食料不足を救う可能性のある新食材「パワー小麦粉」の原料とは?

by Theen Moy

世界の食糧問題を解決するため、3Dプリンターで食べ物を印刷したり、従来の食事をとらなくても人体に必要な栄養素を摂取することができるソイレントが開発されたりしていますが、カナダのマギル大学の研究者たちによって、バッタから作られる栄養価の高い「パワー小麦粉」が現在開発されています。

Flour made with insects wins $1M for McGill team - Technology & Science - CBC News
http://www.cbc.ca/news/technology/flour-made-with-insects-wins-1m-for-mcgill-team-1.1866685

Flour Made From Insects Will Feed Underfed Populations - ABC News
http://abcnews.go.com/Lifestyle/flour-made-insects-feed-underfed-populations/story?id=20402024

この研究は2013年9月に学生を対象としたハルト賞を受賞しており、賞金100万ドル(約1億円)を使って2018年までにスラムに住む2000人の人々のためにパワー小麦粉を生産するようです。研究チームを率いるMohammed Ashourさんは「我々はこのプロジェクトを5年間で行うという野望を持っているので、受賞は大きな一歩です」と語りました。

物質1gあたりのバッタのタンパク質量は牛肉より多いため、Ashourさんは小麦粉の原材料としてバッタの使用を考えており、研究チームは諮問委員会の協力のもとメキシコの農家たちを雇う予定。メキシコでは全人口のうち400万人もの人々が栄養失調で苦しんでおり、また昆虫食がダイエットの方法としても親しまれているためです。現時点ではバッタの収穫シーズンは3カ月のみで、収穫方法も手摘みですが、メキシコの農家たちは大規模にバッタを飼育することに興味を示しているとのこと。

by Scott & Emily www.wegoslow.com

アメリカではなじみがありませんが、ガーナではヤシオオオサゾウムシ、ボツワナではガの幼虫などが食べられており、昆虫を食べるという文化は世界的に見ると珍しいものではありません。そのため、パワー小麦粉はその国の文化に合わせて生産されることが考えられています。

研究者はすでにキロ単位の昆虫を消費しており、中にはタイで調査した際に幼虫からカブトムシまでとにかくあらゆる昆虫を食べた人や、バジルで味付けした昆虫を食べたベジタリアンの研究者もいるそうです。

パワー小麦粉に限ったことではなく、2013年5月には国際連合食糧農業機関(FAO)が昆虫はこれからの食糧として非常に有用であるというレポートを発表しています。オランダのワーゲニンゲン大学と共同で行われたFAOの調査によれば、世界中では現在1900種以上の昆虫が食用として消費されており、世界で最も多く消費されている昆虫は、カブトムシ(31%)、イモムシ(18%)、ハチ、狩ハチ及びアリ(14%)、バッタ、イナゴ及びコオロギ(13%)とのこと。昆虫の多くはタンパク質が豊富で、脂肪分に富み、カルシウム、鉄分、鉛分も高く、かなり栄養価が高いそうです。

by Alessandro Valli

例えばアボリジニが食べるオオボクトウの幼虫はオレイン酸やオメガ9脂肪酸が豊富で、チャプリネスというバッタはメキシコでニンニク・ライム・塩あるいはワカモレやチリパウダーと一緒に食され、重要なタンパク源となっています。モパネワームは日干しまたは燻製にして家庭で食べられているだけでなく、塩づけの缶詰がスーパーで売られているなど昆虫食が商業化しているところも少なくありません。

また、牛肉1kgを生産するためには8kgのエサが必要であるところ、冷血生物の昆虫は体温を保つために飼料からのエネルギーを使用する必要がないので、わずか2kgの飼料で1kgの昆虫を生産することが可能なのも食糧として昆虫が優れているポイントです。

これらのことを考えると、即座に食糧として昆虫が出回らなくとも、家畜飼料として魚粉を昆虫の粉末で代替し、これにより人間の食料となる魚粉を増加することが可能。さらに現在は家庭レベルで消費されている昆虫が食糧危機を救うだけでなく、潜在的な加工産業としての雇用と現金収入をもたらす可能性もあると考えられています。

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in サイエンス,   , Posted by darkhorse_log

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