「ネットの匿名性排除」を匿名の議事録で提言する警察庁・総合セキュリティ対策会議
毎日新聞の18日付記事によると、警察庁が設置している総合セキュリティ対策会議は一連の遠隔操作ウィルス事件で真犯人が使用したとされる『Tor』を始めとする匿名化ツールの悪用を防止するため、プロバイダ各社に対して匿名化ツールを使用した通信をブロックするよう“自主的な取り組み”を要請すべきであるとする報告書を取りまとめたとのことです。
該当する報告書全文は20日時点ではまだ総合セキュリティ対策会議に掲載されていませんが、議事の概要と第1回から3回までの議事録は公開されています。しかし、この議事録は「ネットの匿名性排除」を議題にしているにも関わらず生活安全局長と事務局担当、そして10年以上も委員長のポストに居座り続けている前田雅英・首都大学東京教授を除いては委員の発言が完全に匿名化されており「ネットの匿名性排除」をテーマとする会議としては何とも矛盾を感じさせるものとなってしまっている感が否めません。この「匿名の議事録でネットの匿名性排除を提言する」矛盾について、遠隔操作ウィルス事件の真犯人からの犯行声明とされるメールを受け取った落合洋司弁護士(@yjochi)は『Twitter』で以下のように批判しています。
警察庁の総合セキュリティ対策会議は、名前がわかるのは、例の大学教授くらいで、他は名前が、警察庁のサイト見ても出てこないのだが、匿名通信の議論するには匿名で、という方針なのかな。笑
(出典:http://twitter.com/yjochi/status/324868225047330816 [リンク])
日本は国境なき記者団が毎年発表している世界報道自由ランキングの2013年版において53位と、前年の22位から大幅にランクダウンしました。このランキングではマスメディアやフリージャーナリストの取材・発表だけでなく「インターネットを利用した一般市民の情報発信・受信の自由」も重視されており『金盾』と呼ばれるソフトで検閲・通信遮断を国家単位で行っている中国が“インターネットの敵”に認定されている他、昨年8月に最高裁で違憲判決が下されるまでネット実名制を強制していた韓国や「青少年の保護」を理由に政府がネット検閲を推進しているオーストラリア、著作権侵害に対するネット強制遮断を実施しているフランスなどが“要監視対象国”に挙げられています。今回の提言が「民間の自主的な取り組み」と称しながらも実態は警察の圧力で疑似的に検閲を行わせていると受け取られた場合、日本がオーストラリアやフランスと並んで“要監視対象国”にリストアップされるのは時間の問題かも知れません。
参考:落合弁護士@yjochiの「匿名がけしからん、という議論を、匿名でする、というのは、思い切り笑えるよな。」 [リンク](Togetterまとめ)
画像:警察庁・総合セキュリティ対策会議のページ [リンク]
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