
経済不況にもかかわらず経常利益は150億円超。上昇気流に乗る業界の異端児は一見、傲慢な接客指針を提案した。「お客様は神様」---そんな旧い価値観に抗う経営者が日本の空に革命を起こした。
客に「出ていってください」
〈客室乗務員は収納の援助をいたしません〉〈客室乗務員の私語等について苦情を頂くことがありますが、(中略)お客様に直接関わりのない苦情についてはお受けいたしかねます〉〈ご不満のあるお客様は『スカイマークお客様相談センター』あるいは『消費生活センター』等に連絡されますようお願いいたします〉
低価格運賃を武器に業績を伸ばしている航空会社「スカイマーク」が、今年5月から機内の座席ポケットに備え付けた「サービスコンセプト」は大きな波紋を呼んだ。
スカイマークの指針に対して、「傲慢だ」「客を客とも思わぬ対応」という批判が巻き起こる一方、一部には「些細なことにもケチをつけるクレーマー対策としてもっともな主張だ」と評する声もある。消費者庁は「苦情を公的機関に振り分ける姿勢は容認できない」として同社へ文書の撤回を指示した。
客を無視する傲慢か、それとも勇気ある正論か---。この文書を作った真意について同社の西久保愼一社長(56歳)に聞いた。
*
言うまでもないことですが、安全運航が大前提。それはどの航空会社も同じです。しかし、われわれは、JALやANAといった大手と運賃競争をするために世に出てきたベンチャーです。最大のサービスは運賃の安さ。客室乗務員が愛想笑いを浮かべながら提供する表面的なサービスより、運賃で勝負しようというスタンスで経営をしてきました。第一、われわれはサービス業ではなく輸送業者です。「運賃以外のサービス」と言ってもおのずと限界があります。平たく言えば、新幹線に乗車したときに受ける程度のサービスをイメージしてもらえたらなと思うんです。