投資で1億円超の資産を得る「億(おく)り人」が話題だ。仮想通貨長者を指すことが多いが、アベノミクスに乗り、株式投資で「億り人」になる人も増えている。中小株投資で年収300万円から4億円の資産を持つに至った、ある億り人の道筋をリポートする。
<span class="fontBold">www9945(仮名)さん</span>(50代)<br /> 新卒2年目の1993年から株式投資を始め、25年間で約4億3000万円の資産を築く。投資の考え方やノウハウを伝えるツイッターやブログが人気。<br /> Twitter:sp500500<br /> ブログ:<a href="https://plaza.rakuten.co.jp/www9945" target="_blank">https://plaza.rakuten.co.jp/www9945</a>
www9945(仮名)さん(50代)
新卒2年目の1993年から株式投資を始め、25年間で約4億3000万円の資産を築く。投資の考え方やノウハウを伝えるツイッターやブログが人気。
Twitter:sp500500
ブログ:https://plaza.rakuten.co.jp/www9945

 食品メーカーの営業担当者だったwww9945さん(仮名)が株式投資を意識したのは、新卒1年目の1992年、雑誌で経営評論家、邱永漢さんのインタビュー記事を読んだのがきっかけだった。 「『株は経済を先読みする勉強になる。しかも儲かる』と書いてあったんです」。

 大学時代は将棋部に所属するなど、もともと奥が深いゲームが好きな性格。俄然興味が湧き、生活を切り詰めて1年半で100万円を貯め、翌93年に投資をスタートさせた。

 当初の目標は資産1億円。「それだけあれば、配当利回り5%で年500万円の収入になる。たとえ会社を辞めても暮らしていけると考えました」。毎年100万円以上を追加し、総資産ベースで年10%増を実現すれば、13~14年で1億円を達成するという青写真を描いたが、当初の目論見は大きく外れることになる。

10年目でプラスマイゼロ。時間だけが経過

 最初に購入した宇部興産と北陸電力の2社の株は、ともに下落し、損切りを決断。その後も一進一退の成績が続き10年が経過。2002年の段階で総資産は1000万円に達したが、投資総額(元手)も1000万円でプラスマイナスゼロ。その後も目立つ成果はなく時間だけが過ぎていった。ちなみに、仕事は続けていたが、営業が肌に合わず、清掃会社の事務職に転職。そこでの年収は300万円だったという。

 流れが変わったのは「郵政民営化法」が可決、成立した05年。日経平均株価が急上昇し、これまでの停滞が嘘のように資産は右肩上がりで増え、05年末には4500万円、06年1月には5000万円超えを達成した。

資産半減、ショックで動けず

 ところがその直後に起きた「ライブドアショック」を期に相場が低迷期に入り、08年秋に起きた「リーマンショック」で大きなダメージを被ることになる。

「最大5200万あった資産が2666万円になった08年11月2日は忘れられません。『オレは今まで何をしていたのか』と、全身から力が抜け、しばらく動けませんでした。株をやめたいと思ったのは、この1回きりです」

 しかし、今振り返れば、この日が資産の大底だった。「不況時に伸びるのでは」と、格安食品スーパーの株に資産の半分を集中させ、読みが当たって資産は急回復。以降は年ベースで1円も目減りすることなく、12年には「億り人」になった。

「この経験から、己の感情は相場と真逆にしないといけないと学びました。好調な時ほど慎重になる必要があり、逆にやめたい時は、大きなチャンスがどこかに転がっているということです」

 資産が半減したどん底期、会社は大きな存在だったという。「毎月必ず入ってくる22万円の給与は精神的にありがたかった。また、株の勉強をしていると経営側の視点で考えるようになるので、自分がもらっている給料の額面に文句を言う気は起きませんでした」。

ベトナムに期待する理由

www9945さんの成功ルール
www9945さんの成功ルール

 ETF(株価指数連動型上場投資信託)などの安定した金融商品よりも、大きな値動きがあり、自分の知識と嗅覚が生かせる中小型株が好み。国内の上場企業の社名と事業内容はほぼすべて頭の中に入っており、新規銘柄も日々チェック。社会の変化を感じ取り、一歩先を読んで「今後伸びそう」と感じる銘柄を選んで投資をしているという。1銘柄当たりの平均保有期間は1~2年。株価が10%下落したら売り、次の成長株を仕込むのがルールだ。

 資産の約3割は外国株で、今、特に注目しているのがベトナムだ。「ベトナムは、総人口に対する生産年齢人口の割合が2020年、ピークに達する。それに合わせて株価が大きく上昇するはずです」。
 資産2.3億円を達成した14年に会社をやめ、今は専業投資家としての毎日を送る。

親兄弟に「生前贈与」

 現在の資産は4.3億、配当収入は900万円に達する。「たとえ今、“リーマン級”の大暴落が来て資産が半分になったとしても、1人で生活していくのに十分な2億円は残る」という計算から、投資家人生に1つの区切りがついたと感じている。信託銀行と契約して、親兄弟や親戚に年間110万円ずつの「生前贈与」を開始した。

投資総額2000万円弱が21倍超に!
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資産ポートフォリオ
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 日頃の生活では贅沢はしない。昨年は国内外に8回旅行したが、安いホテルに泊まるなどして旅行代を総額130万円に収めた。住まいは会社勤めの頃から変わらない家賃5万円の公営住宅だ。物欲は特になく、腕時計もふるさと納税の返礼品を愛用する。飲食も控えめ。「私にとってのおいしいものは株主優待。そんな生活に心から満足しています」。

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