2024年も残すところ一か月を切りました。
今年、私はあまりにも忙しかったので、ちゃんとワインと向き合えませんでした。そういう時は、気安く買えて、飽きずに飲め、身体にもきつくないワインたちと付き合いたくなり、そんなのばかり飲んでました。大半は無料エリアで読めるので、よかったら読んでみてやってください。
【Clean Skin Riesling "Waipara" 2021】
[2021] クリーンスキン(ノーラベル)リースリング "ワイパラ"
クリーンスキンは、ニュージーランドの匿名ワインをシンプルなボトルに詰めた、なんだかバルク品なワインだ。過去にいくつか試してみた感じでは品種による当たりはずれがあり、しばらく敬遠していた。でも、今年久しぶりに飲んだリースリングはアタリ。リースリングは高級品種といわれるけれども、新世界産の安物も、それはそれでうまく、飽きずに飲める品が多いように思われる。苦みと酸味がしっかりしているおかげかもしれない。デイリーな白ワインとしておすすめ。
【Stellenrust Chenin Blanc 2023】
ステレンラスト シュナン ブラン 2023
今年は南アフリカワインを当たってみようと思い、この、ステレンラストというメーカーを中心に色々と試してみた。で、この白ワインはシュナン・ブラン種という品種でつくられていて、これが南国フルーツの風味満載、パパイヤのような雰囲気すら帯びたワインだったりする。
ワインに詳しい人なら、「それってシュナン・ブランって品種のなせるわざでしょう?」と言うかもしれないし、確かにそうで、シュナン・ブランは一番安い品でも南国フルーツみたいな香りがちゃんとしている。そのなかで、このメーカーの品は価格帯に比して舌ざわりが良く、これよりもうちょっと安い同品種のワインたちと差別化できている。ワインにおいて、香りや味が大事なのはもちろんだけど、舌ざわりやのどごしだって大切。この価格帯でそれをここまでカバーしているのは偉いと思ったのでリコメンドします。
【Stellenrust "Mothership" Chenin Blanc 2022】
ステレンラスト アーティソンズ マザーシップ シュナンブラン 2022
で、同じメーカーが作っている同品種の格上ワインがこれ。その名も「マザーシップ」という、エイリアンの母船みたいな名前がつけられている。これと通常品を飲み比べると、「ワインの価格差に何が反映されているのか」がわかりやすいと思う。比べると、舌ざわりが良いだけじゃない。重心の低い高級車に載っているような感覚がわかると思う。舌ざわりが良いくせに酸はいっそう鋭く、果実味もより豊かで、贅沢感が伝わってくるはず。
この、ステレンラストの無印シュナン・ブランとマザーシップとの飲み比べは、ワインの品質を理解する典型例になると思うので、ワインの品質の違いを疑問視している人は、両方を買い揃えて比較してみるといいと思う。みんなで飲むなら二種同時に、一人でやるなら、はじめに2-3日かけて無印を飲んで、その次にマザーシップを2-3日かけて飲むと良いように思う。
【Stellenrust Chenin Blanc Brut Spumante Magnifico (N.V.)】
ステレンラスト シュナン ブラン スパークリング ブリュット NV
その同じメーカー、ステレンラストはスパークリングワインも作っていたりする。この品もかなりいけている。菖蒲やヒヤシンスみたいな青い花の芳香に、梨ジュースみたいな淡い甘さ、クターっとした飲み心地が伴い、ぜいたくざんまいな感じだ。この価格帯でここまで揃っているスパークリングワインはそれほど多くない。
ちなみにこのワインは「スプマンテ・マグニフィコ」を名乗っていて、名前から言っても、目指しているのは上級スパークリングワインであってシャンパンではない。つまり、シャンパンに期待されるような気取りや重厚さはこのワインの目指すところではなく、イージーに気持ち良く飲めるところに焦点が合っていて、実際、とても気持ち良い。シャンパンに寄せたスパークリングワインが欲しいなら、グラハム・ベックのスパークリングワインか、シャンドン・ブリュットあたりを買ってください。これはそういうワインではありません。
【Chateau Saint Bonnet Medoc 2015】
シャトー・サン・ボネ メドック 2015
さて、ここからは安ボルドーに。とはいってもこのワイン、ブルジョワ級といってボルドーのなかでも少し良いクラスなのだけど、価格は控えめ。しかし2015は強いヴィンテージで、そのおかげか、かなりうまかった。安ボルドーにありがちな貧相さや内向性がかなり改善している。良ヴィンテージ年って、高級銘柄を平均より高い価格で購入するのもいいかもしれないけれど、お手頃品はたいして値上がりするわけでもないのに欠点が減っていて優れていたりするので、そこを狙うのも楽しい。
でもって、このクラスの安ボルドーでも、年によって飲み心地の雰囲気はそれなり変わる。あまりワインにお金をかけたくないけど、ヴィンテージごとの作柄の違いを感じ取ってみたい人は、ボルドーのブルジョワ級のワインのなかから気に入ったものを見繕って、毎年買って毎年飲んでみると面白いかも。私はやってます。
【Chateau Griviere Medoc 2015】
シャトー・グリヴィエール
こちらもブルジョワ級のワインながら、値段はごく控えめ。2015年もボルドーは良い年だったと聞くけど、そのためか、ボルドーの赤ワインの紳士的な顔立ちに人懐こさもいくらか加わって、バランスの良いできばえになっている。で、こちらはメルローが主体のワインだからか、すこーしピーマンみたいな香りもある。メルロー主体のワインがお好きならこちらがいいんじゃないだろうか。このワインは、記事を下書きしている段階では2000円を切っていたけれど、最近、値上がってしまった。さもありなん、と思う。
【Antonin Rodet Saint-Amour 2021】
アントナン ロデ サンタ ムール 2021
この品は、「やまや」で売られていた安いクリュ・ボジョレー。クリュ・ボジョレーに限らず、肩書きに比して安いワインは出来栄えにムラがあったり、なにかしら欠点を伴ったりするものだけど、このワインはムラがあるというより小粒、でも、小さなところでまとまっていて、ボジョレーヌーボーよりずっと飲み甲斐があった。ヌーボーではないボジョレー、特にボジョレーヴィラージュやクリュ・ボジョレーにはまだまだ知られていない掘り出し物がある気配があるので、たいしたことがないと決めつけず、時々トライしてみたいと思いました。
【Spinelli Montepulciano d'Abruzzo 2022】
モンテプルチアーノ・ダブルッツォ / スピネッリ
値段の安かったモンテプルチアーノ・ダブルッツォ。このジャンルをしばらく飲んでなかったせいもあってか、抜群にうまかった。ワイン通が喜ぶような複雑なニュアンスや立体感は無い。そういうのを全部無視し、飲みやすさとフレッシュ感に全振りしたような潔いワイン。デイリーワインとしてはつくづくよくできていて、アルコール度数がやや低いのも良い。合わせる食事について頭を悩ませることもないので、ただ美味くて新鮮なワインが飲みたいだけなら、モンテプルチアーノ・ダブルッツォはやっぱり良いものだと再認識した。なお、このスピネッリというメーカーのモンテプルチアーノ・ダブルッツォには箱で買えるタイプ(たぶん真空パックだろう)があるので、デイリーワインが一種類あれば良い人には選択肢かもしれない。
【Stellenrust "Old Bush Vine" Cinsaut 2020】
ステレンラスト オールド ブッシュヴァイン サンソー 2021
南アフリカのサンソーという品種からつくられた赤ワイン。ちょっと独特だけど余韻がとても長く、舌触りもなめらか。しかも鎮静力があるタイプのワインで、飲んでバカ騒ぎするような品ではなく、しみじみとした気分になれる。中堅価格帯の赤ワインとしてはよくできていて、こういう品種にも目配りしないと駄目だなと思った。しいて問題点を挙げるなら、そんなに有名な赤ワイン品種ではないので、同じ品種同士で飲み比べるチャンスが少なそうなところ。知られていないからこそ、逆にお値打ちのままだとも言える。
この品も、前半で紹介したステレンラストというメーカーの品で、してみれば今年の私はステレンラストに惚れ込んだ一年だったってわけだ。ここが南アフリカ産中堅価格帯ワインの入口になろうとしている。ステレンラストは幾つかの楽天ワインショップが商っているので、興味のある人はどうぞ。
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※ワインは20歳になってから。種々の健康を害するおそれもあり、節度ある飲み方を心がけてください。
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