こんばんは、機械技術者「おだぐ」です。
今日は年末の小企画「年末の風景」で採用から漏れたネタを取り上げることにします。
年末の風景③で新規研究テーマ立ち上げのお話をしました。そのとき私が議論の俎上に挙げたのはテーマBとテーマC。テーマBは予算は付かないが実行許可の下りた状況。テーマCについては予備実験を行ってその結果を待って予算をつけるかどうかを決めることをお話しました。
現在、テーマCの実験準備中。再来週あたりには実験実施できそうです。
→年末の風景③の記事はこちら!
さて、この新規研究テーマの議論に先立ち、先行研究があるかどうか、文献調査を行うことにしました。幸い、テーマBとテーマCは同じ現象αに関連した研究テーマです。ですから、現象αについて調査・検索していけば、関連文献が入手出来る筈です。まさに一石二鳥です!
とりあえず、文献データベースで現象αを検索しました。
ヒット数:8,000件
あれ、おかしいな?
ニッチでマイナーなテーマだからこそ予算をつけるのに努力を要する筈なのに、8,000件ってどういうことなの?しかも8,000件っていうのはどうもシステムの表示上限らしく、実際にはもっと文献があるらしい。なんだこりゃ。
文献のタイトルを実際に見てみます。
私の専門は板金プレス加工なので、金属技術と機械技術に用があるのです。しかしながら、8,000件のヒット文献の中には他の技術分野の論文が大量に紛れ込んでいました。どうやら、現象αは他の技術分野でも同じ名称で別の現象を表すのに使用されているようで、私にとっての「ノイズ」が大量に含まれる検索結果になってしまったようです。
ちょっと状況が複雑になってしまったので、外部の情報検索会社の力を借りることにしました。こちらの狙う情報の範囲、英文・和文問わず、PDFで入手可能な文献はPDFで納品、などの条件を情報検索会社に伝えて、検索してもらいました。
1次検討では約3,000件まで絞り込みました。
半数以下にまで減少しましたが、まともな人間が読む文献数としてはまだまだ多いです。私の希望ラインは500件。500件前後まで検索ヒット数を減らせば、その抄録を読んで、全文を読むべき文献を選択できると考えていたのです。
情報検索会社と再度打ち合わせをしました。思い切って現象αの特殊例α´については除外することにしました。その他にも幾つかの条件を付けて検索してもらった結果、
2次検討では755件まで絞り込みました。
目標の500件には届いていません。微妙な数字です。
情報検索会社の担当者もこちらの困惑が伝わっているようです。
電話越しに先方の担当者から提案がありました。
「あの~、一つ提案なんですけど…。」
「お互いに知恵を絞って検索した結果がこの755件という数字なので、これ以上機械的に絞るのは難しいと思うんですよね。」
「思い切って、755件の抄録を全部チェックしていただくというのはどうでしょうか!?」
やっぱりそう来たか!これが相当にしんどい作業であることは双方承知の上での提案だということもわかります。代替案も私には思いつきませんでした。私にはこう答えるしか道は無かったのです。
「わかりました。755件、全部やりましょう。10日間もあれば大丈夫です。」
ああ、他にどんな道があったというのでしょうか。私には茨の道を進むしか無かったのです。
かくして私は755件の論文抄録を一つ一つ読んでチェックする作業を開始したのです。しかし、10日間という見積もりは甘かったのでした。結果としては2週間ほどかかってしまいました。
抄録チェックに時間がかかった理由は
①読みたい文献がたくさんある。
②全文を読む、または読まない、の判断基準が時間と共に変わってくる。
という2つの事情によるものでした。
755件の500件目くらいを読んでいるときに「自分の中での判断基準が変わっているな…。」ということに気づいたのですが、そのまま755件全部をチェックしました。ヒット数は約380件。全文を読むにはまだまだ非現実的な状況です。
今度は判断基準を明確にして、755件をもう一度チェックしました。(2回チェックした訳です。)今度は150件くらいまで絞り込みました。せめて100件以下まで下げたい!そういう思いで150件を更に精査した結果、67件の文献が残りました。
もういい加減絞り込み作業に疲れてきたところです。67件の論文を読むというのは結構厳しい作業ですが、これ以上この作業を続ける気力が無くなっていました。(当然ですが、この作業は他の業務と並行して行っていました。)67件の文献を入手したい旨、情報検索会社に伝えました。
今、私の手元にはPDFファイルと印刷物とで併せて67件の文献のコピーがあります。本当は新規研究テーマを議論する会議の前に読むべきだったのですが、今もって半分も読めていません。幸いテーマBは予算獲得に関係ないので自由に時間を利用すればよいのです。テーマCについては予備実験の結果を待つことになっているので、それまでの猶予期間に読めばよいということになります。
今回思ったことは、「研究者は論文を読んでばかりいる」と世間では思われがちですが、そこに至るまでにも色々と苦労があるんですよ、ということです。ただひたすら疲れました。