2014.03.06追記: 2013年を振りかえるエントリを書きました!
Facebookページを始めてから1年後にどうなったのか気になる方はこちらもどうぞ。
はじめに
僕のブログをよく読んでくれている方はご存知かと思いますが、僕の妻は去年から兵庫県西脇市でCoupé Baguette(クープバゲット)という小さなパン屋さんをやっています。
1ヶ月ぐらい前にちょっと訳あって店のFacebookページを開設しました。
今回はFacebookページを開設した背景やその効果などをまとめてみようと思います。
Coupé Baguetteの前提知識
妻のパン屋については、以下の前提知識があると話がより分かりやすいと思います。
- 妻が家事や育児の傍らパンを作っていることもあって、営業日は金曜日と土曜日のみ
- 小さなパン屋なので、完全に妻が一人でやっている。他の従業員はいない
- 自宅の敷地内に店舗を建てている
- 店頭に並ぶパンの種類はその日によって変わる
- 開店前にその日販売するパンを全部焼いてしまう。なので、売り切れるとその日の営業は終了する
- 僕(夫)はソニックガーデンという会社で働くプログラマ
困っていたこと
ありがたいことにお店はかなり繁盛していて、開店1〜2時間で完売終了となることがよくありました。
一番速いときは15分ぐらいでなくなってしまった日もあります。
それはそれで大変ありがたいのですが、以下のような困った問題もありました。
- 開店直後に「売り切れる前に買っておきたい」というお客さんが集中しすぎてしまう
- 日によってはすぐに売り切れない日もあるが、開店後1〜2時間するとお客さんが「たぶんもうないだろう」と思ってあまり来なくなる
なので妻としては「もっとゆったりとお客さんにパンを選んでもらいたい」「すぐに売り切れない日は"まだありますよ"とお客さんに知らせたい」という希望がありました。
ボツになった解決案
「インターネットでお取り置きシステム」の開発?
最初妻から出た提案は「インターネットでパンの取り置きができるようにしたい」というものでした。
取り置きはそれまで電話のみだったのですが、インターネットから取り置きができるようになれば、お客さんも気軽に取り置きができて、開店時の混雑が解消されるのではないかと考えたからです。
イメージ的には病院の「診察予約システム」みたいな感じで、店に行かなくても自宅から買いたいパンをキープできます、みたいなシステムを想像してたんだと思います。
「だから作って〜♪ プログラマなんだから作れるんでしょ?」と妻にお願いされたのですが、僕としてはすぐに「うん」とは言えませんでした。
「そんなシステム作ってる時間なんてないよ!!」という理由もあったのですが(苦笑)、それよりも以下のような理由で「インターネットの取り置き」はお客さんにとっても、妻にとってもあまりメリットがないと思ったからです。
- わざわざインターネットで買いたいパンに加えて自分の名前や電話番号を入力するのはお客さんにとって大変
- 頻繁にパンの残数を更新しないと、「取り置きしたはずのパンがない」という問題が発生してしまう
- キーボードを叩いてお客さんとやりとりするのは妻も大変。電話の方がまだ楽そう
- 接客が忙しいとインターネット経由で取り置きが入ったことに気付かない、または対応が遅れてしまう恐れがある
僕(システムを作る側)にとっても、「PCだけでなく、スマホやガラケーからの取り置きも考慮する必要が出てきて、かなり大変なんじゃないか」という懸念がありました。
というわけで、「インターネットの取り置き」は結局不採用となり、取り置きの方法も従来通り「電話のみ」になりました。
メルマガ?
じゃあメルマガで営業日のリアルタイムな情報をお知らせするのはどうだろう?とも考えました。
しかし、わざわざ購読手続きをするのもお客さんは面倒でしょうし、買いに行く予定がない日にピコピコとメールが届くのも鬱陶しいと思います。
基本的にテキストしか送れないのもちょっと寂しいです。
ブログ?
妻は店のブログも開いているので、そこにリアルタイムな情報を載せる、という手段も考えました。
しかし、ブログは「ある程度まとまった文章」を発信するメディアであって、リアルタイムな情報の断片を随時発信するのは何か変です。
時間が過ぎると何の役にも立たないエントリがどんどん溜まっていくところもイケてません。
ホームページ?
店のホームページにリアルタイムな情報を載せるという手段もあります。
が、ホームページだとこちらからお客さんへ情報をプッシュできず、その都度お客さんに見に来てもらわなければいけないのが一番のウイークポイントです。
また、リアルタイムな情報を載せようと思うと、ホームページにCMS(コンテンツマネージングシステム)みたいな仕組みも導入する必要があるので、そこも手間がかかるところでした。
Twitter?
リアルタイムな情報をプッシュするという意味では、Twitterを活用するという案もあります。
しかし、投稿文字数は140文字に制限されますし、メルマガと同様、テキストが中心なので写真を投稿しても目立ちにくいという難点がありました。
というわけでFacebookページ
どのツールも一長一短あるなかで、最終的にFacebookページで情報発信しようということになりました。
僕が考えたFacebookの利点は以下の通りです。
- 「近況」をTwitter的な気軽な投稿に使えるのに加えて、字数の制限もなく、かつ写真も自由に掲載できる
- 「いいね!」ボタンを押してもらうと、お客さんのニュースフィードにお店の情報をプッシュできる
- 「いいね!」をしてもらうと、どんな人が気に入ってくれているのかがこちらもわかる
- 「いいね!」や「シェア」をしてもらうと、クチコミ的な宣伝効果が期待できる
- PC、スマホ、ガラケーのいずれにも対応している
特に妻の店はもともとお客さんのクチコミでお客さんが増えてきたので、SNS(ソーシャル ネットワーキング サービス)とは相性が良さそうな気もしていました。
ただし、Facebookがいくら有名になったといっても、日本人全員がFacebookのアカウントを持っているわけではありません。
「Facebookは使ったことがない」「できればFacebookアカウントは作りたくない」というお客さんも中にはいると思います。
とはいえ、URLさえ知っていれば誰でもアクセスは可能なので、こちらから情報をプッシュできない点を除けば、それほど大きな問題はないとも言えます。
Facebookページに載せる情報
妻と話し合って、Facebookページに載せる情報はこんな感じにしようということになりました。
- 営業日の商品メニュー(開店前にアナウンスする)
- パンの売れ行き
- 売り切れ時のアナウンス
- おいしそうなパンの写真
- 臨時休業日等のお知らせや、お店からのお願い
- ブログの更新情報
- ブログに書くほどでもない些細なつぶやき
Facebookページ開設の効果
Facebookページを開設したことは店のブログやホームページ、店頭のチラシ等でお知らせしました。
Facebookページの存在がお客さんに知られてくると、かなり良い効果が現れてきました。
取り置きの電話が増えた
まず、取り置きの電話が増えて開店直後の混雑が緩和されました。
これまでは「店に行って買いたいパンを選ぶしかない」というお客さんが開店直後に殺到していました。
しかし、Facebookページ開設後は開店前に全てのメニューが分かるようになったので、来店前に取り置きの電話が掛けやすくなったみたいです。
よって、開店直後の店の混雑が少し緩和されました。
「行ってみたけどもう閉まってた」ということが減った
また、その日の売れ行きや売り切れのアナウンスもFacebookページを見ればわかるので、「まだ残っているみたい」「もう売り切れたのか」という情報をお客さんが気軽に確認できるようになりました。
というわけで、「行ってみたけどもう閉まってた」という残念な思いをお客さんがしにくくなったようです。
常連さんの来店頻度が上がった
「いいね!」をしてくれたお客さんはニュースフィードにお店の近況や写真が通知されるので、ちょっとしたリマインダー的な効果があるのかもしれません。
特に常連さんの来店頻度が上がっているみたいです。
お客さんとのつながりが分かりやすくなった
ホームページやブログだと、PV(訪問者数)はわかってもどんな人が来ているかまではわかりませんが、Facebookページだと「いいね!」をしてくれた人やコメントをくれた人がある程度はっきり分かります。
なので、お店としてもお客さんとつながっている感覚が強く持てるようになりました。
意外とFacebookを使っている人は多かった
開設前は「田舎だし、お客さんは女性中心だし、Facebookをやってる人なんてあまりいないんじゃないか」と少し不安な面もありましたが、意外とたくさんのお客さんが「いいね!」を押してくれました。
ありがたいことに、わざわざこのためにFacebookアカウントを作ってくれたお客さんも中にはいたようです。
開設1ヶ月で「いいね!」の件数が100を超えたのは、予想以上のペースでした。
まとめ
お客さん全員にFacebookページが浸透したわけではないので、開店時の混雑等が完全に解消したわけではありませんが、感覚的には一定以上の効果が出ていると僕も妻も感じています。
以前よりもお客さんが分散して来店してくれてますし、残数のアナウンスをすれば開店から時間が経ってもお客さんが来てくれている印象です。
また、新しいシステムを作ることなく、既存のサービスをうまく活用することができたのも、僕としては良かったと思います。
この点については、
機能やコードは負債です。なるべく作らないことが一番なのです。
チケット駆動開発で Pivotal Tracker を上手に使うための4つのポイント | Social Change!
というソニックガーデンのポリシーをプライベートにも応用してみた感じです。
何はともあれ、お客さんにとってもお店にとってもメリットのある仕組みを手間やお金をかけずに導入できたのが、IT専門家としての面目躍如だったんじゃないかな〜?と、ちょっと自画自賛して今回のエントリを締めくくります(笑)。
「こんなにうまくいくものでしょうか?」(2012.12.2追記)
たまたまYahoo!知恵袋でこんな質問を見つけてしまいました。
facebookの活用事例だそうですが、こんなにうまくいくものでしょうか?
妻のパン屋の悩み事をFacebookページで解消したお話 - give IT a try
http://junichiito.hateblo.jp/touch/entry/2012/11/30/090253
以下の困っていた点を解決した。
Twitter,blogより優れているという主張です。
開店直後お客さんが集中しすぎてしまう
日によってはすぐに売り切れない日もあるが、開店後1〜2時間するとお客さんが「たぶんもうないだろう」と思ってあまり来なくなる
「もっとゆったりとパンを選んでもらいたい」「すぐに売り切れない日はお客さんに知らせたい
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1098067310
全然無関係な人に適当に答えられても困るので、直接回答してみました。
こんにちは、たまたまこの質問を見つけてしまいました。
ブログの作者です。
せっかくなのでお答えしますね。
>こんなにうまくいくものでしょうか?
確かに、そういう感想を抱いてしまうのも分からなくはありません。
ポイントは2つあります。
一つはブログでも書いていたように、完全に解消したわけではありません。
問題が改善された、緩和された、というレベルで考えてもらった方が正確だと思います。
そして二つ目。
こちらの方が重要です。
それは僕らだけでなく、お客さんも困っていたから、もしくはお客さん自身もそういう情報を必要としていたから、うまくいったということです。
なのでお互いのニーズがかっちりとかみ合ったのが、成功の秘訣だと思います。
>Twitter,blogより優れているという主張です。
ブログに書いたような理由で僕はFacebookページが一番いいと判断しましたが、ニーズがかみ合っていればどのツールを使ってもそれなりにうまくいくんじゃないかと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1098067310
「Twitterと連携させないの?」(2012.12.5追記)
趣旨は理解できるけれど、Twitterと連携しない理由がないように思う。なぜ敢えてFBだけ?意味がわからない。 / “妻のパン屋の悩み事をFacebookページで解消したお話 - give IT a try” http://t.co/qPiFt7Jh
— m (@O98756) December 4, 2012
ああ、なるほど。確かにFacebookに投稿した内容をツイートとして発信することもできますね。
あえてやらなかったというより、全く検討していなかった、というのが正直な答えです。
じゃあ、知ってたらやってたのか?もしくは今からでもやりたいか?と考えると微妙ですね。
一部には「Twitterで新しい投稿をキャッチできたら便利!」と思う人がいるかもしれませんが、それほど多いとは思いません。
Twitterと連携させたとしても、情報の主従関係でいうとFacebookの方が「主」になるので、店の情報が欲しい人はどっちみちFacebookページをチェックするんじゃないかな〜と思います。
女性客が中心ということもあって、Twitterにのめり込んでるお客さんがそれほどいないような気がするのも、連携にあまり魅力を感じない理由の一つです。
そういう声が実際にお客さんから上がったりしたら話は別ですが、今のところFacebook一本でも大きな支障はないかなと思っています。
補足エントリを書きました(2012.12.9追記)
今回の反響を受けて、補足エントリを書いてみました。
こちらも併せてご覧下さい。
「妻のパン屋の悩み事をFacebookページで解消したお話」の補足 - give IT a try
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