2008-08-16

憂鬱

殆ど寝むれなかった。会社でも昼飯が食えない。調子が悪い、途中ゲロを吐いた。

心配してくれる後輩。何故か嫌味を言う自分。すまない、今度おごってやろう。

17時。

今日残業できない。足早に駅前へと急ぐ。大変だ、時間が無い。

タクシー乗り場で彼女と合流。あまりの混み用に列を無視して運転手に2人で懇願。

他に待っている人もいるのに。最低だ。でも遅れる訳にはいかない。

18時45分。

何とか間に合った。汗をハンカチで拭きネクタイを締め直す。

吐きそう。緊張が頂点。密かにポケットに入れてきたウイスキーを少し飲む。

でも駄目だ。全く酔わない。

店内に入った。

何ておしゃれなお店だ。正直言って苦手。

普段チェーン店屋台くらいにしか行かないからだろう。自分にはキツイ。

あれこれ考えている内に店員がやってきた。

そして案内されて店の奥へと向う。

ヤバイ。足が震えてる。軽く眩暈がして来た。

帰りたい。逃げ出したい。今ここでスッと消えたい。

ふいにエヴァンゲリオンの台詞がでてきた。

「逃げちゃ駄目だ」

部屋の前まで案内された。

戸…個室だ。隔離された空間。吐きそうだ。

実際今日は5回程吐いている。それでも吐きそうになる。

密室で何分、いや何時間だろうか。尋問にも似た質問をされ続けるのだろう。

トイレに行って一端落ち着きたい。

私は彼女に言って店のトイレへ向った。

そしてまたウイスキーを飲んだ。人生初の便所酒。情けない。

メモを読み返す。あるであろう質問の答え方、敬語、自分の生い立ち、仕事人生観、将来…

そして彼女への気持ち。色々考えていると少し落ち着いた。

そしてトイレを出ようとした時ある事に気付いた。

もし、もし万が一、だ。彼女が先に部屋に入っていたとしたらどうすればいいんだ。

自分は一人でノックして入るのか?入ってからどう言えばいいのだ。

名前だけを言うのか?ちゃんと返事してくれるのか?

きっと声が震える。足もふらつく。怖い。

部屋の前まで戻った。

そこには彼女が居た。待っていてくれた。

思わず涙目になる。彼女は何事かとびっくりして心配してくれた。

ああ、きっと自分は間違っていない。大丈夫、問題無い。

彼女が私をチラッと見る。

私は彼女を見て頷いた。

そして彼女が部屋をノックした。

「お父さん、連れてきたよ」

部屋の中にはお父様とお母様。

私の品定めの為に今日はいらっしゃったのだろう。

ここから30分程は思い出そうとしても良く思い出せない。

彼女の話題が中心だったと思う。ガチガチの私はロボットの様な動きとドモリ気味な喋りで何とか会話していた。

そして1時間くらいが経過した。

少し酒が進み・・少しずつ打ち解けはじめた頃お父様が切り出した。

「○○くん、君が娘を好きなのは分ったよ」

「恐縮です」と言った。

使い方あってたのだろうか。

「それで今後もあるだろうし…ちょっと色々質問させて貰いたいんだ」

そういうとお母様がお父様にA4の紙を渡した。

何だそりゃ?メモ普通用意してくるもんなの?

「えーと、まず仕事は何を?」

「販売店のスタッフをやってます。」

「具体的に何をするの?」

レジ打ちとか仕入れを決めたり。たまに本社に行って事務を勉強させて貰ったりもします」

「面白い?」

「…はい。」

「ふーん。それで収入はどれくらいなの?」

「・・・」

「ん?」

「あ、えっと、残業とか、特別収入とかもあるのではっきりとは・・」

「大体でいいよ、年どれくらいなのか教えてくれればー」

「えっと・・」

本当の事を言う方がいいのだろうか、それとも少し多めに言う方がいいのか?

少し考えたが嘘をついてもどうせすぐばれるだろう、本当のこと言おう。

「260万です。」

言った。本当に言った。

彼女のことは真剣だ。嘘は付きたくない。

だから正直に行った。

「・・・」

沈黙

何だこの間。誰か喋ってくれ。お願いだ。

「プフッ」

お母様。

「あ、ごめんなさい。でも…ウフッ、ウファファファファファ」

お母様が吹き出した。

「ワハハハハハ」

お父様も笑いだした。

笑い声。バカにされてる。これは絶対自意識過剰なんかじゃない。

心の声が聞こえる。今までもこうした笑い方を何度かされた。だから分る。

覚悟はしてきた。でも苦痛に変わりはない。

「ちょっと!!」

彼女が怒ってくれた。

嬉しい、けど情けないな。

私が幸せにできるんだろうか。自信が揺らぐ。

「ハハハ、すまんすまん」

「いえ。」

短く簡潔に、だ。

「君はその仕事を続けるのか?転職する気は?ないの?フフ」

お父様。

「ちょっとお父さん、…フフ、この方、大卒じゃないのよ。そんな言い方酷じゃありません?」

お母様。

何だよコイツ等。笑いながら喋るな。

本音は

(ぶww底辺wwwwプギャーwwwwww転職は?ねぇねぇ?転職は?wwwwww)

(あwwごめんw高卒だった?wwあはwwwwじゃ、無理かwwごめんねぇwwwww)

何だろ。はぁ。でも仕方ない。

「まあ若いんだしまだまだ可能性があるもんなあ。少し距離を置くことも大切だよ、ねえ母さん。」

「そうよねえ。他に貴方に合う女性もきっと一杯いると思うわよ」

何このコンビ攻撃。

「はっきり言うとあれだ。僕には君が娘と釣り合うようにみえないなあ」

「私もそう思うわ、お父さん。」

はっきり言われた…

「ところで○○君は明日早番なんだよね。そろそろお開きにしようか。」

「もうお話も十分したしねぇ。あらヤダ、もうこんな時間だわ。でましょうでましょう。」

お父様、明日休日です。そしてお母様、私にもう少し喋らせてください。

ここでお父様が予想外の一言。

「○○君、今日はごちそう様。」

え? 俺払い?

冗談かと思ったらお父様とお母様はさっさと店からでていってしまった。

残された彼女と自分。

払わせる訳には行かない。財布が空っぽ給料日までまだ10日程あるのに。

店をでた。

気遣ってくれる彼女。でも優しさが痛い。

1人になりたい。その晩一人酒。彼女と自分について考えた。

きっと自分と来ない方がいい。でも彼女と居たい。

誰かが言ってた言葉。人様に迷惑をかけるな、人を巻き込むな。

その通りだ。きっと俺は害になる。お父様達にとっては害虫ゴミ虫。

仕事は変えるつもりだ。その為の勉強も密かに始めている。

しかし怖い。資格に通るのはいつになるのか分らない。

きっと今でなきゃ一緒になれないだろう。でも今一緒になっても上手くいかないだろう。

互いの幸せを考えると… 「別れ」の2文字がでてくる。諦めなきゃ駄目なのか。

親の力は強大だ。今日の惨敗は彼女との今後に大きく影響するだろう。

憂鬱だ。

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