「予告」は未来の自分を縛る? モチベーションのコントロールの難しさ

2006/05/28

日曜コラムです、こんばんは。
 
はてなブックマークで「あとで書く」というタグをよく見かけます。
 
これは文字通り、対象の記事に何かひと言言いたいことがあって、
「これに関する記事をあとで何か書きますよ~」という意思表示です。
私の記事でも、ブクマして頂いた際にときどき、この「あとで書く」タグを
付けていただくことがあります。そんなとき私は、
 
 あとで書くキター! wktk
 
ということで、「あとで実際に何が書かれるのか」を楽しみに待っていたり
します。ところが、ところが、この「あとで書く」タグは、結構な確率で
 
 あとで何も書かれなかったりします。
 
えー、放置プレイですか 。・゚・(ノД`)・゚・。
 
「あとで書く」という宣言に拘束力なんてあるハズがありませんし、
そもそもこの「あとで書く」という意思がどの程度の強い気持ちを持って
書かれているのかはわかりませんが、少なくとも、私が自分で確認したもの
を含め、かなりの数の「あとで書く」タグが実際に何も書かれないまま、
ひっそりとその役目を終えているのは間違い無さそうです。
 
ときどき「あとで書くかも」というタグも見かけるようになりました。
「こするカモ保険」みたいでGoodです(古い)。
 
 
さて、今回は別に「あとで書く」といったからには何か書け!
というお話をしたいワケではもちろんありません。
 
「あとで書く」と書かれた方は、そのときは確かに何か言いたいことが
あったのでしょうし、それがちょっと時間が経ってみると
「やっぱり言わなくてもいいや」な内容であったり、
「書くのマンドクセ」という気分になることもあるでしょう。
 
そんな意味もあって、私は結構前から自分自身への戒めも含めて
 
 「どんなに自信があることでも、
  予告なんてものは滅多にするもんじゃあない」
 
というルールみたいなものを作って守るようにしています。
どんな小さなことでも、「予告はそれだけで一大事」なのです。
 
 
私は趣味で音楽制作をしていたことがありますが、絵描きでも、小説書きでも、
「次回は○○な作品です、お楽しみに!」と宣言してしまったとき、
あとでその宣言を後悔したという経験を持つ方は少なくないでしょう。
 
ブログでもそうですが、アマチュアな活動に於いて最も大きな原動力とは
その時その時の「気持ちの高ぶり」のような曖昧な存在です。
「何でもやって良いよ」と言われれば、いろいろ試してみながら
今一番ウマくいきそうなネタを膨らまして結果に繋げることができます。
 
ところが、ひょんなことから事前に「予告」をしてしまった瞬間、
あなたはそれがウマくいきそうかどうかに関わらず、
 
 その予告内容に沿ったリザルトを捻出しなければ
 
ならなくなります。
 
これが曲者なのです。なぜなら、予告内容が決定した瞬間、
あなたの頭の中に自然と湧き上がってくる有望なアイデアのうち、
 
 予告内容に沿っていないものが当面はすべてムダに
 
なってしまうからです。
 
せっかく面白いことを思いついたのだから、ぜひそれをやってみたい、
予告した内容よりも絶対面白くなるに違いない、そう思っていても、
律儀な人は予告内容のほうを守ろうとするでしょう。その結果生まれてくるのは、
モチベーションの低い状態で無理矢理搾り出したような成果物です。
 
逆に、たった今思いついた面白いコトのほうを優先したらどうでしょう。
面白いモノを作り出せた代わりに、その人につきまとうのは、
「予告内容を放り投げてしまった」という軽い不名誉です。
気にしなければ良いのですが、それはそれでやはり気になってしまいます。
 
創作に於いて最も重要なのは、現在のあなたの気持ちがどう高ぶって
いるかであり、「未来のあなた」の気持ちは、同じあなたであっても、
「今のあなた」からは予測しようがありません。
 
「あとで書く」も含め、予告という行為は、よほどの自信や前準備が無い限り、
未来のあなたにとって小さくない足かせとなるかもしれないのです。
 
 
もう1つ、似ているようでちょっと違うお話もしておきましょう。
私はときどき、こんな表現を使います。
 
 「アイデアは、言葉に出すと魔法が解ける」
 
面白いことを思いついたとき、そのアイデアを練ってまとめていくのは
実に楽しい作業です。しかし、それを実際に形にする前に公言することは、
 
 自尊心を中途半端な段階で満たしてしまう
 
という意味で、逆に最終目標に辿り着く道のりに自らハードルを置いて
しまう結果になりかねません。平たく言えば、思いついたアイデアを
公言すると、「言っただけで満足して」しまう可能性が極めて高いのです。
 
「メガとんトラック」にしろ「あまとも」にしろ、
 
 (1)○○を△△にしてみたら面白いと思いました。
 (2)そこで作ってみたのが××です。
 
という(1)と(2)のステップは、常に同時に公開してきました。
そうでもしないと、(2)を作るモチベーションを保ち続けられないからです。
 
先にアイデアを公開してしまうと、その現物を最初に作るのは自分では
なくなってしまうかもしれません。でも、アイデアを公開した時点で、
「自分のほうが先に思いついていたんだゼ!」という意味の無い自尊心が生まれ、
それだけで十分満足してしまう可能性があります。
 
いずれにせよ、思いついたアイデアなんてものは、歴史を振り返ってみれば
純粋なオリジナルなんてワケはなく、どこかの誰かが何度も思い付いて
いるようなネタばかりである可能性が高いのでありますが、そこはそれ、
 
 うわー、オレさま面白いこと考え付いちゃった!
 
という良い意味での 勘違いモチベーション を、如何に殺さずに成果物
という最終段階まで辿り着けるかどうかが、とっても重要になってきます。
 
「言葉に出すと魔法が解ける」というのは、つまりそういうコトです。
言葉に出すことによって、本当に辿り着くべき「実現」という段階より前に、
心の中にあった大切な「モチベーション」が雲散霧消する可能性があるのです。
 
 
「予告をするな。未来の自分の首を絞めることになる。」というお話と、
「アイデアは実現する前に公言すると、中途半端に満足してしまう。」というお話は、
互いに似ているような、ちょっと違っているようなお話ですが、どちらも、
 
 何かを成そうとするときは、モチベーション維持を優先せよ
 
という意味ではよく似ています。前者は気持ちの高ぶらない部分で成果を要求されること
の辛さを、後者は気持ちの高ぶりが外気に触れることで冷却されてしまう例を示しています。
 
創作活動でもブログでも、何かしらのアウトプットを出す行為に於いては、こうした
「モチベーション・コントロール」のことを意識して行動してみるとよいかもしれませんね。


2006/05/28 [updated : 2006/05/28 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




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hejihogu 2006/05/29
勢いは大事!
hatayasan 2006/05/29
「アイデアは、言葉に出すと魔法が解ける」有言実行より不言実行のほうがかっこいいと自分なんかは思うなあ
kamisa 2006/05/29
不言実行あるのみ!や、やらなきゃいけないことがある時は、有言実行で自らを奮い立たせるのも良いと思いますが。
yzatkatamayu 2006/05/29
予告して満足ってあるある
webmugi 2006/05/29
 [ずーっと][後で書く][かも]
moto_hi 2006/05/29
”「アイデアは、言葉に出すと魔法が解ける」”
memoclip 2006/05/29
小出しにせずに、一気に吐き出せ。
inflorescencia 2006/05/29
「言葉に出すことによって、本当に辿り着くべき「実現」という段階より前に、心の中にあった大切な「モチベーション」が雲散霧消する可能性がある」
fukken 2006/05/29
予告で満足して、実行しなくなってしまう、という話//予言してしまう事で、自分にプレッシャーをかけるという視点が抜けている
mind 2006/05/29
「自分のほうが先に思いついていたんだゼ!」と意味無い自尊心が生まれ、それだけで十分満足してしまう可能性 ――予告して、期待を醸成して、期待を裏切ると、信頼が低下する。不渡り禁止! 忘却禁止!! 脳漏れ禁止!?
fmnaka 2006/05/29
あるある!!!!
lifehacks 2006/05/29
やる気の持続をセルフコントロールのみで成すのは結構大変、まぁ、こまめにフィードバックされる環境を準備しろよってことかなん?
solailo 2006/05/29
アイデアを実際に形にする前に公言してしまうと、自尊心を中途半端な段階で満たしてしまう事がある
americanboss 2006/05/30
予告っていうか、タスクのメモとしてのタグ付けなんだけど。俺の場合は[積み]タグで後で読むもの積んでる。
rokujyou 2006/05/30
アイデアは口に出してはいけないのはなぜか。その答え。
hiroakiuno 2006/05/31
「あとで書く」と「あとで書くかも」
matsunaga 2008/06/13
あとで書く
webmarksjp 2008/07/12
言葉
ortica 2011/06/10
[h:keyword:http://b.hatena.ne.jp/hotentry/20060529][b:t:あとで書く]
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▼ コメント ▼

No.2803   投稿者 : D   2006年5月29日 10:07

なるほど、たしかにそうかもしれず。


No.2893   投稿者 : zero-52   2006年6月 4日 07:42

そうですね。私も慎重になりますよ、予告。
周辺の期待とか考えると、プレッシャーにもなりますし。
何も期待されないと、それはそれで寂しいものがありますが。


No.3100   投稿者 : モフモフ   2006年7月 2日 16:00

ブログ、最近読み始めました。
このエントリーはすごく面白いですね。

僕は、この手の「言葉にしてしまうことでアイデアが逃げていく」状況を
「『ミニオレ』を消費してしまう」と呼んでました。
ネットでの書き込みや友人との会話などで、ちびっちゃい自分の分身が、
自分の代わりにちょっとだけ注目を浴びるだけで、アイデア実現への
モチベーションそれっきりどっかに消えてしまう…。

リンク先は、「ミニオレ」に絡めて、ネットでの創作活動について
昔書いた卒論です。
やっぱり、アイデアは黙って実現させてから、後付けで語るもんだと
つくづく思います。自戒を込めて。

モチベーション維持の力は、成功を収めるためには、アイデアや才能や運
よりも、一番大事な条件かも知れませんね。



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