なんと粗末な代表質問!民進党のレベルは「お子様級」というほかなし
これで提案政党とは聞いて呆れるこれでホントに元総理?
民進党は大丈夫か。蓮舫代表や野田佳彦幹事長の臨時国会・代表質問を聞いていると、本当に心配になってくる。経済政策や憲法改正、TPPといった重要政策について、基本も分かっていないお粗末さが明白になってしまった。
9月26日に開幕した臨時国会は、新執行部体制が発足した民進党にとって初めての国会である。どんな新味を打ち出すのかと期待したが、残念ながら、これではとても安倍晋三政権に対抗できそうにない。
驚いたのは野田幹事長の代表質問だ。
野田幹事長は経済政策について「アベノミクス第一の矢の手詰まりはあきらか」としたうえで「マイナス金利は金融機関の経営に悪影響を与えている。日本銀行にマイナス金利を撤回させることを政府として要請することを提案する」と述べた。
「アベノミクスが手詰まり」というのは評価の問題だから、百歩譲ってよしとしよう。だが「金融機関に悪影響を与えている」というのはどうか。幹事長は日銀がいまでも金融機関に巨額の「補助金」を与えているのをご存じなのだろうか。
銀行はじめ金融機関は日銀に当座預金を預けている。2016年8月の月末残高は303兆円である(http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/)。このうち0.1%のプラス金利が付いている(付利)部分は209兆円、ゼロ金利部分は6兆円、▲0.1%のマイナス金利部分はどのくらいかといえば、わずか22兆円、全体の1割にも満たない。
日銀は情報を開示しているから、先に挙げたサイトにある8月分のエクセルファイルを開いてみれば、こういう数字はすぐ確認できる。
銀行はいまでも日銀に預けた当座預金の大部分に、正確に言えば付利の制度が適用になる当座預金294兆円の7割に0.1%のプラス金利が付いているのだ。
いま大手銀行の大口定期預金に付いている金利は預金1000万円以上でも0.01%である(たとえば、みずほ銀行、http://www.mizuhobank.co.jp/rate/deposit.html#teiki)。
普通の銀行当座預金に金利は付かない。銀行は、家計や企業が預けられない日銀の当座預金に預けているだけで、家計や企業が大口定期で得られる金利の10倍もの金利収入を得られるのである。
銀行は特別扱いされているのだ。これを補助金と呼ばずして、なんと呼ぶか。民進党は庶民の味方のようなフリをしているが、野田幹事長の言い分をみると、金融機関の味方と分かる。
あまりにお粗末な認識
もっとあきれたのは「マイナス金利の撤回を政府が日銀に要請せよ」というくだりである。これは「日銀の独立性」をまったく理解していない証拠だ。
日銀の独立性とは金融政策の手段を日銀に任せることだ。金融政策の目標を政府と共有したうえで、どういう手段を用いて目標を達成するかは日銀に委ねる。これが日銀の独立性である。
いまの政策に照らして言えば、デフレを脱却する。この目標を政府と日銀が共有したうえで、どのような金融政策を用いるかは専門家集団である日銀に委ねる、という話になる。
野田幹事長が唱えたように、政府が「マイナス金利を撤回せよ」などと日銀に要求したら完全なルール違反、独立性の侵犯だ。それが許されるなら、政府が日銀をコントロールすることになってしまう。
野田幹事長はたとえば、政府が日銀にマイナス金利の代わりに「国債をぜんぶ買え」と要求してもいいと思っているのだろうか。
無知なマスコミの中には、政策目標の共有と手段の独立性の違いを理解せず、日銀は政府の言いなりにならないで、なんでもかんでも自由にするのが独立性と勘違いしている記者や論説委員もいる。
そういうトンデモ記者でも、この幹事長提案には驚いたのではないか。なぜなら目標のみならず、達成手段まで政府が日銀に要求せよ、と言っているのだから。これは日銀が政府の完全な下請け機関になれ、と言っているのと等しい。
マスコミが野田幹事長発言を正しく批判できないなら、トンデモ記者がいかにとことんデタラメか、という話である。実際、そういうデタラメ記者や論説委員が経済記事や社説を書いているのだから、ため息が出る。
財政政策についても、野田幹事長は消費税10%への引き上げを延期した安倍政権の判断について「後世で厳しく糾弾されるだろう」と批判した。つまり「政府は増税すべし、日銀はマイナス金利を止めよ」というのが民進党の経済政策なのだ。
蓮舫代表は代表質問で「経済政策の大胆な転換を」と訴え、所得再配分の強化を求めたが、増税と金融引き締めのポリシー・ミックスを実行すれば、デフレ脱却どころか再びデフレに逆戻りするのは確実だ。肝心の成長が奪われ、再配分どころではない。