こんな科学哲学書の入門書があれば良いと思っていました。
学説の区分をはっきりさせて、平易な文章でそれぞれの説の長所と短所を要約した、
授業のサブノートのような著書です。
しかし、実際に読んでみると学説の区分がはっきりしたものの、学説の由来や学説の
流れがわからず、しっくりきません。「なぜその議論に?」という疑問です。
とくに科学的説明の部分(6章)では読みながら反論で頭が埋め尽くされて、説明に
納得がいきませんでした。各説の由来から説き起こす流れがないとやはり限界が
あるかと思います。
本書を授業のテキストとして用いた場合には、その空白は講義により埋められる
でしょうが、本書のみでは困難であると思います。そこで、議論の流れの分かる
科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)や
科学哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ)を再読しました。
両書とも分量は多くなく、議論の流れを重視していて平易な文章で読みやすいです。
科学的説明、原因、法則、確率へと一貫した視点でつながる流れは、構成的な面で
なるほどと思いました。因果論を説明の論理と位置づけるのは少数説かもしれません
が、因果から必然性を捨て去ればこの考えは当然であるようにも思います。
ただし、初歩的な知識をある程度押さえてから読むとその良さが生きるような感じが
するものの、要約された解説だけを初学者が読んでちゃんと理解できるのかなという
部分が少なからずありました。確率論の哲学、量子力学の哲学、生物学の哲学まで
触れていますが、量子力学以下は初学者が理解できる内容とは言いがたいです。
そこで巻末の読書案内ですが、こうなると科学哲学のオイシイところをつまみ食い
しようとした「理系人」がこの方向にのめり込んで脱線してしまうのではないかと
心配になります。
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理系人に役立つ科学哲学 単行本 – 2010/6/10
森田 邦久
(著)
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「哲学を実践に役立てる」という視点で書かれたユニークな科学哲学入門であり,科学哲学と科学者を結ぶ画期的な試みである.推論って? 観察って? 説明って? そもそも科学って? 科学者が無自覚に行っている「いつもの活動」を哲学的に見つめ直してみればきっと得られるものがあるはず.そして何よりおもしろい.さあ,理系人もテツガクしよう.また,初めて科学哲学に接する人にとっても「科学とは何か」を考えることができる格好の一冊となっている.
- 本の長さ268ページ
- 言語日本語
- 出版社化学同人
- 発売日2010/6/10
- 寸法15.1 x 1.9 x 21 cm
- ISBN-104759814329
- ISBN-13978-4759814323
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登録情報
- 出版社 : 化学同人 (2010/6/10)
- 発売日 : 2010/6/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 268ページ
- ISBN-10 : 4759814329
- ISBN-13 : 978-4759814323
- 寸法 : 15.1 x 1.9 x 21 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 49,337位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,744位科学・テクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2012年7月3日に日本でレビュー済み
- 2014年5月30日に日本でレビュー済み■ 「反証可能性というのは情報の価値ともかかわっている」として、それを例を使って解説しているのですが...
「たとえば、いま、太郎と花子が長年交際をしていて非常に仲もよいとしよう。
そして、次郎は花子とほとんど口もきいたことがないものとしよう。
... という前提から
「太郎と花子が結婚した」を推測するのは容易であり、それゆえこの情報がまちがっている可能性は低い。
しかし...「次郎と花子が結婚した」という命題はまちがっている可能性が高い(反証可能性が高い) 」
ちがいます。
「太郎と花子が結婚した」と「次郎と花子が結婚した」の「反証可能性の高さ」は同じです。
詳しくはこちらの、ブログ「遅読猫の毛玉」の記事↓
[カール・ポパーも草葉の陰で嘆息 ― 森田邦久著『理系人に役立つ科学哲学』の「反証可能性」のダメダメ解説]
■ 「ヘンペルのカラス」の解説も 全くいい加減...
「もしカラスが100万羽いるのに対し黒くないものが 1000 しかなければ、
(「全てのカラスは黒い」ではなく)逆に対偶「黒くないものはカラスではない」を調べたほうが効率的なのである」
そんな訳ありません〜
「白い紙を観察することによって「カラスは黒い」という命題を確かめることができたということだ」
そんなアホな〜
「たとえば、世の中にカラスが1000羽しかいなかったとすると、
100羽のカラスを調べて黒いとわかれば、
この命題(「全てのカラスは黒い」)は 1/10 の確からしさをもつことになる」
なんじゃそりゃ〜
詳しくはこちらの、ブログ「遅読猫の毛玉」の記事↓
[ヘンペルのカラス 森田邦久著『理系人に役立つ科学哲学』のヘンテコ解説]
■ 3囚人問題を間違えて、変な言い訳しています。
おそらく本書は、3囚人問題を間違えてしまった、日本で、いや、世界でも唯一の本でしょう。
詳しくはこちらの、ブログ「遅読猫の毛玉」の記事↓
[3囚人問題を間違える:森田邦久著『理系人に役立つ科学哲学』の場合]
- 2010年6月16日に日本でレビュー済みAmazonで購入●タイトルに反して、どのように理系人に役立つのか残念ながらあまり実感できなかった(いちおう科学者なのだが…)。科学にも、科学哲学が深く関わる科学と殆ど関係ない科学があるのではないかと思ってしまった(そう思いたくはないのだが…)。
●「説明」や「原因」などの科学概念を哲学的に突き詰めようとすると、どうやってもスルりと逃げてゆくのは面白い。そう考えると逆に、科学者どうしがこうした捕らえ所のない概念を(哲学抜きで)ほぼズレなく共通了解していることに驚きを覚える。
●巻末の「量子力学の哲学」は私には難しくて理解しきれなかったが、「生物学の哲学」は上っ面を無難に撫でただけのように感じられた。私の量子力学の知識が足りなすぎるのか。
●「役立つ」かどうかを問わなかった方が、素直で丁寧なよい科学哲学入門書になったのではないかという気がしないでもない。
- 2010年6月28日に日本でレビュー済み『理系人に役立つ科学哲学』という書名には、「理系の人にこれを読んで役立てて欲しい」という意味だけでなく、「理系人つまり科学者にとって有用な科学哲学とは何なのか」という意味も含まれるのであろう。本書では、科学哲学の基本的な議論をわかりやすく紹介しながら、随所で、「役に立つ」という視点に立ち戻ろうとする意志を見せる。それは、「科学に役立てよう」という提案であると同時に、「役に立つ科学哲学とはなんなのか」という「メタ科学哲学」でもある。もちろん「科学哲学」がハウツーのようにすんなり科学に役立つことは難しいだろう。だが、その視点を欠いては「科学哲学」は存在基盤を失うのではないか。そのように科学哲学からの側から見ても価値ある1冊だと思うが、もちろん科学者にとっても必読書である。科学のふだんの行いを省みるような視点を、もっともっと科学者自身がもつべきだと思う。与えられた枠の中で動くだけならばそうしたものは必要ないかもしれないが、それでは飛躍もないだろうし、何より危険である。難しいことは後回しにしても、本書のところどころに見られる、どきっとするような痛快な実践的提案だけでもぜひ読んでみてはどうだろう。
- 2014年9月19日に日本でレビュー済み実験を行ったり、その結果をまとめたりするときに、
どう冷静に分析するか、実験が正しいか、
を考えるときに、知っておくべきことが書かれていると思います。
大きな問題を解決するために、原因を分析しようとしたときに、
要素を切り分けて、仮説を立てるのか?
仮説に基づいて予測したことが実際に問題の原因であるのか?
がとても大切になります。
この本では、仮説と予測の違いが細かく説明されていてわかりやすいです。
すべてを理解するのは難しいですが、
始め5章分のエッセンスは理解していないことが、
技術開発において、まわりと話がかみ合わない原因のような気がします。
- 2011年10月16日に日本でレビュー済み網羅的に各哲学理論が説明されているので、理系学生にとって一冊持っておくとよいかもしれない。
ただ、164〜165頁、170〜171頁で、有名な3囚人問題を題材としてベイズ確率を説明しているが、説明がわかりにくい。看守から死刑になる囚人の名前を聞いた後に、自分が死刑になる確率は直感的に1/2になる(当初は2/3)として、これをベイズ確率の計算により確認したとしているが、そうなるだろうか?
また、165頁の5行目に、「この看守の情報(注:死刑になる囚人の名前)は、客観的な情報をなにも変えていない。」とあるが、これは誤りと思われる。