人にたたりをするといわれる、死霊・生き霊。変化(へんげ)。妖怪。
*「もの」=鬼。怨霊。
*漢字では、「物の怪」や「物の気」と書く。
人間の体に取り付いて、病気や不幸をもたらす厄介なもの。
平安時代の中頃になってくると、度々登場するようになり、場合によっては死に至ることもある。
物の怪の正体には、”生き霊”*1や”死霊”などがある。
多くは、”怨恨によって出現する怨霊”が物の怪となり、取り付かれて祟られると、災厄が起こると考えられた。
治療(退治)には、僧侶の加持祈祷によって、物の怪を当人から分離させて移らせるための「寄りまし」が不可欠となる。
物の怪を移す対象(よりまし)には、主に、当人(病人)に仕えている身分の低い子女などが選ばれ、
”よりまし”の口を通して、物の怪の言葉を聞くことが出来る。
験者の物の怪調ずとて いみじうしたり顔に 独鈷や数珠など持たせ
蝉の声しぼり出だして誦みゐたれど いささか切りげもなく
護法もつかねば 集り居 念じたるに 男も女もあやしと思ふに
時のかはるまで誦み困じて さらにつかず 立ちねとて 数珠取り返して
あな いと験なしやと うち言ひて
額より上ざまにさぐり上げ あくびおのれよりうちして 寄り臥しぬる (*太字は験者の発言)
胸 もののけ 足のけ
はては ただそこはかとなくて物食はれぬ心ち
*1:*生き霊(いきすだま)は、特に女性に多く見られる。*ただし、本人には自覚がないことが多い。