アマゾンやグーグルなど巨大IT企業が、自社のAI(人工知能)技術を部品化して顧客企業へと提供する事業に注力している。
昨今、産業各界でAI技術者の不足が叫ばれているが、ここに向けて巨大IT企業の培った高度なディープラーニング技術を安く貸し出す。
これを使う顧客企業側では、AI関連の技術開発や人材育成などに要する時間とお金を節約できる一方で、人工知能という言わば「ビジネスの頭脳」に当たる部分を米IT企業に握られることから、今後、彼らによる世界的な産業支配が一層進む恐れもある。
機械学習のレンタル事業化
アマゾンは昨年末、自社のクラウド・サービス「AWS」の一環として「SageMaker」と呼ばれる機械学習機能を新たに組み入れた。
これに続いてグーグルも「Cloud AutoML」と呼ばれる同様の機能を自社のクラウド・サービスに組み込んだ。
ほぼ同時期にマイクロソフトも、アマゾンと共同で「Gluon」と呼ばれる機械学習のライブラリ(部品化されたコンピュータ・プログラム集)を開発し、マ社のクラウド・サービス「Azure」経由で顧客企業への提供を開始した。

機械学習とはAIの一分野であり、その最先端を走るディープラーニングは今、産業各界で最も注目されている技術だ。企業は、この技術を自社の工場や社内システムなどに組み入れることによって、業務の効率化やコスト削減などを実現できる。
しかしディープラーニングの開発には難解な数学や統計学の知識、さらに高度なプログラミング技術が必要とされるため、この分野の技術者を育成するには相当の時間と費用がかかる。
またディープラーニングは、巨大データセンター内に設置された多数のサーバー上で稼働するため、膨大なコンピューティング資源を消費し、ここでも巨額の費用が必要とされる。
さらに、一旦開発されたディープラーニングを実地で動かすためには、その前段階として各応用分野における「トレーニング・セット」と呼ばれる大量のデータを用意し、「ラベル付け」と呼ばれる一種の教育作業を施す必要がある。これは一般に人手を介して行われるため、ここでも膨大な人的・資金的コストが費やされることになる。
このため多くの企業、なかでもヒューマン・リソースや資金力に制約がある中小企業にとって、自前でディープラーニング技術を開発し、これを自社のシステムや業務に組み込むことは高嶺の花に近いところがあった。