大野威研究室

最近気になったことを不定期で書いています。

アメリカの給付付き税額控除

 最近、給付付き税額控除という言葉をよく聞く。

 所得税減税は、所得税を支払っていない低所得の方には恩恵が全くない。そこで、所得税を支払っていない方には一定金額を給付して、この不平等を是正しようとするのが給付付き税額控除である。

 国によりいろいろな仕組みがあるが、アメリカの場合(2018年)、子供一人当たり年2,000ドル(約30万円)の税額控除(税金から引ける仕組み)がある。しかし、これは所得税を納めている人にしかメリットがない。
 そこで、アメリカでは所得税を払っていない方には子供一人当たり1,400ドル(約20万円)を現金で支給することになっている。これがアメリカの給付付き税額控除の仕組みである(わかりやすくするため、所得税の支払いが30万円に満たない方の説明を省略しています)。

 ちなみに、日本では3歳未満の子供がいる場合、月1.5万円(年18万円)の児童手当が支給されている。アメリカは、これを税金制度を使っておこなっているだけだと言えなくもない。

 日本の議論がどのように進むのか注意してみていきたい。

トランプ大統領、4半期決算の報告義務廃止を望む

 ウォールストリートジャーナルによれば、トランプ大統領が米企業の4半期決算の報告義務を廃止し、半期ごとの報告に移行することを望んでいる。4半期決算義務の廃止は、企業の負担軽減につながるとともに、長期的利益を見据えた安定した経営を可能にするとされている。
 トランプ大統領は1期目にもこの課題を追求しようとしたが実現しなかった。同紙によると、ブラックロックのフィンクCEO、JPモルガンのダイモン元CEO、バフェット氏なども四半期決算義務の廃止に賛成の立場だという。
 同紙は触れていないが、ラトニック氏やベッセント氏も同じ立場なのであろう。今後、さらに進展があるか注視していきたい。

景気に関係して気になる2つのデータ

 気になるデータが2つある。

 一つはアメリカのガソリン価格。これまで、ガソリン価格が消費者物価(CPI)を押し下げる大きな役割を果たしてきた(2025年7月はCPIを0.3%程度下押し)。しかし、現在の価格水準がつづけば、9月中にもガソリン価格が前年比でプラスに転じる可能性が出てきた。

 

米レギュラーガソリン小売価格の推移

 もうひとつは、日本国内の自動車販売台数が2か月連続で前年を下回ったというデータ。商用車より乗用車で落ち込みがより大きい。たとえば2025年8月の乗用車販売台数は159,854台。前年同月より20.531台も少なくなっている(11%の落ち込み)。これが、酷暑のためなのか(来店数の減少など)、インフレ高進が進み実質賃金が減少するなか買い控えが起きているのか、来月以降のデータが注目される。

 

月間の乗用車販売数の推移

 

また大型企業買収のニュース

 一昨日、大型買収のニュースが続いていると書いたが、今日またニュースがあった。

 2025年9月2日、住友商事三井住友ファイナンス&リースは、米加の投資ファンドと共同で、航空機リースの米エア・リースを約74億ドル(1兆900億円)で買収すると発表した。

 米エア・リースの年次報告書をみると、2024年の純利益(net income)は4.27億ドル。単純計算で、投資資金の回収に17年かかる計算になる。

 

大型の海外企業買収は数年後どうなっている?

 最近、資金繰りが順調なのであろう、大型の海外企業買収ニュースが続いている。

 8月27日、SOMPO米アスペン・インシュアランス・ホールディングスを買収と発表。買収価格は34億8000万ドル(約5000億円)。アスペンの連結純利益は4億8600万ドルなので、買収資金の利息を無視すれば、アスペンの利益が横ばいでも7年で元が取れる。

 8月25日、米キューリグ・ドクター・ペッパーがオランダのJDEピーツを157億ユーロ(約2.7兆円)で買収すると発表。JDEピーツの年次報告書をみると、2024年の税引き前利益は7.9億ユーロ。利子などを無視しても、JDEピーツの利益が横ばいなら回収に20年かかることになる。海外企業の買収は、文化や法律の違いなどのため、日本にかぎらずなかなかうまくいかないと言われている。こちらはどうであろうか。

 同日、テルモ移植用臓器を保存・輸送する機器をてがける英オルガノックスを約15億ドル(約2200億円)で買収すると発表。日経新聞によれば、オルガノックスの24年12月期の純利益は753万ポンド。利益が横ばいなら、資金回収に140年かかる計算だが、今後の伸びしろの大きさを考慮しての買収であろう。ちなみに、有価証券報告書によれば、テルモの25年3月の税引き前利益は1545億円。

 数年後、これらの買収結果はどうなっているであろうか。興味津々である。

 

最低賃金引上げの影響力

 今年、最低賃金が全国で1000円を超えることが見込まれている。

 日本では、最低賃金とほぼ同じ賃金で働く人がほかの国より多く、その引き上げの影響は大きい。

 厚労省は、最低賃金の引き上げによって、それまでの賃金が最低賃金以下になる人の割合(影響率)を公表している。それによれば、最低賃金を全国平均930円から961円に引き上げた2022年度の影響率は19.4%。これはほかの国よりかなり高い。

 たとえば、2022年、フランスの最低賃金は10.48ユーロ(約1780円:現在の1ユーロ=170円で計算)、ドイツは9.82ユーロ(1670円)。欧州統計局は、最低賃金の105%以下の賃金で働く人の割合を公表している。その数字は、2022年フランスが8%、ドイツは12.7%。両国の最低賃金は日本の1.5倍以上だが、それでも最賃付近で働く人の割合は日本よりかなり低くなっている。ここでいちいち数字は上げないが、ほかの欧州諸国も同じである。欧州の6割程度の最低賃金にとどまるのに、その水準の賃金で働く方がきわめて多いのが日本の特徴といえる。

 日本では、最低賃金引上げの影響力が大きいため、最低賃金引き上げに慎重な見方が少しづつ増えているが、欧州よりずっと低い水準なのにこんなに多くの人が最賃の水準で働いている今の経済構造、雇用構造こそ問題にすべきではないのか?そんなことを少し思いました。

ニュージーランドの洋ネギ

ニュージーランドの洋ネギ

 

 ところ変われば品かわる。

 写真はニュージーランドで見つけた洋ネギ。値段はたしか2NZドル(200円弱)ぐらい。

 薄く切ってスープに入れても、厚く切ってバターで焼いてもおいしい。