け取ったYlonen氏は1995年7月12日午前2時32分にヘルシンキ工科大学で最終ベータ版を発表し、午後5時23分にssh-1.0.0パッケージを公開し、ニュースグループやメーリングリスト、インターネット上で議論している著名人に宛ててメールをSSHのリリースを告知したそうです。
その後、Ylonen氏はSSHを製品として販売できないかという問い合わせを受けた結果、SSH Communication Securityを設立し、わずか5年で売上2000万ドル、従業数190人の組織にし、SSHを現在も多くの通信で使われるプロトコルに育て上げました。
SSHのデフォルトポート番号に22が使用されている背景には、フィンランドの学生からの1通のメールを受けて、ポート番号22を割り当てるという決定を下したIANAの判断があったようです。
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