子どもが学校で本当にマスターすべき7つのこと
by Chris Suderman
学校でテストの点数がよくても大人になってから必ずしも成功するとは限らないもので、現在では学校教育の評価方法が改められたり、テストの実施が見直されたりしています。幼稚園から高等学校を卒業するまでの13年間に行われるテストを300回以上評価してきた経歴を持つ発達心理学者のスーザン・エンゲルさんは、経験から得た「子どもがマスターすべき7つのこと」を挙げており、その7つのことを学校教育で身につけていくためのポイントや評価方法をまとめています。
7 things every kid should master - Magazine - The Boston Globe
http://www.bostonglobe.com/magazine/2015/02/26/things-every-kid-should-master/uM72LGr63zeaStOp9zGyrJ/story.html
1:読む力
by Antonio Mantero
エンゲルさんによると、全ての子どもは小学校を卒業するまでに読む力を身につけるべきであり、情報収集や楽しみのために、定期的に本を読む習慣をつけることが大切とのこと。子どもはものを「読む」ことができると、できなかった時と考え方が変わります。また、読む力を身につけることで現実世界においても情報収集が可能になり、他の人と会話する能力が身につくのも重要な点です。
教師が子どもの読む力を測る方法の1つには、子どもたちの考え方や言葉の使い方を観察するという方法があります。例えば、発達心理学では子どもの知能を測るために「子どもがスピーチする様子」を録音して聞く、という方法を採ります。センテンスにおける文法の複雑さと語彙の多さは子どもの知能を知るための重要な指標となるので、教師はただ筆記試験を行うのではなく、子どもが話すセンテンスから能力を測ることができます。
2:質問能力
by Raymond Bryson
子どもはいろんなことを理解したがる衝動を持っているものですが、多くの場合、学校教育は「質問すること」に重きを置いていません。そのため、学校に行くと子どもはどんどん質問をする回数が少なくなり、探究をやめ、好奇心を失っていきます。科学的な発見やイノベーションを求める教育システムが「学び」に必要不可欠な「衝動」を抑えるという矛盾が生じているのです。
エンゲルさんは上記のような既存の教育法とは逆に、子どもに質問を促し、そこから子どもの能力を測ることを勧めています。過去の研究から子どもの能力を測るためのいくつかの指標が導きだされており、「データに基づいた回答が得られるような質問をしているか」「正しい答えが得られなかった時に質問を続けようとするか」「答えを得るために複数人に質問したり、PCを使ったりなど、さまざまな方法を駆使しているか」といった方法で能力の評価が可能になるそうです。
3:柔軟な考え方と説明する力
by Wirawat Lian-udom
学校で身につける重要な能力のうちの1つが「複数の見方で状況を考える」ということ。「自分の得意なことを1つ選び、読者にそのことについて説明してください」という質問に対して小論文を書く、という課題が大学で出されることがあります。これは、生徒がそのものごとについてどのくらい精通しているのかを描写させ、理解する側の立場に立って論理的にタスクを説明できるか、大意や情報を正確に伝えられるか、などを測るものです。上記の質問の他に「自分自身のことを友だちの視点で説明してください」というものもありますが、このような「説明する力」を測り育てる教育は小学校でも行われるべき、とエンゲルさんは語ります。
4:会話能力
by Anthony Mendez
大人になってからの多くの状況で会話能力が求められるのは周知の事実ですが、過去の研究により子どもにとっては「大人との会話」が非常に重要だということが判明しています。ある研究では「子どもが家で親と交わす会話」が録音され、後にデータが分析されたのですが、親の質問の仕方や答え方、子どもを回答へと導く方法、子どもが何を知っていて何を考えているのか知る方法など、多くの会話方法が子どもに受け継がれていることが分かりました。また、子どもは親との会話で自分の知らない新しい世界を見ることができます。
一方で、貧困家庭の子どもは親との会話が少なかったり、聞き取りの能力が低かったりすることもあります。その場合は教師が学校でしっかりと子どもと会話する必要が出てきますが、子どもとの会話に重きを置いている教師は少ないとのこと。会話能力の重要性は理解されていても、会話能力の測定は非常に難しいという問題点もあります。会話の長さや、相手とやりとりした回数、取り上げられたトピックの数など、見るべき点が多すぎるのです。しかし、もし教師が「子どもとの会話に価値があり、会話によって子どもを評価可能だ」と知っていれば、子どもの会話能力を伸ばそうとするはず、とエンゲルさんは語っています。
5:他人と協力すること
by niko si
子どもの世界に不和はつきものです。例えば、学校の人気者であるショーンという子どもがいて、お昼には食堂で好きな友達を集めてみんなで食事をとっているのですが、背が低くてメガネをかけた地味なタイプのクインという少年だけがショーンにのけ者にされてしまい、次第に「学校に行きたくない」と母親に漏らすようになったとします。
上記のような出来事はどの学校でも耳にします。教師はクインのような子どもをサポートすることも重要ですが、同時にショーンのような子どもに他人を支配したがる衝動を抑えることも教えなければなりません。
発達心理学での重要な発見の1つに「子どもは『大人が他人をどう扱っているか』を見ることで、他人への接し方を学ぶ」というものがあります。このことを考えると、ただ生徒に教えを説くのではなく、普段から教師が他の教師や生徒に対してどう振る舞っているが重要。親切心やチームワークは一夕一朝で育つものではありませんが、教師が「生徒が協力できる環境」を作ることが求められます。
6:没頭すること
by Ed Yourdon
教育哲学者のハリー・ブリッグハウス氏によると、1つのことに20分間集中し続けることこそが、学校で得られる最も重要な認知能力とのこと。もちろん人の集中力には差があり、物事の最初から集中できる人もいれば、集中状態になるのに長い時間がかかる人もいますが、基本的に学校で生徒が基礎的な水準をクリアすることは可能と考えられています。
この水準をクリアするためには、高い集中力を子どもに求めたり、集中していないように見える生徒をしかったりするのではなく、没頭する対象となるさまざまな機会が生徒に与えられているか、そして生徒が与えられた機会に集中しているかをチェックすることが大切です。
7:健やかであること
by Len Matthews
学校に通う子どもにとって何よりも重要なのは、学校にいる時の状態に満足することです。経済学者や心理学者はこれまで「自分の幸福さを語る時の人々は信頼性が高い」ということを示してきました。子どもに「どう感じているか」ということや「学校にいる大人に理解されていると感じるか」「自分の取り組んでいることにどのくらい興味があるか」などを質問することで子どもの状態を測るべき、とエンゲルさん。
子どもの成長や学びの状態を筆記試験などで測るのが一般的ですが、子どもを自由にし、教師に意味ある仕事をしてもらうには、上記の7つのことが重要であるとエンゲルさんは語っています。
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