一方、株価に目を転じてみよう。
実は、イギリスの株価は他の欧州諸国と比較して堅調に推移している。例えば、年初からの主要指数を時系列で比較してみると(図表2)、イギリス、ノルウェーといった「非EU加盟国」の株価が堅調である一方、ドイツ、フランスといったEU加盟国の株価は相対的に下落幅が大きい。
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次に、さらにもう少し、対象を広げて、カバレッジがより広いMSCI(モルガンスタンレー・キャピタル・インターナショナル)の指数で比較してみても、年初来、イギリス株の下落幅は世界全体で比較しても小さい。イギリスのEU離脱に揺れたこの1ヵ月間でみても、同様である(図表3)。
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さらに、この図表3をみると、年初来の株式のパフォーマンスが相対的にいいのは、イギリス、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、スイスといった「非ユーロ加盟国」であることがわかる。
この事実は極めて興味深い。メディアでは、今回の「Brexit」について、イギリス経済のデメリットばかりが言及されている。また、IMF等の報告書(6月1日に発表)においても、「Brexit」は、イギリス経済に対してより大きな負のインパクトをもたらす一方、EUに対して与えうる負の影響は小さいと論じている。
すなわち、「Brexit」はイギリスに一方的にデメリットを与えることになるのでやめたほうがいい、というアドバイスなのだが、株価の推移を見る限り、世界の株式投資家の判断はそれとは全く異なっていると思われる。