目の見えない人たちが見ている世界とはどのような世界なのか?
By Alan Light
ピアニストの辻井伸行さんのように、目が見えないにもかかわらず「色」を感じ、それをピアノを使って表現できる人を見ると、一体どのような世界が見えているのか不思議に思ってしまうものです。目の見えない人たちが「見ている」世界とは一体どのような世界なのかについて、 Nautilusのコラムで非常に分かりやすい例を交えて解説されています。
What Do Blind People Actually See? - Facts So Romantic - Nautilus
http://nautil.us/blog/what-do-blind-people-actually-see
目をつぶれば真っ暗闇が広がることから、目の見える人は、目の見えない人の世界は「真っ暗な世界」だと考えがちです。しかし、この認識はまったくの間違いであるとジム・デイビス氏は述べています。
目に映る「視界」について盲目の人がどう感じているのかを簡単に知りたいならば、「自分の後ろの世界をどう感じているかを考えればよく分かる」とデイビス氏は例えます。もちろん目が背中にないので後ろの世界は見えません。「後ろの世界はどんな世界?」と言われない限り、意識することもないというのが普通です。つまり、意識されない世界は「存在しない」ということ。盲目の人が「どう見えているのか?」ということは存在しないものを尋ねるかのようなものだというわけです。
By Lucas Cobb
しかし、目の見えない人には「見えていない」のかというと、これは間違い。非常に比喩的な表現になりますが、盲目の人も「見える」とのこと。この場合の「見える」とは「感じる」と言い換える方がより正確です。目という器官で感じることはできなくとも、盲目の人は違った方法で、違った感覚を使って感じているとデイビス氏は語ります。
この「感覚」について「感覚的に」理解するために、デイビス氏は「机の下のハイヒール」を例えに使っています。女性がレストランで食事をするときに、足を休ませようとこっそりとハイヒールを脱いだとします。楽しい食事が済んで席を立とうとしたとき、女性はハイヒールを目で確認することなく上手に履くことができるはず。この女性は目を使わず視覚とは違う「感覚」を使って「見ている」のだとデイビス氏は話しています。
By Daniel Bentley
人間が持つ空間認識能力を調べる目的で、ドイツ人科学者のピーター・ケーニッヒ博士は「feelSpace」というベルトを使って実験を行っています。feelSpaceは腰につけるベルト型のデバイスで、北を向いているときだけ振動するという仕組みになっています。ケーニッヒ博士がfeelSpaceを被験者に取り付け6週間過ごしてもらうと、その人はベルトがなくても100キロメートル以上離れた場所から自分の家の方角が分かるようになったとのこと。
ケーニッヒ博士の実験で分かるとおり、人間には視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚という五感を超える「第六感」と呼ばれる感覚があります。この第六感を使って目の見えない人が「見ている」とも考えられますが、より正確に言えば、「『目で見る』という行為は視覚だけに頼っていると思いがちですが、目の前の世界を見るときには聴覚や嗅覚などの他の感覚も駆使されているものです。目の見えない人は『視覚』という感覚こそ使っていませんが、それ以外の感覚を駆使して目の前のものを『見ることができる』のです」とデイビス氏は結論づけています。
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