特別企画
ソニーα7R/7はオールドレンズのベストボディか?(機能解説編)
Reported by澤村徹(2013/12/30 08:10)
オールドレンズファン待望のフルサイズミラーレス機、ソニーα7R/7が登場した。オールドレンズを本来の画角で楽しめる、ベースボディとして理想的なモデルだ。
しかしながら、α7とα7R、どちらを買うべきか。既存のマウントアダプターは流用できるのか。広角レンズ使用時の色かぶりは発生するのか。といった具合に、気になる点も多々あるだろう。
α7R/7はオールドレンズファンのドリームボディなのか否か。画質、機能面、操作性など、多角的に検証していきたい。
マウントアダプターの対応状況
現NEXユーザーの中には、α7R/7への乗り換えを検討している人が少なくないはずだ。そのとき気になるのが、手持ちのマウントアダプターが流用できるのかという点である。
まず、キポン、メタボーンズ、RJカメラといった海外メーカーの従来製品は、おおむねケラレや干渉することなくα7R/7で使用できる。
一方、レイクォール、三晃精機といった国産マウントアダプターは、従来製品の一部でケラレが発生する。これは内面反射防止のフレアカッターが、フルサイズイメージセンサーだとケラレの原因になってしまうからだ。
しかし、両社とも新型マウントアダプターをリリースしており、現行製品についてはα7R/7でケラレなしで撮影できる。両社の対応状況を見ていこう。
まず三晃精機は、フレアカッターを円形から四角状に改良し、フルサイズイメージセンサーでもケラレなしで撮影できるようになった。フレアカッターの裏表は面取りが施してあり、手で触れてもケガをするようなことはない。細かい部分まで気配りした改良だ。
既存製品の簡易再加工も受け付けており、税込4,000円(送料、代引き手数料込み)でフルサイズイメージセンサー対応版に簡易加工してくれる。なお、この再加工は2014年1月末までなので、早めに申し込んだ方がよいだろう。
レイクォールはフレアカッターの形状を見直しに加え、フレアカッターを二層化して徹底した内面反射防止を施している。上側のフレアカッターはレンズマウントのシルバー部分を覆い、下側のフレアカッターはボディの電子端子を隠す仕組みだ。
また、ライカMマウントアダプターのみフレアカッターの形状を他のマウント(一眼レフマウント)と変えている。これは純正ライカのスタイルに近づけるためだ。ライカレンズにこのマウントアダプターを付けて後玉側からのぞくと、フィルムライカの圧板を開けてレンズ後部を見た状態と似ている。レンズマウントのシルバー部分を覆う手法として、フィルムライカのオリジナルスタイルを手本としているわけだ。カメラとレンズを知り尽くした老舗マウントアダプターメーカーならではのこだわりといえるだろう。
なお、同社は旧製品のバージョンアップを行っており、税込2,100円(送料込み)で従来製品をフルサイズ対応版に加工してくれる。
α7とα7R、どちらを買うべきか?
初のフルサイズミラーレスは、ハイエンドモデルのα7R、ミッドレンジのα7が同時リリースされた。オールドレンズのベースボディとして、どちらが適しているか気になるところだ。
両者の主な違いは、α7Rのフルサイズイメージセンサーがローパスレスの有効約3,640万画素であるのに対し、α7はローパス搭載の有効約2,430万画素だ。また、α7Rは集光効率を高めるギャップレスオンチップレンズ構造を採用し、周辺画質を向上している。
スペックから推察すると、α7Rの方が高精細で、周辺部までクリアであることがイメージできる。事実、純正レンズとの組み合わせでは、α7Rの解像感は凄まじく、特に純正ツァイスレンズで撮るとディテールの緻密さは圧巻だ。ただし、オールドレンズ撮影に関してはこの限りではない。
大型イメージセンサーでオールドレンズを使う際、常に問題となるのが周辺部の色かぶりだ。テレセントリック(光の直進性)を考慮していない広角レンズで撮影すると、周辺部の受光が急角度になり、色かぶりが発生しやすい。オールドレンズの場合、フランジバックの短い対称型の広角レンズで発生しやすい現象だ。APS-Cミラーレス機でも色かぶりは発生したので、フルサイズイメージセンサーともなれば言わずもがなである。
そこでさまざまな広角オールドレンズを使い、α7とα7Rで撮り比べをしてみた。結論からいうと、両機ともフランジバックの短い広角オールドレンズではマゼンタかぶりが発生し、なおかつ周辺部で像が流れがちだ。
特に色かぶりに関しては、α7の方が軽微で、α7Rの方が顕著である。これは推測だが、α7Rはギャップレスオンチップレンズ構造を採用しているものの、高画素センサーゆえに画素ピッチが狭く、これが色かぶりに影響しているのかもしれない。
色かぶりの度合いはレンズによって異なるが、フランジバックの短いオールドレンズの場合、α7は28mm以上、α7Rは35mm以上なら実用的な画が撮れる。これよりも焦点距離が短いと、マゼンタかぶりが目立ってくる結果だった。なお、フランジバックの長い一眼レフ用の広角レンズについては、どちらのボディで撮影しても、マゼンタかぶり、周辺部の流れともに、さほど目立たない結果となった。
このように、ショートフランジの広角系オールドレンズを使うならα7が有利という結果になったが、その一方で、解像感の高さについてはα7Rが有利という推測もできるだろう。この点については、ピクセル等倍で見るとたしかにα7Rの方が高解像度だ。イメージセンサーが高画素であることに加え、絵作り自体もコントラストをわずかに抑えめして、階調性を重視した印象を受ける。総じてα7Rの画像の方がていねいな作り込みだ。
ただし、オールドレンズの解像力を引き出すという点についてはα7で十分に目的を達しており、A3ノビ程度のプリントで両者のちがいを体感するのは難しいだろう。α7Rの解像力を引き出すには、やはりデジタル対応した最新レンズが必要である。
これらのことを考慮すると、オールドレンズ撮影に関してはα7で十分に楽しめると結論付けることができそうだ。
なお、以下の作例はすべてF5.6で撮影し、RAWデータをLightroomでストレート現像している。
ライカLマウント
Ultra-Wide-Heliar 12mm F5.6(旧タイプ)
発売から10年ほど経過しているものの、オールドレンズと呼ぶにはまだ若いレンズだ。超広角の例として試写してみた。
現代のレンズだけあって、12mmという超広角の割りに色かぶりは少ない。α7なら画像補正なしで使えそうだ。α7Rでも軽く補正する程度で済むだろう。
M42マウント
MC Zenitar-M 16mm F2.8
ロシア製の対角魚眼レンズだ。一眼レフ用のM42マウントを採用しているので、周辺の色かぶりはほぼ感じられない。
周辺像がわずかに流れているが、これはレンズ側の性能によるものだ。周辺光量も申し分なく、画質面で気になる点はない。
ライカLマウント
GR Lens 21mm F3.5
21mmレンズの例としてGRレンズ21mm F3.5を試してみた。α7R/7ともに周辺のマゼンタかぶりが顕著だ。
このレンズは元々周辺減光が大きいものの、画像両端がレンズ本来の周辺減光とは別に暗くなっている印象を受ける。
コンタックスGマウント
Biogon T* 28mm F2.8
コンタックスGマウントのレンズ群は、α7R/7ではじめてデジタルフルサイズ撮影が可能になった。
そのうちこのビオゴン28mmに関しては、α7だとマゼンタかぶりが軽微で、このまま使っても支障ない実用的な画が撮れる。ただし、周辺像の流れが顕著だ。
ライカMマウント
Summilux 35mm F1.4(第1世代)
ショートフランジ35mmレンズの例として、ズミルックス35mm F1.4初期型で試写してみた。
α7R/7ともにマゼンタかぶりはなく、周辺までしっかりと解像している。α7Rにとって、35mmレンズがボーダーラインといえるだろう。
ライカMマウント
Summilux 50mm F1.4(第1世代)
数あるオールドレンズの中で、繊細なシャープネスに定評のあるレンズだ。
ピクセル等倍で比較すると、α7Rの解像力の高さが実感できる。高描写な標準オールドレンズをメインで使うなら、ベースボディとしてα7Rを選ぶのも悪くない。
レンズ補正アプリで色かぶり補正
前述のとおり、α7R/7でフランジバックの短い広角オールドレンズを使うと、周辺部のマゼンタかぶりが顕著だ。これを補う機能として、PlayMemories Camera Appsの「レンズ補正」がある。1,000円の有料アプリとなるが、周辺光量、歪曲収差、倍率色収差の補正が可能だ。
オールドレンズ用途で特に重宝するのは周辺光量だ。この項目では、周辺部の光量と色かぶりが補正できる。色かぶりは「赤と青緑」「青と黄」が個別のスライドバーになっており、かぶっている色の反対の色方向にシフトすることで補正が可能だ。
今回、コンタックスGマウントのビオゴン T* 21mm F2.8とα7の組み合わせで試したところ、周辺光量を少し明るくして、そのうえで色かぶり補正すると効果的だった。α7R/7で超広角オールドレンズを使うと、レンズ本来の周辺減光以上に周辺部が暗くなりがちだ。色かぶり補正する際は、周辺光量のプラス補正をセットにして調整していくと良いだろう。
レンズ補正の調整は、ライブビュー画面を見ながらスライドバーをシフトしていく。何らかの被写体にレンズを向けて調整するわけだが、被写体の色味が影響するため少々手間がかかる。シンプルに調整したいのであれば、レンズの前に白いプラ板を貼り、自然光下で調整してみよう。周辺減光や色かぶりの様子が把握しやすく、比較的調整しやすいはずだ。
レンズ補正アプリはセッティングをレンズプロファイルとして登録できる。レンズ名を入力しやすい画面になっており、お気に入りのオールドレンズごとにレンズプロファイルを作っておくと便利だ。
また、本アプリはRAW+JPEGでの撮影にも対応している。周辺光量(光量と色かぶり)の調整はRAWデータにも反映されるので、RAW現像派のα7R/7ユーザーも安心して使えるだろう。
レンズ補正アプリによる補正の実際を作例で示す。α7にGビオゴンT* 21mm F2.8を装着し、レンズ補正アプリで撮影した。周辺部のマゼンタかぶりを解消するのが狙いだ。
レンズ補正アプリのセッティングは、周辺光量の「光量」をプラス10補正、周辺光量の「赤-青緑」をマイナス5補正している。周辺の光量を少し持ち上げた方が、色かぶり補正の効果がよく現れる傾向があった。
オールドレンズ使用時の操作性
オールドレンズをα7R/7に装着した際の操作性について見ていこう。
まず使用頻度の高い拡大表示は、シャッターボタン脇のC1ボタンで呼び出せる。一度押すとターゲットエリアが表示され、拡大する場所を十字キーで指定可能だ。
さらにC1ボタンを押すと、α7の場合は5.9倍→11.7倍、α7Rは7.2倍→14.4倍に拡大できる。
シャッターボタン半押しで通常表示に復帰でき、NEXシリーズ同様使いやすい拡大表示だ。
また、ピーキングにも対応し、レッド、イエロー、ホワイトの3色から着色するカラーを選択できる。本機はキーアサインが充実しているので、その他のキーに拡大表示を割り当てることも可能だ。
α7R/7のペンタ部はデザイン的に賛否両論あるところだが、レンズと同一線上にEVFがあり、ファインダーをのぞくという操作がいたって自然に行なえる。EVFで外光環境を問わずじっくりとピント合わせできるのは、オールドレンズのMF操作にとってありがたいファインダー環境だ。
ちなみに、角張ったペンタ部はオールドレンズと思いのほか好相性で、ヤシコンのツァイスやオールドニッコールを付けると、昭和時代のカメラを彷彿とさせる。さすがにオールドレンズ用途を見越したデザインではなかろうが、外観面でもオールドレンズファンを楽しませてくれるボディだ。
本機は大きめのグリップを備え、重量のあるレンズでもしっかりとホールドできる。一眼レフ用オールドレンズを付けた際、このグリップのありがたさが身にしみるだろう。
というのも、α7R/7はボディ側に手ブレ補正を内蔵していないため、オールドレンズ使用時は手ブレに対してシビアな対処が必要だ。高解像度フルサイズモデルゆえに、ちょっとした動作が手ブレにつながる。大型グリップで堅実にホールドすることはむろん、ていねいな撮影を心がけ、ブレのない描写でオールドレンズのテイストを味わいたい。
「実写編」(2013年12月31日公開予定)に続きます