國學院大學の博物館で、アイヌ文化に関する展示を見に行ったのだが、アイヌ文化への強い関心をよそに、常設されていた折口信夫の再現された書斎やらその生涯を映したビデオ映像やらに心を引き寄せられてしまった。折口信夫は「言霊」という古代日本の観念を研究した代表的な民俗学者であり国文学者だが、単に古代的信仰として扱っただけではなく、それを近代社会・現代社会における言葉の力の問題と結びつけようとしたところに、画期的な視点があったように思う。折口にとって「言霊」は単なる迷信や古語ではなく、祝詞や歌が共同体の結束を強め、日常の言葉にも人の心や行為を変える力がある、と考えていた。折口は詩歌や芸能を「言霊を生かす技…