2016.04.02

価格破壊が生んだ「牛丼最終戦争」
~吉野家の一手がすき家の快進撃を止めた!

〔PHOTO〕iStock

「牛丼最終戦争!?」

「吉野家が開けたのはパンドラの箱だった」

「すごい、すき家(ゼンショー)だけが伸びてる……」

実在する「Tゼミ」(瀧本哲史京都大学客員准教授が顧問)をモデルにした東大ブラック企業探偵団が「牛丼最終戦争」を読み解く。このゼミでは、公開情報に基づく企業分析と政策分析を通じ、過酷な現代社会を生き抜くための意思決定方法を学び実践している

東大・京大で売り上げ第一位!日本最強の企業分析小説解き明かす「いい会社」「悪い会社」とは――。

その二、牛丼最終戦争
ぜいたくの象徴からデフレの象徴へ

「寿司だけが外食産業のホワイト? どういうことだよ」

「おい、いきなり食うんじゃない」

ビックリしながらもちゃっかりマグロに手を伸ばすカンタと、それを制するハルキ。そんなやりとりをよそに、マオはパソコンを操作しながら鋭い指摘を投げかける。

「ふーん、業績の厳しい外食の中にあって、回転寿司業界だけは2009年から2014年までの5年間で平均売上高成長率が5・7%と驚異的ね」

「僕は寿司業界に就職すればいいんですか……」

とヤスシ。

「黒井さん、結論を出すのはまだ早すぎますよ。なぜ外食産業全体がだめになっていくのか、もう少し構造的に見ていく必要がある」

ハルキが資料の中から付箋がたくさん貼られたファイルを取り出して一同に見せる。

「外食産業を象徴しているのはやはり牛丼チェーンだ。ここに外食産業の歴史があるし、未来もある」

最古の牛丼チェーン・吉野家の「牛丼並」は物価上昇に伴って1990年まで値上げされてきた。しかし2001年に吉野家は280円への値下げを敢行。(図1-4)

業界のリーダーが仕掛けた価格破壊は一気に他企業にも及び、ハンバーガー1個59円のマクドナルドと並んでデフレの象徴と揶揄された。

「たしかに、外食産業の衰退期と完全に時期がかぶるわね」(図1-5)

1970年代半ばから、ちょっとしたぜいたくの象徴としてファミリーレストランを中心に伸びていった外食産業だが、1990年代末から2000年代の初頭にかけて、ファストフードに代表される、ヘルシー志向ではないが安くて手軽というデフレを象徴するサービスに転じていった。

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