Stuff では、原則や組織構造についての取り決めはほとんどありませんが、例外としてとても重要にしていることが一つあります。
全社員がサポートに送られてくるメールを読むこと
これまでのプロジェクトマネージャー、プロダクトオーナー、プロダクト開発者、あれやこれやの責任者、そして創業者として20年間の経験から、私は全社員がサポートに来るメールのために時間を割くことが重要であることに気づかされました。あなたが音楽ユニットのメンバーであっても、確固たるスタートアップの共同創設者であっても、製品責任者であっても、企業のCxOであっても、少なくとも週に30分は顧客から実際に送られて来るメールを読むことに時間を割くべきです。
KPI、MAU/DAU(訳注:月次・日次アクティブユーザー)、CAC(訳注:顧客獲得コスト)、CLV(訳注:顧客生涯価値)は、多くのスタートアップや企業において定評のある指標です。
A/B テストは、価値ある洞察と改善を得るための方法論としてもてはやされています。
スプレッドシートとダッシュボード画面上の数字を広く集計した結果を元に、スタートアップは継続して調整と戦略の変更を行います。
私は数字とスプレッドシートを信じていますが、あなたのサービス・製品・会社に関わる全ての人々の心は、魂のないスプレッドシートのカラムのどこかに埋まりがちです。
価値ある洞察、情報、データは、無視され忘れさられがちです。
私はずっと社内のレポートや数字よりも、サポートに送られてくるメールに多くの時間を割いてきました。そうするべきであるという6つの理由を挙げましょう。
有益なニュースであるため
サポートに来るメールは発行されたばかりのものです。これはサービス・製品・会社の現状を現しています。廃止された機能や製品に関する数週間、数ヶ月前の古い情報ではありません。 たった今あなたの事業で何が起こっているのかを知ることで、問題点がサービス・製品・会社のファンへ影響する前に対応しやすくなります。
優れた会話のきっかけとなるため
サポートに来るメールは、最初のメールがどれほど攻撃的なものであったとしても、顧客との会話を通じて洞察に満ちた情報を提供してくれます。これは数字や表に含められないものです。
問題をサポートに報告する顧客は、積極的に会話へ参加してくれる傾向があります。それを通して、あなたの会社・製品が実際どのように認識されているかについてより良い理解を得ることができるでしょう。
あなたはきっと十分なデータを持っていないため
データに対する十分なサンプル量が溜まるよりずっと前の、事業を構築するあまりにも早い段階で、ダッシュボード画面・A/Bテスト・ファネル最適化といったことに夢中になってしまう起業家やスタートアップ創業者が多すぎます。データポイントが 10% から 40% に変動するのを見ている代わりに、あなたにメールを送ってくることに時間を費やした人々に対して、メールを返したり話したりすることに時間を割くべきです。
事業全体の機微が得られるため
ダッシュボード画面やスプレッドシートが、あなたの顧客は誰なのか、どう感じているのか、どういった志向なのか、どれほど満足しているのかといった機微を伝えることは決してありません。
社員たちはサポートに来るメールを見ることで、会社やプロダクトの現在の状態について、はるかに深い理解を得ることができます。
さらに、事業の状況に関する理解が個々の中で形成されます。これが各個人の中で活用されることでより多様性のある会話が生まれるでしょう。
サポートに来るメールには感情が含まれているため
数字はただの数字です。集計して総数や平均値として出されることがよくあります。
数字が総数や平均値以上のものをあなたに与えることはありません。背景もストーリーも心も魂もありません。
その一方で、サポートに来るメールは感情に満ちています。
「こんにちは。役立たず。あなた方は昨日私の娘を30分間泣かせました。『ドーラといっしょに大冒険』の配信にログインできなかったからです。ブラウザを切り替えて問題の半分は解決しましたが。:-(」
あなたが心を持たないロボットでなければ、上の文を読んだときの方が下の文を読むよりも、感情や対応の必要性に駆り立てられるのではないでしょうか。
「27週 - サービスに問題を感じたユーザ:57%」
自身に関係するリアルな問題を持っているリアルな消費者を知ることで、会社の現在の状況に関してはるかに高い理解が得られます。 リアルな人々からの感情的な文章によって、社内のディスカッションがより良いものになることもあります。
あるグループの人々をスプレッドシート上で「57%のユーザーは・・・」という風に一括りにしてしまうことは敬意を欠いています。
責任感が増加するため
私の経験では全社員がサポートに来るメールを読むことで、社員は責任感の増加とサポートのメールボックスに届くどんなメールをもなくすという緊張感が生まれます。
リアルな問題を見ることで、単にスプレッドシート内の数字を見るよりもはるかに速くアクションが生まれます。そしてそれによって、より良い顧客体験が優先されるようになるでしょう。
私は決して、スプレッドシート、顧客獲得数、ファネルやあらゆる種類のサポートでのやりとりを、完全に捨てるべきだと主張している訳ではありません。しかし、実際に挙がっている洞察に対してもっと多くの時間を割くべきです。
「顧客の声」という月次スライドを作っても、何にもなりません。
サポートに来る実際のメールを読むことで最新の全体像がわかり、感情や責任感が生まれるとともに、社内外で会話が生まれるきっかけとなります。これは全社員にとって良いことです。
ですので、朝のコーヒーを飲みながら心の中にある価値ある何かを持つ人々から集まった価値ある洞察全てに目を通してください。