損得勘定で考える差別問題（追記アリ
血液型性格判断は差別、そこに異はない
において、血液型性格判断は疑似科学というだけでなく差別でもあるという指摘がなされ、それを受けていろいろと考察があげられましたにゃ。
血液型性格判断の差別性については、この問題に批判的なスタンスの人においては常識といってよいことだと思われますにゃ。
血液型性格判断を差別問題として考察した最近のブログエントリとしては
などがありましたにゃ。
このあたりの記事で書かれているとおり、「差別は人道にもとる」「差別はやってはいけない」「血液型で人を判断してはいけないんです。それが人間が長年の経験から産み出してきた智慧」
然り。
至極真っ当。
とはいえ、このあたりの議論を読んで僕の脳内に以下のようなことを考えるヒトタチが想定されましたにゃ。
- 「血液型性格判断が正しいとしたら、それに基づいて教育や人事を行うことは合理的。差別がダメというタテマエはともかく、効率や合理性は大事。差別がダメとかいっている連中は、やはりきれい事しか言わない無責任な馬鹿どもだ。」
この手の理屈は某掲示板なんかでも見たことのある理屈だし、潰しておこうかな、と。
ここで批判する対象
だいたい血液型性格判断で嫌な思いをするのはB型者なのは経験則からもみなさんご承知であろう。ネタになるのはB型者なのだ。俺はA型なので差別される側ではないのだが、だからといって無視していい問題でもない。A型は生真面目で神経質などといったイメージを押しつけられるのも不愉快なものだ。
問題はそれだけじゃない。第二次世界大戦中の日本軍をはじめ、企業等でも血液型で人事を行う事例がいくつも出ている。ひどいのになると血液型が職業に合わないために辞職させられた、なんて例もあるのだそうだ。
うむうむ、血液型性格判断が人事などに使われる例がいろいろとあるのは存じておりますにゃ。僕が以前に参加した掲示板の議論では、血液型性格判断に基づく教育を保育園で実践することの是非についてでしたにゃ*1。
ここでは、
- 例え血液型性格判断に科学的な根拠があっても、例にあげられたような人事や教育への直接的な応用は差別だというだけでなく【非合理】である
ということを簡単に論証しますにゃ。
一般的傾向と個人
男女に統計的な体格差・筋力差が明らかにあることについて異議を唱えるヒトはいにゃーだろう。類人猿のなかではヒトの体格的な性差は大きいほうではにゃーのだが、それでも体格・筋力に差があることは否めにゃー。ヒトの体格的な性差はもちろん科学的にも簡単に立証可能ですにゃ。
- ヒトには体格的に明らかな性差が見られる
もちろんここからは、
- 一般的には♂のほうが肉体労働に向いている
を導くことはできるでしょうにゃ。
しかしここから
- 【すべて】の♂は♀よりも肉体労働に向いている
を導くことができにゃーのは、義務教育を終えたよい子にはわかるよね？
性差を含む生物学的な差異というものは、統計的なものであり、一般傾向しかいうことができにゃーわけだ。そして、こうした統計的・傾向的な差異よりも個体差や環境差のほうがはるかに重要な意味をもつわけですにゃ。
別にムツカシイことはなーんにもにゃーのだ。
僕よりも筋力があり、体格のよい♀はゴマンといるというだけの話。
「俺よりも体力のある女なんていねえぜ」
と言いえるのは、世界最高レベルの♂アスリートくらいなものだろにゃ*2。
男脳・女脳というものが本当にあって、♀は数学に向かないということが証明されたとしても*3、その辺の♂よりもはるかに数学の才に恵まれた♀なんていくらでもいますにゃ。
肉体労働の採用において、筋肉ムキムキの♀を採用せず、ガリガリひょろひょろの♂を採用するなんことは、
あるいは
数学的能力を要求される職において、その優秀さは太鼓判をおされている♀を採用せず、凡庸な♂を採用するなんてことは
差別であるということは言うに及ばず、非合理で不経済で端的に頭がワリイ。
教育においてもあてはまるよにゃ。
♂には体育と数学を重点的に、♀には家庭科と語学を重点的に、なんてのは差別であることは言うに及ばず、非合理で不経済で端的に頭がワリイ。数学の才のある♀、料理や語学に適性のある♂はごろごろいるもんにゃ。
ここでは、体格的な性差という明らかに差異のあることを出汁にして、統計的に差異があるとしてもそれを個々の人事や教育に適用することは差別であることのみならず、非合理的でもあると述べましたにゃ。
差別というものは特定の社会集団に対してなされるものであり、もし特定の社会集団に特定の性格的・能力的傾向があるとしても、統計や傾向は個体差・個人差を超えるものではにゃー以上、差別には合理性もにゃーのだ。
結論
- 特定の社会集団に、性格的・能力的な傾向性が科学的に認められたとしても、それは統計的なものであり、傾向性を示すものでしかない
- 個人差・個体差は統計的な傾向性よりもはるかに重い
よって、
- 例え統計的事実に基づいていようとも、差別は非合理的である
もちろん、合理的なら差別してよい、とはならにゃーけどな。
ただ、反差別とか人権思想のもつ合理性というものは、なかなかどうして一筋縄でいくものではにゃーんだよな。反差別や人権思想を、きれい事だとしか思えにゃーお歴々ってのは、「タブーに挑戦する俺、かっけー」と酔っぱらっているだけで、モノを考えたことがにゃーのだろう。
- 統計的な事実に基づこうが基づくまいが、差別は非倫理的であるのみならず、非合理的・非効率的・不経済である
血液型性格判断「も」もちろん、それが科学的に正しかろうがどうだろうが、差別であるうえに経済的合理性もにゃーってこと。あえていえば「工学的」「経営学的」にもダメダメ。血液型を人事に使っていた会社って、よっぽどぬるい仕事をしてカネをとってたんだろね（げらげら。
反差別ってのは、「差別されているヒトタチかわいそ」という問題だけではにゃーのさ。公正で開かれた社会というのは、僕の利益であり君の利益であり、つまりは万人*4の利益である、というアタリマエのお話なのですにゃ。
追記でブクマコメに応答 30日10：55ごろ
うむ、ちと記述が粗かった。
批判的なブクマコメを紹介しつつ補足しますにゃ。
id:Nean
手遊びさんの気分はわかるんだけれど、「合理性」なるものが情や価値観に先んじては存在しないという点が全然理解されていないんぢゃないかと見えるのが気がかりというか、「香り高い」んぢゃぁないかなぁ。うーん。
目的が設定されにゃー限り、合理性なんてものは存在しないというのはソノトオリでしょうにゃ。ここでは、生産性とか経済的効率を目的とした場合の合理性を想定していますにゃ。まあ、生産性とひとくちにいってもたくさんの要素があるものだろうけれど。
id:kei999 社会, 差別
でも「合理性」のみで考えると、個々の能力を見極める時間・能力がない場合、統計的傾向に頼った方が合理的なんじゃないでしょうか？
教育とは適性や能力の選別をするためにあるという側面もありますにゃ。高校まで事実上義務教育化されている日本のような社会で、「個々の能力を見極める時間」がない、ってことはにゃーでしょう。
で、十分に選別の時間があるのだから、「個々の能力を見極める能力がない」無能な選別者には退場いただいたほうがいいわけですにゃ。
id:frsatti ニセ科学, 社会, 差別, tikani_nemuru_M
差別は基本的に異質なモノを分類することに関して（差別者にとって）は合理的なラベリング方法ですよ。非常に大雑把で多少の例外は全て無視するので。ただ、利益獲得の可能性を失うことに関して非合理的である矛盾。
もちろん、「自分さえよければよいので、不当な利益をえたい」というのも確かに合理性ではありますよにゃ。不当な利益の合理性というのは、フリーライダーの合理性といえるわけですにゃ。差別ってのは制度的なフリーライドですからにゃ。
ただ、失われた利益獲得の可能性がでかかった場合には、差別する側にとっても必ずしも合理的といえにゃーこともありえるのでは？
id:chnpk
それは違うよ。優秀な母集団から選別を行うことができるなら、そのほうがはるかに選別コストが安く済むでしょ。
さきほども書いたけど、教育の現場において長い時間と手間をかけて選別は行われていますにゃ。教育機会を均等にして、その結果を重視すればよいわけで、性別や血液型に依存する必要などにゃーだろ。
つけくわえると、「こういう仕事をしたい」「これでメシを食っていきたい」という本人の好き嫌いや希望というのも、適性の大きな要素ですよにゃ。もちろん、本人の希望と能力のミスマッチというものはあるけれど、性別やら民族集団やら血液型よりはよっぽど当てになるんでにゃーの？
id:mahal 権利
id:chnpk氏のような言質を引き出して、「だから、全体最適はナチ」という結論に持ってくためのエントリなのかと勝手に推測してみる
いやいや、ナチのしたことは実は全体最適になってない、という主張ですにゃ。
愚行権を認める以上、愚行を支える社会の生産性も必要ですにゃ。
id:munyuu 社会
体力が必要な職業なら体力測定よりも機械化・自動化に対応できる人材の方が重要。 反差別や人権思想で他人を糾弾している連中が現実社会から乖離している例かな…。
ばーか。
*1:血液型を保育に活用するのは差別か？ - 1128817421 - したらば掲示板
*2:もちろん体力だって一元的に評価できるようなものではないんだけど
*3:そんなことはないと確信しているけど。♀は数学が苦手か？ - 地下生活者の手遊び、♀は数学が苦手か？・補足 - 地下生活者の手遊びなどを参照
*4:差別によって不当に利益をあげているヒトタチを除く
