名著「失敗の本質」の著者の一人、野中郁次郎氏が亡くなられたとのこと。
ご冥福をお祈り申し上げます。
『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』は、社会科学研究を用いた旧日本軍の戦史研究。
概要
分析対象はノモンハン事件と、太平洋戦争におけるミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦。第二次世界大戦前後の「大日本帝国の主要な失敗策」を通じ、日本軍が敗戦した原因を追究すると同時に、歴史研究(軍事史)と組織論を組み合わせた学際的研究書である。
大前提として「大東亜戦争は客観的に見て、最初から勝てない戦争」であったとする。それでも各作戦においてはもっと良い勝ち方、負け方があるのではないか、というのが著者たちの考え方である。各作戦は失敗の連続であったが、それは日本軍の組織特性によるのではないかと考えた。「戦い方」の失敗を研究することを通して、「組織としての日本軍の遺産を批判的に継承もしくは拒絶」することが出版の主目的であった(「本書のねらい」)。
戦史研究(事例研究)を中心とする防衛大学校研究者と、野中郁次郎などの組織論研究者(帰納法の思考に重点を置く)との、両者の共同研究によって生まれた。
結論で、日本軍は環境に過度に適応し、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(かつて学んだ知識を捨てた上での学び直し)を通して、自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかったとした。
知識経営の世界的権威で、「失敗の本質」などの著書で知られる一橋大学名誉教授の経営学者、野中郁次郎(のなか・いくじろう)氏が1月25日、肺炎のため東京都内の自宅で死去した。89歳だった。
告別式は近親者のみで行う。2月2日に東京都小平市小川東町1の21の12のシティホール小平小川でお別れの会を開く。喪主は妻、幸子さん。
1935年東京都生まれ。58年に早稲田大政治経済学部を卒業。富士電機製造(現富士電機)を経て、67年に米カリフォルニア大バークレー校経営大学院に進学。82年に一橋大教授に就任した。
旧日本軍が判断を誤り続けた要因を解明した84年の「失敗の本質」(共著)などで知られる。日本企業の革新性の源泉を読み解いた95年の「知識創造企業」(同)は米欧の研究者にも影響を与えた。
個人が持つ知識やノウハウなど、言語やデータになる以前の「暗黙知」を軸に、組織が対話を経て新しい知を生み出すプロセスを定式化した。知識・経験などを共有し、創造的な経営を実践する知識経営は多くの企業で取り入れられた。
失敗を全くしたことのない人間はいません。
人間なので失敗することは仕方がないにしても、何度も同じ失敗を繰り返すことなら、学習機能がないということになります。
人類の歴史とは失敗のカタログであり、アンチパターン集ともいえるでしょう。先人の失敗から何を学ぶのか?
一日本人として先の大戦の敗北からは学ぶことが多々あるように感じます。
本書「失敗の本質」も、なぜ日本が戦争で負けたのかを理解する一助となります。
国家という単位だけでなく、組織や個人においても通底する分析が提示されているでしょう。
まだ本書を読んだことのない日本人がいたら、教養として一読しておくことをお勧めいたします。
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